ファーストコンタクト
日の光が瞼を刺激し、目を覚ます。
太陽(暫定的にそう呼ぶ)はまだ低い位置にあるから、まだ早朝と見ていいだろう。
「……んっ、ふぁ……」
座ったまま寝たせいか、妙に凝っている体を伸ばし、欠伸をする。
「異世界2日目、か」
そっと呟くと、ポーチから食料を出す。
残りの食料が少なくなってきたのを確認し、そろそろ節約しないと、と思う。
とりあえず今日はどうしようか。
そう思いつつ、生前に読んだ異世界転生モノの小説を思い出す。
あまり好んで読んだ訳ではないが、傾向としては、チート能力、鑑定、アイテムボックスなんかを持っていることが多かった。
そう思うと、なんだかんだ僕もテンプレに乗っ取ってるのかも。
よし、今日は山から降りつつ、先人に習って鑑定で薬草なんかを片っ端から探そう。
今日の方針を決め、立ち上がる。
鑑定、と呟き、至るところを鑑定しながら歩みを始める。
しばらく歩いて見つかったのは以下の通り。
薬草
HP回復効果のある草。そのままでも効果はあるが、調合し、ポーションにすることでより高い効果を発揮する。
解毒草
状態異常回復効果のある成分を含む草。そのままでは効果はなく、調合し、解毒ポーションにすることで効果を発揮する。
ワライタケ
食べると軽い幻覚症状が発症する。効果は30分程だが、その間は笑いが止まらなくなる。
―――――――――――――――――
とりわけこの3種類ばかりが見つかった。
薬草と解毒草は見つけ次第ポーチに放り込む。
ワライタケ?見つけても全部捨てましたよ。ええ。
何か食べ物でもあればなーなんて思って見つけたキノコを鑑定すれば、ワライタケ、ワライタケ、ワライタケ……。
ここはワライタケ山とでも言うのだろうか。それほどまでに執拗にワライタケが見つかった。
そうこうしている内にお昼ぐらいの時間帯になった。
食料も少ないし、そろそろ山を抜けたいなぁ。
ここで少ない食料を食べるか考えていると、遠くにぽっかりと空いた洞窟が見えた。
そしてなんと、その洞窟の前に人が立っているではないか。
目を凝らしてよく見てみる。
男、だろうか。
なんとなく雰囲気は似たようなものを生前に感じたことがある。
それは、ええと……。
――そう、DQNだ。
この距離では閲覧は届かないし、心の中でDQNと呼ぼう。
ともかく、これが異世界での人とのはじめての接触だ。ここは是が否とも成功させたい。
そうだ。相手はDQNっぽいし、下手に出ればうまくいくかも。うん、そうしよう。
そうして、頭の中で作戦会議を終える。
よし、きばってこー!!
気合いを入れ、男の方へと歩き始める。
足音を聞いてか、DQNはこちらの方を向く。
「あのぉ、すみません」
僕は困ったような表情を作り、話しかける。
知らない人に話しかける為の定番の方便、道に迷った、だ。
「山に入ったら、迷ってし――」
「あぁ?なんだてめえェ!!何でこんなところに居やがる!!」
僕の言葉を遮ると、ナイフを取りだし、構えた。
えっ!?いきなりコンタクト失敗!?
「え、あ、いや、だから道に迷って――」
「まあいい。殺しちまえば何の問題も……無いよな?」
またもや僕の言葉を遮ると、間合いを計り始めた。
戦うしか、ないのか。