今後の方針
さて。
日が暮れてきたわけだが、休むのに良さそうな場所は見つからなかった。
仕方なしに大きな木に背中を預け、座り込む。
ポーチから水と食料を取りだし、口に含みながら考え事に耽る。
思い出すのは女神との会話だ。
『困っている女の子を助けなさい』
それが大きな意味を持つということは、女神の言う『生きる意味』とは、恋愛か、それに近いものなのかもしれない。
他の女の子と恋愛なんて、あってたまるか。
僕は美星を忘れない。僕が好きなのは美星だけだと胸を張っていたい。
意地でも恋愛とは別の方向で『生きる意味』を見つけ、不死を解消したい。
――そして、生まれ変わったらまた、美星に会いたい。
生前の美星は僕のことを「男のくせにロマンチストだね!」と笑った。
そのときの僕に自覚はなかったけど、今ならなんとなくそうなのかも、と思う。
我ながら感傷的すぎるな。
つい、口元に苦笑いが浮かぶ。
今後はとりあえずこの山を抜けて、人と接触しよう。
この世界の情報を集めながら世界を廻るんだ。
そのなかで『生きる意味』と言えるような大切なものを探そう。
そう結論付ける。
不死なので時間はいくらでもあるだろうが、女神は以前言っていた。
『美星は輪廻の輪に乗った』と。
輪廻の輪がなんなのかはわからないが、輪廻、という言葉から連想される通りなら、恐らく美星は生まれ変わってる。
だったら僕も早く向かわないと。
困っている女の子については、恋愛に関係あるかもしれないから、できるだけ避けていきたい。
所詮、僕がこの世界に来なければそのまま困っていただろうから関係ないね。
もし美星がいたら冷たい、と避難するだろうか。それとも千早らしいね、と苦笑いするだろうか。
そんなことを思いながら空を見上げる。
木々の間からはたくさんの星が瞬いている。
僕の街からはこんなに星は見えなかったな。
ぼうっと考えながら瞳を閉じ、眠気に身を委ねるのだった。