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出会い

気が付くと男が倒れていた。

辺り一面に飛び散り、流れ出た血の量からして死んでいるのは明らかだ。


「……僕がやったのか」


ポツリと呟く。

記憶が無いわけではない。

自分が受けた傷の痛みも、男(ハーグって名前だったな)が苦痛に歪めた表情も、そして、肉を刺す生々しい感触も、すべて覚えている。

しかし、実感がない。

自分の中で暴れだした感情が落ち着くと、どこか他人事のような、ふわふわした感覚になっていた。

そしてそのおかげだろうか。

不思議と人を殺した罪悪感はほとんど無い。


「あ……っと、そうだった」


視界の隅に誰かが倒れているのが映り、先ほど殺してしまった男が何をしていたのかを思い出し、慌てて駆け寄る。


「大丈夫……ですか?」


声を掛けてみるが返事がない。

もしかして死んでいるんじゃ!?

しゃがみこみ、倒れているその人をよく見てみる。


それは、女の子だった。

肩ほどまでのベージュの髪。

目を閉じていて実際のところはわからないが、少し幼さの残った、整った顔立ちをしている。


「可愛い……」


つい、そう呟いてしまうほどだ。


「って、そうじゃないそうじゃない」


先に状態を確かめないと。

そう思い、改めて女の子を見る。


……これといって怪我も無さそうだ。首を締めた跡なんてのも無い。

生きている証拠に、呼吸で胸が上下している。

たぶんだけど、気を失ってるだけだろう。

その原因が襲われた恐怖なのか、文字通り血みどろの闘いを見てのショックなのかはわからないけど。

そう結論付けて、周りを見渡す。

有るのは木箱と酒瓶ばかり。


「持ち主は死んでるし……、幾つか失敬してもいいよな」


そう言いつつ、早速木箱を開けていく。


「おおう……」


中に有ったのは金銀銅のお金らしきコインと札束。それが大量に入っていた。

この世界の通貨については何も知らないけど、とんでもない大金なんだろうなぁ。

考え事をしつつもせっせと四次元ポーチにお金を入れる。


「次の木箱はなにかなーっと」


お金を入れ終わるわ否や、早速次の木箱を開ける。

中に入っていたのはリンゴらしき果実。隣にある木箱の中身は干し肉だ。

始めに貰った食料も少なくなったし、これも全部貰っていこう。

またまたせっせとポーチに詰め込んでいく。

……このポーチって一体どれだけのものが入るんだろう?

疑問に思うことはあるが、それはさておき。

次の木箱を開ける。

今回は武器だ。

大きめの木箱に剣やら槍やらが乱雑に入っている。

すっかり忘れていたけど、あれを使おう。


「ほっ、鑑定」


―――――――――――――――


【鉄の剣】

鉄でできた剣。


【鉄の槍】

鉄でできた槍。


―――――――――――――――


うん。見ればわかるよー。

というわけで、見たまんまの結果でした。

剣術のスキルがあるみたいだから、剣を一本拝借して腰に装備する。

ポーチに入れても良かったけど、武器は装備しないと意味がないからね。



粗方見終わったし、まだあの子が目を覚まさないなら、無理にでも起こすか、背負ってでも連れだそう。

さすがに死体のある場所にいつまでも居たくないし。


女の子の元に戻って見ても、まだ目を覚ましてないようだった。

起こすべきか、このまま連れ出すべきか。

暫しの間悩んでいると、


「んっ……」


どうやら目を覚ましたようだ。


「大丈夫?」


努めて優しげな声色で話しかける。


「えっ……?ひっ!?」


こちらに気が付いてなかったのだろうか。

声を掛けると一瞬呆けたような顔をしたが、すぐに震えながら後退った。


「いやっ、襲わないで……、ら、乱暴しないでくださいっ!!」

「大丈夫。僕はあいつの仲間じゃないし、君に危害を加えるようなことはしないよ」


後退った彼女を追うようなことはせず、できるだけ穏やかな口調で落ち着かせるように話す。


「それに、君を襲おうとした奴はもう死んでるよ」

「……?……うっ!?」


僕の言葉で周りを見渡し、惨殺死体を見つけ動揺する。

あれは犯人の僕でも直視したくないからなぁ。


「とりあえずここを出ない?」

「はっ、はい」


人を殺した僕に怯えているんだろうか。

僕の意見に賛成はしたものの、返事は怯えが混じってる気がした。


「じゃあ、行こう」


歩き出した僕の数歩後ろを付いてくる女の子。

怯えているようだけど、ついてきてはくれるようだ。



来た道を暫く歩くと、出口の光が見えてきた。


「お疲れ様、もうすぐ出口だよ。……まあ、その先は山田だけどね」

「は、はい」


僕の声かけに怯えながらも返事をしてくれる女の子。

……いい加減自己紹介くらいしないと。

いつまでも名前がわからないのは不便だし。

そう考えながら洞窟を出る。

振り返ってみると、女の子は少しだけ安心したような顔をしていた。



あ、ちなみに、行きで僕を襲った男(ギーグ……だっけ?)はまだ寝てたから放置してきた。

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