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殺意

洞窟にいざ入ろうというところで、ふと思った。

さっきのDQNは殺してないけど、ステータスに変化はあるんだろうか。

ステータスの確認は忘れがちなので、閲覧と鑑定はすぐ使う癖をつけておいた方がよさそうだ。



名前 皆川 千早

性別 男

種族 人間

年齢 17


HP ∞

MP 120

物理攻撃 49 ↑UP

魔法耐性 34 ↑UP

運 8


スキル

閲覧

鑑定

剣術 Lv.1


特性

言語理解

不死

女神の加護


―――――――――


ステータスが上がっていた。

殺さずとも無力化すれば上がるのだろうか。

そのうち検証が必要だな。

殺さなくていいなら、それに越したことはない。


ステータスの確認が終わったところでようやく洞窟に踏みいる。

さっきのDQNは恐らく見張りだ。

ということは、きっとこの奥には仲間がいる。

さっきのDQNは問答無用で襲ってきたし、多分同じような輩だろう。


不死とはいえ、万能ではない。縛られたり眠らされたりしたら、こちらはどうしようもないのだ。

警戒心を高め、いつでもナイフを取り出せるように準備し、歩き始めた。


洞窟の中は所々松明で照らされており、薄暗い程度だった。

洞窟と言うよりも洞穴に近いな。

勘だけど、これならすぐに奥に着きそうだな。

一歩一歩歩くにつれ、警戒を強めていく。


歩き始めて数分程度だろうか。


「きゃあああぁぁぁあ!!!!」


突然女性の物らしき悲鳴が洞窟内に響く。


「っ……!!」


今の悲鳴、何か嫌な予感がする。

少なくとも喜びの悲鳴ではなかった。

よりいっそう気を引き締めて、僕は、走り出した。



「おっと」


少し走ったところで、突然だだっ広い空間に出た。

見回してみると、木箱やら何やらが散らばっており、何とも雑然としている。


そして、その空間の中央。

ここからの距離は十数mほどだろうか。

何かが蠢いている。

男が“何か”をしている。


「いや、……いやっ!!やめ、ぐすっ、やめてくださいっ!!」

「ああ?うっせぇな。目を覚ましたとたんに騒ぎだしやがって。いいから黙ってろ!!」


――パァン!!


何かを叩くような音が鳴り響く。

そして悲鳴は止み、……うっ、……ぐすっ、というすすり泣きだけが聞こえてくる。


ここで今、何が起きているのかわかった。



――頭がそれを理解した瞬間、理性がふっ飛んだ。



目頭、頭の中、そして胸の中が熱く滾る。

これは怒りだ。

これは憎悪だ。


これは――殺意だ。


困っている女の子を助けるだとか、人を殺さないだとか、考えていた事が頭から消え去る。


あの男を……殺さないと。


「うあああぁぁぁああ!!!!」


叫び声を上げながらナイフを掲げ、真っ直ぐに走り、男に向かう。

叫び声でようやく気付いたのか、こちらを振り返る。


「あ?なんだあ?」


僕を見て侵入者と知るや否や、男は剣を抜く。


「ギーグは何やってんだ。これじゃあ、見張りの意味がねぇじゃねぇか。ったく、いちいち殺すのは面倒なんだよなぁ」


スキンヘッドの頭を掻き、こちらを見やる。

ナイフを掲げて走り寄られているのに随分だ。


「ま、いいや。オタノシミの邪魔した罰だ。――死ね」


ドゴッ、という音とともに体が吹き飛ぶ。


「ぐっ、かはっ!!」


空気を全て吐き出し、地面を転がる。

痛みを感じる腹部を見ると、服が焼け、露出した肌が酷い火傷を負っていた。



名前 ハーグ

性別 男

種族 人間

年齢 25


HP 203

MP 137

物理攻撃 106

魔法耐性 52

運 18


スキル

剣術 Lv.3

火魔法 Lv.2


―――――――――――


男のステータスを見たが、正直どうでもいい。

殺す。

それだけしか考えられない。

再び男に向かっていくため、構える。


「なんだ?この程度の魔法も対処できないのに、どうやってギーグの見張りを突破したんだ?」

「……。」

「……だんまりか。ま、どうせ殺すし、どうでもいいか」


そして、走り出す。

今度はぶっ飛ばないように足に力を入れながら。


ドゴッ、と再び衝撃が体を襲う。

左腕が千切れ飛んだようだ。

酷い激痛が肩口に走る。


だけど、どうでもいい。


痛みも何もかも無視して男に接近する。

剣術 Lv.3を持っている男は剣を構える。


「はっ、接近戦か。上等!」


降り下ろされた刃をナイフで受ける。

次の瞬間、腕の無い左の脇腹に剣が迫る。

避けられない。

脇腹に深々と食い込み、また激痛が走る。


それも、どうでもいい。


痛みを無視して男にナイフを突き立てる。

ズグリッ、と嫌な感触を手に伝え、男の肩に突き刺さる。


「ぐあっ!!てめえ、どうしてっ!!」


決して浅くない傷を与えたのに僕が怯まなかったからだろう。疑問を口にする。


だけど、それもどうでもいい。


男の肩に刺さったナイフを引き抜き、再び突き刺す。


突き刺す。突き刺す。突き刺す。突き刺す。突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す。


途中で首を落とされたが、どうでもいい。


突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す突き刺す。



そうして気が付くと、僕は帰り血にまみれ、男はその場で倒れ伏しているのだった。

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