2話 聖騎士ヘレンに会いたい!
どうやらゲームのままの戦士(精霊)や装備をそのままここで使えると言う事だそうだ。
その戦力をこの世界に持ち込むのはチートに匹敵するらしい。
ラノベでよくある異世界チートものは存在した。
しかもヘレンと言うヒロイン付きだ。
オネスティの話だと精霊たちは俺への忠誠を誓っているそうだ。
理由は教えてくれなかった。
ともかく。
悪魔たち魔王軍を駆逐する。
ヘレンと愛を育む。
平和になる。
これが俺の使命だ。
ゲーム同様、俺は指揮官となり精霊(戦士)達と共に悪魔を打倒する。
ただしレベルは1からなのでまずはレベリングからだ。
ヘレンに会えるこのチャンスをモノにしてやる。
心を奪われたあの一言を今でも忘れていない。
もしあのイベントがこの世界でも発生するとしたら俺は理性を保っていられるのだろうか。
あまりにも邪な願望だったからオネスティにそれを確認する事が出来なかった。
こんなにモヤモヤするんだったらサクッと聞いておけば良かったんだ。
それを確かめる為にもアリーナに籠ってコスト上限を引き上げないとならない。
オネスティは俺の決心を聞いて大層喜んでいた。
はっきり言って俺がここに留まったのは不純な動機でしかない。
いやある意味ピュアだからこその動機なんだろう。
仮想インターフェース『ウィンドウ』を使えば一日に一回話す事もできる。
何かに行き詰ったらまたオネスティのところに行くとしよう。
ウィンドウは念じるだけでゲームと同じ画面がホログラムのように出現する。
俺ははじまりの街に来ていた。
誰もが一度はここを通過して世界へと羽ばたいていく。
この街並みと雰囲気が凄く懐かしい。
基本的にどこの街も中世ヨーロッパ、典型的なファンタジー世界の家屋や風景が立ち並んでいる。
この街は人類側の本拠地『ローゼン王国』の領土だ。
駆け出し指揮官のたまり場となっている。
目指すは指揮官ギルド。
オネスティに教わった道を歩く。
しかしどうも街に活気がない。
この街の人口そのものが少ないのかもしれない。
ほとんどの建物が木造で建築されている。
そんな中、指揮官ギルドは石造りの重厚な佇まいになっている。
メインストリート沿いで中心地に位置しているにも関わらず相変わらず人がまばらだ。
開店している商店も少ない。
なんだこのシャッター街のような光景は。
まあ今はそんなことどうでもいいんだ。
ギルドでアリーナの登録をしてさっさと勲章を集めるとしよう。
一応ゲームと違う点がないかしっかりと聞いておかないとな。
ギルドの扉に手をかける。
他の建物と違ってここの扉は重厚感がある。
それなりに重要視されている施設なのだろう。
自然と気持ちが引き締まる。
正面に受付が見えた。
その両脇に待機所のようなスペースが広がり、更にその奥には階段が設えてある。
一通り見まわしてから受付に視線を戻す。
女性職員が伏目がちに何か書き物をしている様だった。
「あっ、いらっしゃいませ。今日はどんな要件ですか?」
「アリーナの参加登録をしたいんだけど」
「かしこまりました。それではウィンドウを開いてステータスを表示ください」
数回ウィンドウをタッチして受付嬢にも見えるように開示設定にした。
「確認しました。ケイ様はまだレベル1ですのでブロンズランクのステージ3から始めていただきます。何かご不明な点とかはございませんか?」
「各ステージで10勝すれば昇格できて、獲得勲章が1勝につきブロンス1。上のランクに上がるにつれてプラス1でいいんだよね?」
「その通りです」
最上位のクラスだと獲得勲章が1勝につき6になる。
「どうやらこちらからの説明は不要のようですね。その認識で間違いありません」
「これでもう大丈夫だけど、今からもう戦えたりするかな?」
「多少の待ち時間はありますが、すぐに参戦可能です。このまま左の階段を下りてアリーナ控室にてお待ちください」
さて今日中に10勝してしまおう。
控室は屈強な指揮官やら神経質そうな女性の指揮官やらがけっこうな人数で埋まっていた。
中には魔法系のスキルを使いそうな人もいる。
こんな低レベルのランクで所持できる魔法ってあったっけ?
チート指揮官の俺なら話は別なんだけどさ。
そもそも俺の戦闘スタイルは魔法剣士だしね。
少し視線をそこに留めすぎたかもしれない。
魔法使い装備の指揮官と目が合ってしまった。
……。
俺と同じくらいの年齢かもしれない。ヘレンちゃんと同じ金髪なのは好印象だ。
ここは軽く会釈でもしておくか。
……。
なんて色目を出した僕が馬鹿でした。
鋭く睨まれフルシカトされてしまう。
なんだよ、ちょっと同年代っぽいから会釈しただけじゃねえか。
こっちには嫁がいるってんだよ! 何か勘違いしてませんかね?
これだから三次元の女はメンドクサイんだよなぁ。
ヘレンちゃんは別だけどね。
無駄な事に思考を割いていたらスピーカーから俺の名前が聞こえて来た。
どうやら初陣を飾る時間が来たようだ。