19話 SS 悪に染まった集団
サイドストーリーです。
今回は三人称で進みます。
ローゼン王国から西に行くとベルモッツと言う領地がある。
現在ここに人間の領主はいないので、国という態を成していない。
街は悪魔が蔓延っている。
ちなみに、この国で暮らす人間は指揮官以外が捕虜となって地下牢に監禁されている。
一時期だけヴァイスが統治していた時は、街も賑やかで人々にも活気があふれていた。
今では悪魔の巣窟と化し、どす黒い感情に包まれている。
悪魔には秩序などなく、そこかしこで争いも絶えない。
基本的に1対1での喧嘩のようで、群れる事をしない。
周りの野次馬はどちらを応援する訳でもなく、純粋に傷つけあう姿を楽しんでいるようだ。
そんな荒廃し切った街並みを二人の男が悠然と闊歩している。
「相変わらず下等な悪魔は欲がむき出しだな」
「これが本来の生物……だと思うが」
悪魔同士での諍いは躊躇していなかったように見えるが、白いローブ姿の二人には不思議なくらい手出ししない。
憎悪の念は向けているようだが、何かの抑止力が働いている様にしか見えない。
そうなると、彼ら悪魔直属の上司が何かしら二人の安全を指示しているのだろう。
殺し合いを好む種族とは言え、圧倒的な力には悪魔でも恐怖を抱く事を証明している。
白いローブの男は、かつてこの地を支配していたクラン『ヴァイス』のメンバーだ。
そして、先日はじまりの街防衛戦で乱入した二人だった。
薙刀の男はジェロン、猟銃の男はニケと言う。
「久しぶりだなゴメス」
ジェロンとニケは、且つて自分たちが王城としていた玉座の前にいる。
そこには現在のベルモッツを支配しているゴメスと呼ばれる男が座っていた。
真っ黒い肌に、頭からは大きな角が二本生えている。
バフォメットと言われる牛の顔を持った悪魔がゴメスであった。
「どうしたジェロン。もしや見つけたか?」
「そのもしや、だ。標的はローゼン王都にいる。仕掛けるなら早い方がいいと思うぞ」
ゴメスはやや楽しそうに、目尻を吊り上げて不気味な笑みを浮かべた。
「そっちの大将はなんと?」
「ゴメスの好きにすれば良いと言っていたぞ」
楽し気に笑う悪魔は少しの間瞑目し沈黙する。
そこにジェロンから情報が追加された。
「王都にいる標的は聖騎士と竜騎士だ。どちらも同じ指揮官に仕えているそうだ」
それを聞いたゴメスの目が力強く見開かれる。
「それは本当か!」
「間違いない。この目で見たからな」
それを聞いたゴメスは部下に対して乱暴に命令を下す。
この様子だと数日中に王都で大規模な戦火が立ち昇るであろう。
ゴメスだけでなく、殺し合いを求めていた悪魔達の顔はさしずめ血に飢えた狼の様に豹変した。
「それでゴメスよ。さっそくだがここの統治権をこっちに引き渡して欲しいのだが」
「あ? ああ、そうだったな。準備が整い次第この城を放棄するからそれまで待っていろ」
そう言うとゴメスは領地を治める証の剣を床に突き刺した。
無造作にそれを引き抜くとジェロンとニケは城を後にする。
ケイの前でも見せた転移魔法陣の中に二人は飲まれていった。
ベルモッツから南東に位置する森にジェロンとニケは出口を設定していたようだ。
ここはローゼン王都とベルモッツを繋ぐ街道を南下した『死の森』と呼ばれるフィールドである。
ジェロンを筆頭に、ヴァイスの数名は現在ここを拠点い活動していた。
ここに滞在しているのはジェロン、ニケの他に3名。
簡単に言うと、ジェロンが指揮官で後の4人はその戦士であるから、1部隊のみで活動している。
「予定……通りだな」
「精々ゴメスには頑張ってもらわないとな。場合によっては精霊の奪取も狙う。他の3人もそろそろここに集めといてくれ」
「ゴメスに精霊を……倒せるとは思えない。……了解した」
そして、この会話の翌日。
ローゼン王都は悪魔達の襲撃に遭う。
同時にベルモッツはジェロン達に所有権が移り、ベルモッツ王国が復活した。




