10話 ヘレンと初めての無双
街門の側面を蹴って一直線に最前線へ降り立つヘレン。
それに対して、俺は悪魔集団のど真ん中を着地点と考えている。
スタンス『ドライブショット』の跳躍効果で大きくジャンプして、街門よりさらに上空から狙いを定めた。
少し視線を伸ばすと街門の外は平原が広がっている。
彼方には既に次の悪魔たちが控えているのが見えた。
後ろを振り返ると街門からは結構離れていた。
下には米粒の大きさになった悪魔が蠢いている。
そして、盾持ちと悪魔の間に割って入ったヘレンがスキル『聖騎士の守護盾』を発動させて、広範囲の味方を防護する結界を張り巡らせた。
「第一段階完了っと」
これで盛大な攻撃を浴びせても被害は出ない。
あの盾を破るにはデバフ解除効果のあるスキルでヘレンを攻撃するしかない。
竜騎士レイラがいたら、彼女の持つバフ解除無効スキルを重ねて完璧な盾が完成していた。
正確には制限時間があるから完璧ではないのだけど、その連携で数多くの悪魔から身を守ってきた。
盾が消える前に早いとこ始末を付けてしまおう。
クルッと体を前に倒し、頭を下にして視線は着地点を見据える。
すると浮力が一気に失われ、真っ逆さまに地面へ落ちていく。
両手の拳銃『フレイムストライカー』も魔法武器であり、尚且つ炎属性の魔法を生み出す。
ドライブショットとこの拳銃を併用する事によってエクストラスキルの使用が使える。
それを待機状態にして地面スレスレまで保つ。
その前に密集地帯に隙間を空ける為、武器固有スキル『メテオライズ』を一撃放った。
着地点として狙っている範囲数メートルの地面から真っ赤に燃え盛る隕石が飛び出した。
それがむき出しになると、周囲を小爆発が襲う。
これで悪魔が消滅したスポットが出来た。
それにしてもゲームとの迫力が違いすぎる。
地面から隕石が湧き出る様子はつい見惚れてしまった。
異世界半端ないな。
あっという間に悪魔たちの表情も判別できるくらいに接近してきた。
スキル発動のタイミングに集中する。
また景色がスローモーションになった。
たぶんこれも称号スキルの効果なのかもしれない。後で確認しよう。
下級悪魔は言語機能を持っていない。
俺の急襲に見舞われ言葉ではない悲鳴を上げてパニックを起こしている。
いよいよエクストラスキル『ブレイズピリオド』を使う時が来た。
実はさっきのメテオライズの臨場感に興奮して、このスキルを撃ちたくてウズウズしていた。
初めてゲームで見た時の感動を確実に超えて来るはずだからだ。
「3……2……1、行くぞ!」
地面スレスレの所で急停止し、重力に反して少し上昇する。
逆さまのまま滞空して両手の拳銃から真っ赤な光が噴き出した。
その光が一気に拡散すると、辺り構わず炎の乱射が始まった。
それだけでも瞬く間に悪魔が消滅していく。
炎は貫通するので一気に敵を殲滅できるのだ。
悪魔を貫いた炎は全て上昇していく。
俺の真上に真っ赤なフェニックスを模した塊が完成しつつあった。
そしてこのタイミングでヘレンがスキルを使う。
俺の真下に碇の付いた光の槍が突き刺さる。
周囲の悪魔がそれに引き寄せられる様に一塊になった。
『ヘイトジャッジメント』は、槍の周囲にいる敵を呼び寄せて引き付ける。いわば盾役のヘイトコントロールに重宝するスキルだった。
「第二段階完了っと。でこれで終わりだな」
仕上げとばかりに、上空で待機していた不死鳥をその塊に落す。
攻撃範囲はメテオライズの比にならない。
瞬く間に塊の悪魔を飲み込んで行った。
すげえなおい。
こんな魔法みたいな現象が現実で拝めるなんて……。
期待以上の興奮に場違いな満足感を得た。
同じようにヘレンも満足気な表情でこちらに熱い視線を投げかけている。
そして、爆煙が晴れた後には悪魔たちの姿はなく、焼けた大地と焦げた臭いだけが残った。
一瞬の内に静寂に包まれる。
しかしこの状況を見て徐々に声が上がってくる。
街門からポツポツと歓声が湧き起ると波のように伝播していき、遂には平原に盛大な雄たけびの絶叫が響き渡った。
ただし、まだ油断は出来ない。
出来ないけど、ブレイズピリオドとヘイトジャッジメントのコンボがあれば、次の第二波も充分殲滅できるはずだ。
そしてその思惑は的中した。
同じように下級悪魔が襲って来るも、もう少しで二回目の襲撃を迎撃できそうだった。
ここで意外と早く王都からの援軍が現れる。
仕上げの不死鳥が悪魔の群れに降り注いでる最中に到着したようだ。
いくつもの部隊が爆心地にいる俺に突進してくる。
撃ち漏らしの悪魔を処理しているので、邪魔だけはしないで欲しいのだが。
上空からそれを追い越して真っ先にヘレンが少し離れて降りたった。
不快な表情を隠さないところを見ると、援軍と何やら揉めたのかもしれない。
最後の一匹を銃殺するのを待ってヘレンが小走りに駆け寄ってくる。
「あいつら援軍だよな?」
「そうなのですが、ひどく高圧的な連中なのです」
王都を根城にするくらいだからここの街の指揮官とはきっと段違いに強いのだろうな。
だけどその分、向上心のない連中と見做して下に見てるって事か。
でもそれだけでヘレンが不快になるだろうか?
駆けつけた指揮官とその部隊は揃って艶のない黒の甲冑を着こんでいる。
こりゃあれだな。きっと皆同じクランに所属しているに違いない。
その中でも一番屈強な男がこっちへ歩いてくる。
なんだかこいつら面倒臭そうだなぁ。
なんとなくだけど、相手の主義主張が予想できる。
きっとヘレンもそれが気に入らなかったのだろう。
男は俺の前で大槍を地面に「カツン」と突いてから大袈裟に咳払いをした。
「君がここまでの1位アタッカーだな?」
今回の様に大人数参加型クエストの場合、総合与ダメージの多い順にランクが発表される。
それに応じて報酬も用意されている。
「だからなんですか?」
「率直に言うと、後は我々に任せて退いてもらいたい」
要は後から来ておいておいしい所だけ掻っ攫おうって事だ。
いいんだけど、こいつら中級のレア種倒せるのかよ。
見たところ、武器も防具も星3ばっかだしなぁ。
「いいですけど、中級のレアガーゴイルは倒した事ありますか?」
思ったよりも難敵だったのだろう。
黒い集団は驚きの色を滲ませている。
しかしリーダーらしき男に一蹴されてしまった。
「まさかこんな初歩の街の防衛クエストにレア中級ボスが来るはずないだろう? 何を根拠に言ってるんだ」
「だって平原の端っこにいましたからね」
リーダーの言葉こそ根拠がない。
しかしお仲間たちはその言葉を信じ、あからさまに俺の言葉を疑っている。
「冗談はやめてくれよ。ともかくここはこれから我ら『漆黒の騎士団』が率いる事になった。門まで退いて待っていなさい」
そう言うなら遠慮なく休ませてもらいますけどね、約一名納得のいってないうちの騎士様をどうするかねぇ。
なんて思案してたらいきなり突っかかって行っちゃった。
面倒になる前に止めないと。
「貴様らそんな貧弱な装備で……ん、んぐぐぐぐ……ケイ様なに、」
「いいからここは大人しく退くよ」
後ろから抱えるようにヘレンの口を塞ぎ耳元で囁いた。
偶然なのだけど、それが功を奏したのかヘレンは脱力して素直に従ってくれる。
傲慢な男達は、ヘレンの言葉に逆上しかけたが俺が制止したことで鎮まったようだ。
ひとまず王都のやつらのお手並みでも拝見しとくか。
今日はここまでです。
拙作をお読みくださりありがとうございます。




