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1話 ソシャゲーが異世界に

 無名のメーカーが発表した「40キングダム」と言うスマホのソシャゲーがあった。

 瞬く間に人気を博す中、俺はオープン初日から課金しまくって自分の部隊を強化していく。


 その中でも聖騎士ヘレンと言う女キャラにハマってしまった。

 毎日画面にキスは欠かさない。


 一目惚れってやつだ。


 ガチャを回し次々とレアキャラを集める。

 他にも武器や防具、様々な要素に金をつぎ込んでいく。


 ガチ勢の周りにはガチ勢が集まるもんだ。

 リーダーを務めるクランも飛ぶ鳥を落とす勢いで戦力を拡大させていった。



 世界の領土を魔王軍と取り合うのがこのゲームの目的だ。

 領土に1つある城を保有すると国王となって建国する事が出来る。

 

 その結果40ある城の内、我がクランが30の城を納める事に成功する。

 世界のほとんどが俺達の国となった訳だ。


 

 しかし、人気絶頂の最中に悲劇が起こった。


 サービスを終了すると言う知らせが届く。

 何よりもまず、聖騎士ヘレンに会えなくなる事を想像した。

 

 あり得ない。

 遺産で引きこもる高卒10代の楽しみを奪うなんて!

 もっと課金させてくださいお願いします。


 そんな想いも虚しく散った。


 運営会社に問い合わせしようにも何も情報がない。

 公式サイトにも問い合わせ先が記載されていなかった。


 諦めるしかないのか。



 そしてこの栄光も残り5分。


「俺の国……俺の可愛い戦士たちよ……そしてヘレンちゃん……」


 気付いたらヘレンのアップ画をスクリーンショットに撮りまくってた。


「よし、最後にはじまりの街へ行って戦友達に別れを告げるか」


 城の転移ゲートからプレイ初日に世話になった街へとワープした。

 画面を眩い光が覆い、次第と色鮮やかな光のエフェクトに包まれる。


「あれ? なんか重いな。珍しくロードが長いけど、やっぱり皆この街に集まってるのかもな」


 移動にここまでロード時間がかかるのは異常だ。

 かれこれ2分ほど光のエフェクトを眺めている。


「ダメかぁ。一回再起動してみるかな~」


 そんな事を呟いた時だった。

 画面に初めて見る文字が映し出される。


「なんだこれ?」


 『あなたはこちらの世界に相応しい。どうかこちらで将軍の腕をふるってみませんか? YES・NO』と。


 明らかに今までのゲーム要素にないテキストが表示されている。


 ちなみに将軍って言うのはプレイヤーに与えられる称号だ。

 城を5つ持つとそれが与えられる。


 それにしてもこの文章の意味はなんだろうか。

 全てのプレイヤーにもこのテキストが表示されているのかもしれない。


「最終日のイベントか何かだろうか」


 どちらにしろ、ここでYESを押さない手はない。



 その選択がまさか本当の意味でのあちらの世界への誘いなんてことは考えもしなかった。




 ◇ ◇ ◇ ◇




 YESを選択した俺は一瞬で意識を失ったんだと思う。

 目覚めるまでの記憶が一切ない。


 そこには見慣れた景色があった。

 でもそれは画面の中での事だ。

 それがどの場面なのかが思い出せない。

 

 神殿のような建物の中に祭壇があって、俺はその前にいた。

 あまりにも日常とかけ離れている。

 懸命に何か手がかりになるものを探すが、逆に現実離れが加速していく。


 しばらくすると祭壇の真上から一筋の光が射しこんできた。


「な、なんだ?」


 光の筋は徐々に人の形に変わっていく。

 中から現れたのは女神様のような恰好をした女性だった。

 そして思いだす。


 ゲームで一番最初に出て来るチュートリアルがこんな感じたったはず。

 女神様の名前は『オネスティ』。正確には精霊神だ。


「よくぞこちら側へ来てくれましたねケイ。わたくしが誰だか覚えていますか?」


 精霊神が普通に喋ってる。

 こちら側ってなんなんだ。


 ちなみに俺は慶一郎という名前から安易にプレイヤーネームをそう名付けていた。


「精霊神様ですよね?」

「よく覚えていてくれてました。今後はオネスティと呼んでいただいて結構ですよ」


 『40キングダム』は出現する女性キャラがどれも美女だったり、ナイスボディな魅力的な容姿だったのもヒットの要因だった。


 たった一度しか登場しないオネスティの熱狂的なファンがいたりしたもんだ。

 そいつらが今ここにいたら気絶してただろう。


 ……。


 そんな事より聞くべき事がある。


「ここはいったいどこなんですか?」


 オネスティはいつの間にか祭壇から降りて俺の目の前に来ていた。 

 

「40キングダムを作成したのはわたくしの能力です。簡潔に申しますとここはあなたにとって異世界であり、40キングダムの世界そのものです」


 混乱してきた。

 何言ってるんだこの人は。


「作成したって事は開発とか運営とかの人?」

「いいえ。わたくしの異能と言えば解るでしょうか」


 解るはずがないだろう?


 それが顔に出たのだろうか、オネスティは続ける。


「この世界は悪魔に侵略され救世主を要しています。そこでこの世界を舞台としたゲームを作り、精霊に愛された人物の力を借りる事にしたのです」


 俺は選ばれし者と言う事か。


「あなたのプレイはわたくし、それと精霊達も画面の中で拝見していました。まさに選ばれし者なのです」


 さっきから出て来る精霊ってなんなんだ?


「レアリティが5と6のいわゆる戦士達は精霊としてこの世界に実在します。本来なら精霊を打ち破って契約する必要がありますけどね」


 思考が読まれているのだろうか?

 頭に浮かべた疑問が見透かされているようだ。


 待てよ?

 戦士が精霊?


「そうです。異世界『ホルン』ではあなたの愛する聖騎士ヘレンが待っていますよ」


 なんだって!

 ヘレンが俺を待っている?

 じゃあ何か、ヘレンの実物は本当に存在するってのか。


 いつの間にか俺の言葉が省略されている。

 やはりオネスティは思考が読めるのだろう。


「わたくしやヘレン達の願いはあなたがここに平和を取り戻す事です。どうかその力をお貸しください」


 会いたい!

 ヘレンが喜ぶなら平和にします。

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