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【書籍化】カワイイ俺とキミの嘘!~超絶カワイイ女装男子の俺が、男装女子を攻略出来ないハズがない!~  作者: 千早 朔
第十章 カワイイ俺のカワイイ本当

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カワイイ俺のカワイイ本当⑦


「好き、とか、よくわかんなくて。だけど今すっごい、心臓がバクバクしてる」


 顔を上げた彼女は少しだけ首を傾けると、俺の顔を覗き込むようにして、ふわりと笑んだ。


「今、凄く嬉しい。好きって言ってもらえて、本当に、嬉しい。私も、『ユウちゃん』だけじゃなくて、『あなた』のコト、もっと知りたい。沢山一緒にいて、いっぱい時間を重ねて。『お客さん』じゃなくて、『特別』として側にいて欲しいし、私も、そうなりたい。……これが答えじゃ、駄目?」


 和らいだ瞳には柔らかな熱。そんな双眸で見つめながら、至近距離での、お伺い。俺は力なく両手で顔を覆った。

 なんなんだ。ほんともう、なんなんだ。

 最早真っ赤だとか、そんなレベルじゃない。破裂しそうな心臓が全身の血液を沸騰させて、そろそろ鼻血でも出てきそうだ。


「……駄目もなにも……めちゃくちゃ熱烈な告白じゃないですか」

「だって、思ったコトだから」

「ていうか、なんでこんな時までそう……あー、もう! 俺のが男で! 漫画とかドラマならこう、ヒーロー側がバシッとかっこ良く決めて! ヒロインは可愛らしくテンパったり恥じたりする筈なのに! どうしてそう、俺よりも格好いいんですか!」


 やけくそ気味に叫ぶ俺に、彼女はほんわかと笑みながら、


「私はユウちゃんがヒロインでも構わないよ? だって、やっぱりカワイイって思うし、私も格好いいって言ってもらえるのは、嫌じゃないから」

「カワイイって……っ! ……正直、嬉しいですけども! けど、やっぱ……いいのか……?」


 あれ、お互いがいいのなら、何も問題ないのでは。

 困惑に語尾を緩めた俺に、両手を折りたたんだ膝の上に重ねたカイさんが、眉を傾けながら言う。


「……やっぱり、『カイ』も全部が演技ってワケじゃなくて、私の一部だから」

「それは……わかります。俺もやっぱり、『ユウ』がまんま嘘ってワケではないので……」

「だからね、思うんだ。私達は私達で、いいんじゃないのかなって。あ、勿論、ユウちゃんがそれで良ければだけど」

「……そうですね」


 皆が皆、同じではない。

 そもそも、枠にあてはめた考え方をするのなら、俺達は初めから『逸脱している』部類だ。今更、一般的な『本当』に固執したって、なんの意味もない。


 俺達の『嘘』は、『嘘』だけど『本当』だ。


 立ち上がり、スカートの裾と膝を軽く叩いてから、僅かに身を屈めて彼女に片手を差し出した。


「帰りましょうか」

「……うん」


 柔い笑みと共に乗せられた掌を引っ張る。今度こそ立ち上がった彼女も、自身の膝を片手で払った。

 もう片側に握られているのは、チェーンの切れたネックレス。彼女は一度、物憂げな表情でそれを見遣ってから、そっとズボンのポケットに落とした。


「行こうか……。あ、次の時間、絶対過ぎてる……!」

「落ち着いてください。一応、拓さんにも状況は伝わってる筈で……ん?」


 慌てて携帯を取り出す彼女に倣い、俺もスマフォを確認しようと鞄を開いて、見当たらないそれに首を傾げた。

 途端に記憶が蘇る。

 たしか、俊哉に会った時に、持っていろと握らされていた気が――。


(やっべ!!)


 急いで視線を巡らせたのは、路地の入り口付近。微かな電灯を拾い反射しているそれは、間違いなく目的の形状をしている。

 嫌な予感。駆け寄り拾い上げると、画面には蜘蛛の巣状の亀裂が入っていた。


「やっちゃった……」


 咄嗟に飛び出した際に、勢い良く手放したのだろう。

 僅かな望みにかけて電源ボタンを押し込んでみると、ブラックアウトしていた画面になんとか光が戻った。

 よかった。安堵したのもつかの間、途端に着信履歴が次々と表示され、行き場をなくしていたメッセージがポコンポコンと届き始める。


「大丈夫?」

「あ、はい……。画面は粉々ですけど、一応、中身は無事っぽいです……。拓さん、連絡とれました?」


 見上げた彼女が苦笑する。


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