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【書籍化】カワイイ俺とキミの嘘!~超絶カワイイ女装男子の俺が、男装女子を攻略出来ないハズがない!~  作者: 千早 朔
第七章 カワイイ俺のカワイイ調査

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カワイイ俺のカワイイ調査⑩


「正確にはわからないけど、半分いかないくらいかな」

「結構多いですね。皆さん見せてきます?」

「うーん、全員が全員ってワケではないかな。拘りは人それぞれだけど、自分から見せてくれる子達は皆楽しそうだし、そう思うとその"儀式"もカワイイと思うよ」

「っ」


 その場面を思い出しているのか、慈しむように目元を緩めるカイさんに、喉がヒュッと鳴る。

 頭に渦巻く予感。

 "カワイイ"と思うのは、"儀式"に至るその心情を指しているだけなのだろうか。

 今、口にされた"カワイイ"は、子猫を愛でるような感情ではなく、特別な愛おしさを覚えるモノではないのか。

 つまりそれは、"恋"の対象となるのが――。


「ユウちゃん?」

「あ、そう、ですか。僕ももし機会があったら、やってみたいです」


 咄嗟に取り繕うも、ぎこちなかったのだろう。カイさんは不思議そうな顔をしながらも気を使ってくれたのか、「じゃあ、その時は見せてね」と優しく笑んで、切り分けたトーストを口に運んだ。

 カチャリ、カチャリ。皿を鳴らすシルバーの微かな音が、灰色の靄が渦巻く脳内にガンガンと響く。


 終了時刻を告げる連絡が入ったのは、それから十分も経たない内だったように思う。

 その間、取り留めのない会話をいくつかした気がするが、どれも内容は覚えていない。


「今日は二人の時間が少なくてごめんね」


 通話から戻ってきたカイさんが、すまなそうに言う。


「いえ、満足です。って言ったら、またカイさんに怒られちゃいますね」

「そうだね。『もっと一緒にいたい』って言ってくれる方が嬉しいけど、でもユウちゃんはそーゆー事言わないって、わかってるから、いいよ」


 流石、よくわかってらっしゃる。

 クスクスと笑うカイさんは寂しそうというより、仕方なさそうだ。


「でも、次はもう少し改善するようにお願いしておくよ。拓さんにも、里織にも」


 肩を竦めたカイさんに、俺は苦笑を返した。


「さて」


 仕切り直したカイさんは「どうする?」とお伺いを立ててくる。

 尋ねられているのは延長の有無ではない。カイさんの予約は常にパンパンだ。

 理由は俺の皿に乗せられた、食べかけのフレンチトースト。残っていた三枚目は俺に、と譲らないカイさんにありがたく頂戴したのだが、やはり時間が足りなくまだ半分ほど残っている。


「僕はもう少しお茶していきます。ここで終わりでも大丈夫ですか?」

「うん、平気。見送れなくてごめんね」

「いえ、僕の我儘なんで。あ、次のお客さんってここ使ったりしないんですか?」


 客同士が鉢合わせたらマズイだろう。

 大丈夫なのかと訊いた俺に、カイさんはニッコリと笑んで、


「うん。ここはユウちゃんのお気に入りだからね」

「そ、れは……」


 つまり、客に合わせて連れて行く店を変えているという事か。


「……なかなか"やり手"ですね」


 一体いくつ"お気に入り"の店があるのか。呆れた俺に、カイさんは「誤解だよ」と立ち上がった。

 面白くて堪らない。そういうように片手で口元を隠して笑うもんだから、俺はむぅ、と膨れてみせる。


「あーもーほらほら。そんな顔しないで、ちゃんと見送って」

「……わかりました。上手く誤魔化されてあげますよ」

「誤魔化してる訳じゃないんだけどな」

「はいはい、それでいいですから。いいかげん行かないと」

「そうだね。拓さんから電話かかってきそう」


 苦笑して、「じゃあ、またね」と背を向けるカイさんを見送る為に立ち上がった。と、脚にふわりとした感触。

 なんだ? と視線を落とすと、飛び込んできたのはネイビーの布。

 ――そうだった。

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