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【書籍化】カワイイ俺とキミの嘘!~超絶カワイイ女装男子の俺が、男装女子を攻略出来ないハズがない!~  作者: 千早 朔
第五章 カワイイ俺のカワイイ接客

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カワイイ俺のカワイイ接客⑫


「え?」

「おれ、最初はコッチかなーって思ってたんですよー。でも単なる思い過ごしでしたねー」

「……根拠は?」

「カイさんのコトを話す時も、先輩を見ている時も、拓さんはどっちも優しい目をしてましたー」

「……は?」


 全く予想だにしていなかった言葉に、虚をつかれる。

 加えて言うのであれば、それがどうして否定材料になるのかも検討がつかない。

 そう顔にありありと浮かべる俺に、時成は溜息をついて説明を続けた。


「"牽制"に来る場合、拓さんがカイさんのコトを好きで、近づいてきた先輩を排除するためってのがワンパターン。またはその逆に、拓さんが先輩のコトを気に入ってしまって、その"推し"であるカイさんに妬いたパターンが考えられますー」

「な、るほど?」

「でもユウちゃん先輩に敵意があるって感じでもなかったですし、カイさんも本当に大切って雰囲気でしたー。なので、先輩がもう店に来ないようにって"牽制"にきたワケじゃなさそうですー」


 なるほど。

 心底納得した俺の顔を見ると、時成は呆れ顔で、


「ほーんと先輩って、コト恋愛絡みになるとサッパリですよねー」

「ウルサイ」


 乱雑にグラス手に取り、アイスティーを流し込む。

 カイさんと一緒に飲むあの店の紅茶と比べると、どうにも香りが鼻につく。


「それとですねー」


 オレンジの氷をストローでカツリと鳴らしながら、時成は愉しそうに片目を眇め、


「拓さん、きっとおれと"同類"ですよー」

「同類?」

「バイ、ですねー。アレは男も女もイケるくちですー」

「な! どして……!」

「貴重な"お仲間"には敏感なんですー」


 時成は得意顔で身を乗り出すと、「えいやっ」と俺の鼻先をチョンとつついてくる。いつもなら即座に振り払う所だが、それどころじゃなかった。

 そうだ。そうじゃないか。

 カイさんも、"その"可能性があるじゃないか。


(というかそもそも、"男"に興味あるのかすら)


 この界隈では、特に珍しくもない。大前提として、女性にしか興味が無いのでは。

 だからこそ"完璧"を演じて、多くの女性にもてはやされる"カイ"を"楽しんで"いる。


「先輩?」


 氷がたっぷり入った冷水を、頭から被ったような。

 誰よりも、分かっていたつもりだったのに。


「ユーウちゃーんせーんぱーいー!」


目の前で手を振られ、ハッと思考が途切れる。


「どうしたんですかー?」


 心配そうに覗きこんでくる時成に、「あ、ああ……」と視線が彷徨う。


(なんだ、コレ)


 バクバクと早まる心臓は、予感に対する焦りだ。

 首の後ろがジワリと熱を持ち、それでも頭部はやけに冷えている。


「な、なぁ、時成」

「なんでしょう?」

「カイ、さんは……どう思う?」

「え?」


 時成は珍しい物でも見るような顔で俺を観察して、「どうって言われましてもねー」と乗り上げた上体を引き、椅子の背もたれに寄り掛かった。


「おれは実際に会ったコトないんで、さすがに判別つきませんー」

「っ、だ、よな……」

「まぁでも先輩の話しを聞いている分には、"男嫌い"ってコトはなさそうですー」


 そう言うと時成は「良かったですね、先輩」と机上に両肘をつき、掌で頬を包むようにして、ニンマリと笑む。


「……なにが良かったんだ?」


 渦巻く焦燥は何一つ拭えちゃいない。

 苛立ちを滲ませながら返した俺に、時成は余裕の表情で言う。


「カイさんが男性を恋愛対象としていなくても、"男嫌い"でなければ、"オトモダチ"計画に支障ありませんー」

「!」


 その通りだ。

 現状、俺とカイさんの関係は極めて良好と言えるだろう。多少の誤解や不安があるにしろ、カイさんと近しい関係者にも至って好意的に受け止められているようである。

 "オトモダチ"計画は、円滑かつ順調。カイさんの"恋愛感"など、関係のない話しだ。

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