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闇の国にアリス

亀筆で申し訳ありません。

おそらく毎度こんな感じです。

その闇は深く、深く、脆かった。





                           闇の国にアリス





「っ…。」

どうやら自分は眠ってしまっていたらしい。

夢を見ていたので浅い眠りだったようだが、周りを見渡しても姉の姿はない。

何かあったのだろうか。

姉の話で眠ってしまうことは今までも何度かあったが、起きると必ず姉が側にいて、よく眠れた?と微笑んでくれていた。

そしてまた騒ぎ立てる。不器用な姉の精一杯の優しさ。

「…。のんびりしてる日曜の午後か…。」

状況を呟いてみる。

姉がわたしのために騒いでくれていたことが分かったとき、申し訳なくて、だからこそ一緒に楽しそうにするのが正しさだと思った。

わたしは騒がれるのが苦手な妹。それでいい。

こんなのんびりした午後は久しぶりだ。姉がいつもいつも騒ぎ立てていたから。

苦手だけどこうなると寂しくも感じられてくる。そういう関係でいられる。

それはとても幸せなこと。

…改めて考えると…なんか…。

「…はぁっ…はぁ…っ…はぁ…時間が…!!」

ぼーっと考え事をしていると、目の前を何かが横切った。

「…っ!?」

目で追いかけると見知らぬお兄さんが忙しそうにわたしの家の庭を通り過ぎていく。

…寛大なわたしはその光景を見逃すことにした。

どうしても急いでいるときは人の庭でも通り過ぎたくなるものだ。非常識極まりないので、わたしはそんなことしないが。

気持ちは分かる。

それにお兄さんはもう大人だ。悪いと分かっていてやっているのだろう。

それこそ問題かもしれないが、申し訳ないと思っているけれどもっ…どうしても時間がないのでお邪魔いたします…。すいません…。位の気持ちは持ち合わせているのだろう。

見たところそんな気配が察せられなくもない。

そんなところを住人に偶然見られてしまい、咎められるのはわたしも嫌だ。こういうときはお互い様だ。ここは見過ごしてやろう。

というか面倒くさいのだ。

「…ちっ…。」

ドガシャァアン

前言撤回。

こんなヤツからそんな気配が察せられるはずがない。それが申し訳なく思う家への態度か。

わたしが黙って通り過ぎるのを見ていると、急に彼が庭に悪趣味にも飾ってあった骨董品を蹴飛ばした。割れた。

あまりにも衝撃的な展開だ。いい年頃の大人な見た目に、反する非常識さ。いくら用事だかなんだか知らないが、時間に間に合いそうにないからといって、ひとんちに無断で入った上に、いかにもなように置いてあった骨董品を蹴り飛ばすとはどういう神経しているんだ。たとえ悪趣味だとしても。…うん。

目の前の光景が信じられない。

…それでもどうしても咎める気になれなかった。

子供のわたしが怒鳴ったところで(あの性格の)彼は見向きもしないだろうし、なにより…面倒くさい。

…。

「…!?」

…。

改めて見ると、彼はわたしの見える範囲で立ち止まっていた。まだ暴れる気だろうか。どうでもいいが、わたしの前で暴れられると、後々注意しなかった罪悪感に苛まれることになる。

…昔のわたしならこの庭に入っている時点で叱っていただろう。

これは進歩なのか…退化なのか…。

「…ふぅ…。」

「…!!!!!」

へ!?ん?…?

何故だろうか。彼は急に驚いた顔をして振り向き、わたしの方にズカズカ歩いてきた。

…キレイに整えられた花壇を踏みながら。

「お前は…っ…お前…溜息つく位ならなんでさっさと注意しない!?

何を考えているんだ!!!

いくら用事だかなんだか知らないが、時間に間に合いそうにないからといって、見知らぬウサギ耳男がひとんちに無断で入った上に、いかにもなように置いてあった骨董品を蹴り飛ばすとはどういう神経しているんだ。とか思わないのか!?」

「…へ?…」

まるで心を読まれたかと思われる程の完璧なセリフ。まさしく、先程思っていたことだ。

…あれ。わたし…なんでこんなに冷静なんだろう。

見知らぬ男が(中略)してきた、またさらに上に、こちらが怒鳴るべきものを急に怒鳴られたあげくのお前呼ばわり。

…あまりにも衝撃的過ぎると人間って意外と冷静でいられるものなのね。

「そんなのはお前だけだっ!!!おまけにお前呼ばわりで怒鳴り散らされてるんだぞ!?」

あ、思っていたことがどうやら口に出ていたらしい。

仕方がないので立ち上がって答える。

「…そう思うならやらなければよろしいのではないでしょうか…。」

「はぁ?!…ああっ…もうっ…なんだその言葉遣いっ…!!どうでもいいっ…敬語はいらん!!」

「え…?あー、うん。」

誰かさんにもよく言われることだ。見ず知らずの人に(たとえ非常識人間だとしても)いきなりラフな口調はどうかと思ったが、反論するのも面倒くさいので頷いておく。

「俺は…「あれ?ウサ耳?」

彼には人間にあるべき部分がなく、代わりに頭の上にあるそれらしきものがピクピクと動いていた。

「…!!…さっき話しただろう!!!…しかもどうでもいいっ…!!!時間がないというのに…っ!!!」

ズコンッ

ウサ耳のお兄さんに一方的に怒鳴られていると、今まで聞いたことのないような衝撃的な音が響いた。何が起こったというのだろうか。先程までわたしがいた場所には…弾丸らしきモノ。

…どうやら、ウサ耳のお兄さんがわたしを抱えて動いてくれなければ…。

…。

しかし、ウサ耳のお兄さんがわたしを抱えて動かないでいてくれたら…。


…穴なんかに落ちなかったのに。

「へっ…?」

「クソッ…!!」

待って…まだ死にたくない…のに…。







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