無限ワカメの悲劇
「やった!やったぞ!ついに完成した!無限に増殖するワカメだ!ははは!これで…これで何もかも解決する!もう人類全てが共存できる!食料問題の解決だ!」
2216年、二百億にまで増えた人類は地球の資源を食い尽くし、残り少ない食料の為に何千何万もの犠牲を出す戦争が起こっていた。国同士、人同士がいがみ合い、まさに混沌の時代。そこに救世主が現れた。そう、ワカメである。
無限増殖するワカメを開発したのは、とある名もない科学者だった。この時代、名前が無いのは珍しい事ではない。未熟な子は食料にされるほどであった。彼はワカメが水に入れると増えるということに注目し、食料確保、ガソリンや石油に変わる新たな資源の研究を始めた。挫折続きの研究だったが、増えたワカメをさらに増やす事でそれは完成した。こうしてワカメは永遠に手に入るようになった。
人類は増えるワカメによって救われた。戦争は無くなり、百年前に無くなった車が復活した。燃料はもちろんワカメである。ワカメが増える際のエネルギーを運動エネルギーへと変換させる機関を生み出し、永久に走る車が誕生した。
永久ワカメ機関と呼ばれたそれには、1つ問題があった。それは、ワカメが常に増え続けるというものである。二百億もの人類が一斉にワカメ機関を使い、ワカメを増やし続けたら…地球がワカメで埋め尽くされるまでそう時間はかからなかった。
ワカメ開発の第一人者。名も無き科学者は嘆いた。
「まさかワカメに人類が滅ぼされるとは…クッ!人類の為と思ってやったのに…こんな事になるなんて…!ワカメは人類滅亡への先兵!触れてはならぬ神の領域!禁忌!人類が…人が…生物が…求めてはならなかったのだ永遠など…もはや生きられぬ。人類を滅亡へと導いたのは私だ」
科学者はこめかみに銃を押し付け一気に引き金を引いた。科学者は絶命した。
ワカメに埋め尽くされ、人類が生きるスペースが無くなっても、それでも人類は諦めなかった。人類は地球を捨てる事を決意した。そして宇宙船ワカメ号を作り、二百万人を乗せて宇宙へと旅だった。宇宙船ワカメ号は永久ワカメ機関を搭載した船で、永遠の航海を可能にする代物だった。しかし永久ワカメ機関はワカメを永遠に作り出すもの。減らさなくてはまた地球を繰り返す事になる。そのため、人類全ての食事は徹底的に管理された。1日4食ワカメ料理だ。大量のワカメを消費する1日のノルマも設けられた。
それから百年後、宇宙船ワカメ号内部は見事にワカメ臭くなったという。
―――――――その船は進む。
―――――――何時の日か地球へ帰る事を夢見て。
―――――――その船はゆく。
―――――――無限のワカメを携えて。
―――――――まだ見ぬ明日へ、希望を託しながら。
すごくSFチックだけど途中から自分でもなに言ってるか分かんなくなった。