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次向かう地

 続きの話は部屋で、と白野が言うので現在2人は白野の部屋に戻っている。

 部屋に入って一段落した、というところで本題に入る。

 白野が施したものとは何なのか、このことについてである。

 それは神の加護とも言える様な物であり、それは神の加護とも言えない様な物。

 それほどまでに際どい境界線を彷徨うであろう代物。

 そんな性質を持つ2人に白野が施したもの、とは。



「印をつけただけさ。印をね」

「印、ですか」

「そうさ、それならば問題ないだろう?」



 白野の悪びれないであろう言い方にレイヤはジト目で口を開く。



「それがなんであれ、貴方様程のお方が個人の肩を持てばどうなることかお分かりでしょう」

「あの2人には世話になったからな、これくらいはな」

「……仕方ないですね」



 誰よりも主である白野、という神を理解しているのか、レイヤは首をふるふると左右に動かし目を閉じた。

 ここで予想外にも追撃の口撃が来なかったことに白野は眉を上げる。

 まさか、レイヤのお小言が無い?と白野が頭に浮かべた瞬間、レイヤが再び口を開く。



「しかし、それはいいでしょう。ええ、それはいいとしても……」

「い、いいとしても……?」



 なにやらレイヤの全身から湧き溢れる嫌ーな雰囲気に完全にビビって身を引く白野。

 心当たりと言えば、あれしかあるまい。

 先程、白野のシャツを変な汗が襲撃したあの事件である。



「あの狼藉者達は何なのですか!貴方様の趣味を考えると中々に状況は重畳なのかもしれませんが、私の身にもなってください!」

「まあ、レイヤが怒るとしたらあいつらのことだよなあ……ていうかそれ以外ないよなあ」

「当然です。神としての威厳と言うものを少しはお考えください!」



 余りの剣幕にたじろぐ白野だが、ここでやられっぱなしというのは格好良くない。

 ここは一発、神としてメイドに決めて見せるぜ!と白野は決心し、すぐさま勢い良く、とはいかずともおずおずと開口した。


「ほら、自分で言うのも?あれなんだけど?俺神っぽくない神だし?」

「なら努力してください」



 一言で撃沈された。



「努力つっても……」

「今後は誰に対しても威圧しながら高圧的な態度で話してください!」



 中々に無茶を言うメイドだ、と白野が内心冷や汗を流しながらも外見上は涼しい顔をしていると、さらにレイヤはその収まりつかぬ興奮を最大にし、白野の肩を掴んで揺さぶり始めた。

 ブンブンブン、と頭をシェイクされる白野は、これはたまらん、と振りほどいてクシャクシャの頭をかきながら弁解する。



「ほら、大衆に好かれる神になるにはやっぱりさ、なんていうか、こう……」



 手をクニャクニャとレイヤに白野が話しかけるも。



「人がいいという要因で大衆に好かれてもいずれは身を滅ぼすだけです!今までも他界に例となる神は多数いるでしょう!」



 他界の神の例を持ち出され、またもや撃沈。



「いや、まあそういうこともあるかもしれないけど……」



 しかし、白野、ここで反撃に出ようとする。



「いえ、絶対そうなります!というか、そもそもあなたは大衆に好かれる等というのは必要ないでしょう!」



 する間も与えられることなく撃沈。



「あ、肯定しちゃうんだ……」

「ともかく!今後は品位を持って他人とは接してください!!」

「は、はい」



 反撃の末、空しくも素がちょっと出かけていたレイヤに説得されてしまう始末。

 メイドにここまで振り回される神とは一体。



「……これでこの話はお終いね。」

「反省していないように見えますが」

「し、してる、してるってば!」



 メイドの怒気で身を強張らせる神とは一体。

 良くも悪くも可愛い我がメイドには逆らえない神なのである。



「え、えーと、気を取り直して、だな」

「はい」



 ようやく興奮が収まりきった様子のレイヤを見て安堵する白野。

 ちょっとクールキャラが崩れていることを自覚している白野は威厳たっぷり(?)にレイヤに宣言した。



「さて、次に向かうのは冥府にしようかと思う!」

「冥府と、なるとラヴィ様の居城へと赴くのですか」

「ああ」

「ですが、ラヴィ様の居城へと足を運んだのがリヴ様にばれれば……」



 その名を聞いた白野は眉を顰め、体を強張らせる。



「ラヴィに会ったのに自分には会いに来なかった、ってのを知られれば本気で俺に襲い掛かってくるだろうな……当然、あいつの所にもちょっとばかし寄るさ」

「それでは」

「ああ、冥府の次は天海のツアー、ってとこだな」

「それでは私が転移のご用意をいたします」



 途端に床に複雑な文字が描かれはじめ、最終的にレイヤを中心とした魔法陣が完成する。



「やっぱお前、あいつらのトコへ行くといつに無くやる気になるよなあ」

「気のせいです!」



 少しばかり、レイヤの顔が紅く染まっていることを白野何もも知らずに2人は再び部屋から消えた。

 そして当然ながら、またもやそれに気づいた者は城の何処にもいないのだった。

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