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大広間にて

 大広間に入った白野、と姿の見えないレイヤ、は顔を顰めた。

 なにせ、どいつもこいつもが白野へ向けるのは悪意、悪意、悪意の視線。

 せっかく良い気持ちに浸っていたのだ、これで不快にならないのは聖人君子か何かだろう。

 しかし、いつまでも突っ立っているのもアレだ、と開いている席へと着席する白野。

 当然、後ろに控えるは姿が見えないよう全身に透過の術式を展開しているパーフェクトメイドのレイヤ。

 白野の後ろに居る、完璧メイドにクラスメイトは気づかない。

 一流メイドの技術はダテではないのだ。



「白野ォ、お前もこっちの世界きてたんだな?俺ァてっきり力が無さ過ぎて、戦力にならねェってことで召喚の術式とか言うやつにすら弾かれたと思ってたぜ?」

「まったくだな!!」



 制服を乱している長髪の男と取り巻きを筆頭に嘲笑が周囲から上がる。

 唐突に白野を罵倒することに白野は何の悪感情も抱いていない。

 むしろ、先程から、この大広間に入って、悪意を浴びた時点で、最も心配するべき事が、増えている。



(……頼むから、あまりウチのメイドを挑発するのはやめてくれって……)



 先程説明した通り、白野は一高校生の罵倒で精神が揺らぐほどに幼稚ではない……。

 しかし、今この場には、白野が罵倒されることを絶対に許さないであろう人物がいるのだ。



(ああ、レイヤにヘイトが溜まっていく……この場にレイヤの攻撃を防ぎきれるようなタンクなんていないだろ……)



 後ろの光学迷彩メイドにヘイトが溜まっていくのを素肌にチリチリと感じ、滝の様に冷や汗を流していく白野。

 ネトゲならばタンクがヘイトの溜まった敵モブの攻撃を受けてくれるのだろうが、ここにそんな便利なヤツは居ない。

 ていうか、普通の人間が怒ったレイヤに歯向かうなど、愚かしい行為。

 主人を馬鹿にされたメイドは怖いぞ!ってことなのである。



「おい、こんなときにまでやめろよ」

「だらしないなあ、ウチの男子は!!」



 一方、白野を擁護する2人も現れた。

 それは、白野が高校にて唯一懇意にしていた親友2人。

 名を、声を上げた順に「青束 叶」と「赤看 朱衣」と言う。

 白野が地球で暇していた時、暇つぶしからハイスクール名物、IJIMEとやらを体験している中でも仲良くしてくれていた唯一の友達、である。

 正直、白野としてはこの世界に来たからには世話になったこの2人には加護を授ける気なのだが、レイヤには軽々しく加護を授けるな、とのお小言をくらうだろう。

 ていうかいくら地球で、それも自ら虐められているから、といって女2人に守られてる神ってどうなのかとも思うがそこは白野クオリティである。



「ンだよ!まーた女に守られてやがって!!!」



 女子2人に指摘を受けて尚、乱れた制服の長髪不良「河野 昌」は白野に突っ掛かる。

 河野は赤看と青束のどちらかに好意を抱いているのだろうと白野は予測しているのだが、ぶっちゃけた話大正解。

 河野は赤看に対して並々ならぬ好意を抱いている。

 それは必ずしも純粋とはいえないような好意ではあるが、執着しているのには変わりないのである。



(やれやれ、面倒臭い性格してくれちゃってさあ……)



 思わず人知れず胸のうちで溜息が漏れ出てしまう。

 赤看に好意を寄せている河野としては、赤看の庇護下にある白野を敵対視しているのだろうが、これが実に面倒臭い。

 さらにこいつは中々に悪くないビジュアル面、その軽いノリを生かして人気、人脈が多々ある。

 そんな河野に取り入ろうと、河野の言動に調子良く合わせる馬鹿な取り巻きというやつがこれまた存在しているのだ。

 そもそも自分がその行為によって品格、評判を名実共に下げていることに気づかないのが実に馬鹿らしい。

 こんな軽文学のジャンルに出てきそうな軽い脳味噌の持ち主がいていいのかと白野は本気で思案したこともある。

 かといって無視していてもアレなので白野はいい加減フリーズによる傍観をやめて話を切り出した。



「まあ、僕がここにいるのは運だろうね。でも今はそういう話はやめて食事を頂かない?」



 僕、なんて言い方を白野がしているのを知り合いが聞いたのなら吹き出す事だろう。

 なんせそんな猫をかぶっていると言うことは、相手は意図的に白野を軽視し、その後その白野の持つ膨大な力も持ってして驚かされる、という白野の悪趣味につき合わされている被害者だということなのだから。



「ふん、相変わらず女々しいな!皇女様の言ってた資質、とかいうやつでてめーなんかぶっ殺してやるよ!」

「お手柔らかにね」



 また周りから嘲笑が上がる。

 味方である2人は不満そうにしてくれているようだ。

 白野にはそれだけでも加護を与えるには十分だ、と内心思う。

 白野の心中も知らず、2人がまた言い返そうと声を上げようとした時、絶妙なタイミングで燕尾服の執事らしき男が声を上げた。



「それでは、これよりお食事を開始させていただきます。形式はバイキングとさせていただきますので、ご自由にどうぞ」



 人数が揃ったのでバイキングがようやく今から始まるようだ。

 完全に言い返すタイミングを失った2人はそのまま不満そうな顔で河野を睨んだ。

 そんな2人を遠巻きに見ながらこの2人には幸せになってもらいたい、と思いつつ白野は1品目の料理へと意識を移した。

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