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できたメイド

 さて、今現在龍神国から帰ってきた白野達は再び部屋でのんびりしている。

 ちなみに白野はベッドに四肢を投げて寝転んでいる。

 あちらに居たのは数十分のことだったし、誰も白野達が部屋から消失していたなんてことに気づくまい。



(そろそろ夕食の時間を知らせるためにメイドでもやってくるハズ……。って、レイヤの奴が案内してくれたんだっけ?結局、どういう立ち位置なんだ?)



 そこまで考えた白野は手をパンと叩くと、レイヤの方を向いて用件を伝えようとした。



「レイヤ、」

「私はこの王国のメイドとして潜入しております。もちろん貴方様の担当は私です」



(早いよ!!まだ何も言ってないよ!!!!昔だってここまで意思疎通してなかったっていうのに)



「我が主の仰る事は大抵予測済みです。」



 また考えを言い当てられて白野は顔を引き攣らせる。

 とはいえ、意思疎通の手間が省けるので、これをポジティブに捉え、流石は我がメイド、弛まぬ修練の賜物か、と白野はひとしきりウンウンと頷く。

 頷いている途中で白野は不意に動きを止める。



「ていうことは、なんだ、俺がこの王国に召喚されることを、予期して?お前そんな予測能力者だっけ?」

「情報収集のために偶然潜り込んでおりました。担当は武力的交渉で配置換えさせていただきました」

「相変わらず通常運転だな!っていうか情報収集のために自ら潜り込むってメイドの仕事じゃないよな?なあ?」

「一流のメイドはこの程度はできて当然です」

「俺が居ない間にこの世界は人間離れしたメイドが増えたのかよ」



 いつの間にこの世界はそこまで進化を、いや。

 世界中探しても、こんな非の打ち所の無い一流のメイドなんてレイヤしか居ないからあながち間違ってもいない、と言う風に白野は考えている。

 だが、こんな言葉レイヤに聞かせたりした日には調子に乗るからわざわざ口に出して言わないのだ。

 それに自分の考えはどうせ筒抜け、態々口で言う意味は無い、と。

 正に絶対的な信頼を置く主と従者の鏡である。

 この完璧なメイドにも白野という絶対的弱点があるのだが、それに白野は気づいてはいない。



「主様、そろそろ夕食の時間です」



 レイヤは懐から懐中時計を取り出すと、確認して白野をベッドから起こした。



「ん、大方夕食にでも呼びに来たんだろう」

「それでは、夕食の場となる大広間へと案内いたします。私は御傍に控えさせていただきますので、御用が有れば何時でもお申し付けください」

「おう」



 途端、レイヤの立ち振る舞いのグレードが数段下がった。

 これならば他のメイドと比べても異常すぎると言うことも無し、完全完璧、最高の仕事である。

 本当によくできたメイドだ、と白野は思う。

 そして地球で暮らしてた分余計に痛感する。

 レイヤの世話を受けられることがどれだけありがたいか、とうことを。



(レイヤに会えてよかった)



 そう心から思っていると、レイヤが廊下へと出る。

 大広間まで先導してくれるらしい。

 どうやら少し長い距離を歩くようだ。



(俺もボロを出さないように気をつけないとな。)



 と、白野は決意しレイヤの後を遅れないように着いて行く。



「大広間ってのは何人くらい入れるんだ?」

「そうですね、数クラス分は軽く、でしょうね」

「料理ってのは?」

「コース、というのも考えられたようですが、人数の多さからバイキング形式が無難ということでバイキング形式を採用しております」



 成る程、悪くない待遇だろう。

 そもそもこれほどの人数を収容、もてなしができる時点で花丸だ。

 バイキング形式だろうがなんだろうが全員に料理が出てくるだけ凄いだろう。

 ここは地球ではないのだ、有り余る食料なんてものがあるはずも無い。

 それなのにこれだけ出てくるとは、この王国の国力を表しているといってもよいだろう。



「そろそろ大広間ですので、ご準備ください」

「ああ、その辺は抜かりない」



 レイヤの後ろについて回ることしばらく。

 周りに見慣れた高校の制服を着た人物が多くなってきたな、と思っているとやけに大きな扉が開いている部屋の前に着いた。



「皆様席に既にお着きのようです。どうぞ」

「ああ、それじゃあここまでの案内ありがとな」



(不可視の術式で主様の後ろに控えておりますので、何か御用が有ればお申し付けください)

(了解、っと)



 と、白野がレイヤに労いの言葉をかけ大広間に足を踏み入れる直前に、誰にも気取られないよう小さな声で言葉を交わす。

 どうやら、大広間に入ってからも付き従ってくれるらしい。

 本当にできたメイドだ、と気分が高揚した白野は大広間に入る。

 すると、こちらを睨む多数の眼、眼、眼。

 一体どうしたと白野は眼を白黒とさせ、直に合点がいった。



(そういえば俺はこいつらから嫌われていたんだったっけ?)

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