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ヒナア

 今現在、白野はどこにいるでしょうか。


「答え、戦地~……」

「どうしたの?いきなり」

「頭でも打ったか?」



 そう、何を隠そうか、白野は只今最前線の地にてヒナアのとの接敵を目前へと控えているのだ。

 随伴には熟練と思われる騎士が2人。

 それに対して高校生は10人。

 合わせて12人が一塊の小グループとなっている。



(なんでこんなことになったんだろうなあ)



 あの後、結構高めのテンションで修正しなおしたステータスを存分に二人に見せつけた白野。

 二度の失敗を重ねた上でのようやくできたステータス値だったので高いテンションだった白野。

 これがいけなかった。



 まさか、知らぬ内に皇女様の話が終わっていて、グループ決めまで終了し、それぞれのグループ担当の持ち場へと移動することになっているとは。

 興奮していた白野も、それを少し引きながら聞いていた赤看も青束も全く聞いていなかった。

 それはもう、寸分違わず何も、一切聞いてない。

 レイヤが代わりに聞いていてくれなかったら大変なことになっていただろう。



(しっかし、マジでいきなり実践から入るとは思わなかったけど……)

(私からしてみれば安全対策、とやらが本当に作動しているのかすらも疑問です)

(その点は大丈夫だろう。まあ、誰かが死ねばわかるさ)



 各自、手に持たされているのは国から支給された鉄の剣。

 本来なら自らに合った適正のある武器を選ぶのだろうが、今回は緊急時という事で全員に剣が支給されることとなったのだ。



(俺としてはヒナアがこのタイミングで襲来してきたってポイントのが胡散臭く感じるんだけどなー)



「あ、あれ!もしかしてあれがヒナア!?すっごい白いよ!!」

「あれは、人?獣?竜?あれ全部がヒナアなのか……!?」



 赤看と青束の声がこちらにも届く。

 ちなみに二人も同じグループに入れられた。

 どうやら望遠鏡を用いての視認ができるレベルまでにヒナアが近づいたらしい。

 昔、白野がこの世界に居た頃と今で、ヒナアに変わりはないらしい。



(こっち方面にはヒト型2に獣型3、魔人型1に亜人2……それとレア種の竜型1)



 ヒナアとはこの世界における膿である。

 そして一番の特徴と言えば、ヒナアとは決まった形を持たない、ということである。

 人であり、魔人であり、獣であり、亜人であり、竜である。

 つまりはこの世界に存在する種族の形を持って生まれる。

 しかしながら、本当の種族と変わりない体を持ちながらも実に簡単で確実な判別方法というものは存在する。

 ヒナアは体が白いのだ。

 それも濁った白、などではなく、純白。

 中でもヒト型や魔人型、亜人型は服を着ているにもかかわらず、その服すらも白いのだ。



(でもこれ素人には無理だよなあ……ヒナア一体で成人男性二人くらいはいくだろ?)



 ヒナア一体で及ぼす影響は成人男性二人分相当である。

 雑兵ではあるがそれなりの戦力であり、訓練を積んだ兵士であろうとも決して気を抜けないような存在である。

 もちろん、これだけでは人口の削減目的になるはずもない。

 これらは所詮雑兵であり、当然将軍級のヒナアも存在する。

 こちらはかなり雑兵とはかけ離れた実力を持ち、街をも潰せるような力を持っている。

 たぶん、今回の襲撃にもいるはずなのでそちらに重要な戦力は割いているのだろう。



(しかし、よくもこれだけ都合良く少ないヒナアをこっちに流せたな……普通狙ってできるようなことじゃない)



 ヒナアの思考能力は意外と高く、その外見の割りに智謀を持って戦いに接してくる。

 さらに、どういうわけか将軍級が存在しているとその統率は極めて高いものとなる。

 こんな少数を本隊から切り離すなんて将軍級を討ち取らねば不可能。

 しかし、こんな序盤で将軍級が討ち取られる可能性は皆無。

 つまりは。



(これも人為的。ヒナアを自由にできるのか?あれを改変できる奴なんて早々限られてくるってのに)



 ヒナアを意のままに操ることは至難の業といってもいいだろう。

 このアンダー=ノートの主神を除いては。

 その理由はヒナアの正体にあるのだが。



(結構高位なのが相手?益々面倒臭くなってきた)



 なんてことをつらつらと考えている合間にもヒナアは目前へと迫ってきている。

 自分がいる限りはこの口うるさい女子高生二人は死なないだろう。

 あの襲撃者よりはマシであろう。

 と、白野は考えながら剣の柄を握る。



「そろそろですか?」

「ああ、皆用意してくれ」



 国からの随伴騎士に問うと、騎士は用意しろと告げる。

 それを聞いて、安全対策はしてあると聞いてもどこか臆した表情で高校生達は用意された剣を腰に下げる。

 支給品の中に鎧すらないとはどうかとも思うが安全装置とやらを考えるにその辺は必要無しと考えたのだろう。



「さあ、さきほど教えた陣形で行くぞ」



 騎士を中心として高校生達がそれぞれの持ち場へとつく。

 誰かが喉を鳴らした。

 その瞬間。



「来たぞ!!構えろ!!!」



 全世界に住む全てのものの災厄が騎士二人の、高校生達9人の、白野の目の前から駆け抜けてきた。

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