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ステータスの狙い

「……ちなみに聞いとくけど六歳児って何を根拠に?」

「さっきの皇女様の話聞いてなかったの?」

「1歳児から成人までの平均ステータス値や、動物の平均ステータス値を詳細に説明していてくれたのに……」



 ちらりと一瞬だけ皇女の方面を向いた白野はそのまま考える。



(さっきの皇女様の話……?)

(ちょうど、私達が念話に夢中になっていた頃かと)

(……ああ、だから記憶に無いわけだ)



 道理で記憶に無いはずだ、と白野は納得してステータス画面を凝視する。



(ここでバラすのは少しばかりもったいなさ過ぎる……せっかく「な、何者だお前は!!一般人と変わらぬステータスの持ち主が何故こんな力をッッ!!」みたいな展開が期待できるのになあ……この二人だけに種明かしをするというのも……否、一番親しい間柄だからこその驚き、畏敬というのもある……)

(全部漏れ出てますが、一言で言うと悪趣味ですね)

(いやだって絶好の機会じゃん?でも六歳児のステータスって逆に目つけられると思うのよ。どちらかというとこの高校生達全員の平均くらいのステータスを俺はご所望なんだけど、それについてはどう思うよ?)

(……そんな回りくどい方法を使わずとも、手頃なステータス情報を再び集めてこい、と命令してくだされば実行しますよ)

(いや、お前今のところ持ってきたステータス情報100パーセントの確立でバッドステータスなんだけどわかってるかな?)



 念には念を押した会話で今度こそ、とレイヤを送り出す白野。

 これでまた畜生や幼稚園児なんかのステータス情報を持ってきたら承知しないぞ、と白野は意気込む。

 ていうか、先程も考えたがこの中に犬やら幼稚園児やらのステータスを持っている奴がいるのだろうか。

 白野は自分のステータスが悲惨な結果で落ち込んでいるフリをして二人を話しかけにくい状況にして思考に没頭する。

 上位界の人間ともあろう者がこの世界の犬と同じ?幼稚園児と同じ?

 笑止千万。

 高校生でも成人男性を5人はまとめて相手できる程、両者の差は大きい。

 それがステータスに反映されていない?

 その可能性は低いだろう。

 先程、ステータスを書き換えたときに白野は構造の一端を一瞬ではあるが垣間見た。

 単純にその人物或いは動物の今現在持っている力を映す構造だった。

 この世界に召喚された高校生達こと上位界人は未だその資質は眠ったままだ。

 まあ、未だに成人していないから当たり前ではあるのだが。

 それでも上位界人と下位界人ではそもそもからして基礎能力が違う。

 つまり長くなってはしまったが、何が言いたいのかと言うと。


 上位界人の能力がステータスに反映されていないなどという事は絶対に有り得ない。


 ということである。



(まあ、なんというか……人為的な悪意を感じるよなあ)



 そもそも、その人物らのステータスが本物であり、数値を偽証しただけのものではないとしたら。

 失われたステータス値はどこへいったのか。



(誰かに割り当てたか……?)



 上位界の人間と言えども所詮は人間。

 神がそれを手玉に取るなど朝飯前。

 最低位の神であろうともそれくらいはできるであろう。

 だが、この集団と言う中でそんなことをすれば。



(狙いはいじめを起こすこと?)



 元の世界、すなわち地球でもいじめというものは往々にして存在した。

 時には全国ニュースにも挙がるほどに陰湿なものも存在した。

 ならば、この世界はどうか。

 圧倒的ステータスを、力を手にした者と力を持たざる者。

 結果は見えている。



(ガス抜きってことか?)



 おそらくはガス抜き。

 噴出されるであろう異世界召喚への不満を開放させる手段。

 そのために何人の高校生を切り捨てるつもりか。

 恐らく、犬と人間のステータス差では。

 それも人間の中でも一際高い、上位界補正のステータスとでは。



 死者が出る。



(…………ま、いいか)



 現状助ける手段もないし、ここで下手に動いて相手の神に見つかれば面倒なことになる。

 特に一番最悪なのが、その神がかなり神格の高い神であること。

 さらには、この世界にそのレベルの神が何柱も存在していること。

 神格が最上位の古神なんかと当たった日には。



(なんともゾッとする話だな)



 白野も勝利を手に入れられはしても五体満足では済まず、さらには完治に長い年月を必要とするであろう。

 それは、あくまでも白野と古神とタイマンで戦った場合での話。

 一対一でならば別に倒せない相手ではあるのだが。

 それが何柱も、となるとかなりの苦戦、悪戦を強いられるだろう。

 そして最後に待っているのは。



(消滅…………死、か)



 白野は死を恐れる。

 最悪の場合を考えて出るに出られず動けなくなる性分。

 その身に圧倒的力を有していても怖いものは怖い。



(怖くなってきたし考えるのやめとこ…………お)



 と、頭の中から要らない考えを全て消し飛ばそうと白野が考えた瞬間。

 レイヤに頼んでいたステータスデータが頭の中に送られてきた。



(やっと、きたかー。でもさっきよりちょっとと届くのが遅い気が……)

(すみません、全員分のデータの集計に少し手間取りました)

(……マジで全員分のデータ集計して平均割り出したのかよ……)


 心の中で有能メイドに賞賛しながら、ステータスの値を一つ一つ変えていく。

 そして数秒後には。



(よし、三度目の正直、仏の顔も三度まで!)



 完成した自身の完璧に平均過ぎる平凡な普通のスペータスを一通りもう一度眺めてニヤけた後。

 先程までの落ち込んでいた貧息は何処へやら。

 勢いよく白野は背にしていた女子高生二人へと振り返った。


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