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第四十五話 動き出す亡霊達

今回から、再び黒城一派との戦いに移ります。

とある都内の深夜。人の子一人通らぬ時間帯。ここに、ぽつりと一つの墓があった。


「素晴らしい怨念だ。」


その墓の前に一人の男、デュオールが降り立つ。デュオールはカースを墓に向けると、自分の霊力を飛ばした。すると、墓石が発光を始める。


「その憎悪を解き放ち、我に仕えよ。」


デュオールがそう唱えた瞬間、墓石の光が、一つの光弾となって飛び出し、デュオールの前に落ちた。やがて光は、一人の男性の姿を形成する。


「お前の名は?」


デュオールが尋ねると、それは答えた。


「平将門。」











ヒーリングタイム。


「うっ!」


美由紀は右手で頭を押さえ、左手をテーブルに置いて身体を支えた。


「美由紀!?」


輪路が駆け寄って、美由紀を支える。


「……大丈夫です。治まりました」


あの日以来、一日に一回、美由紀が頭痛を発症している。いずれも突発的なもので、すぐ治まるのだが、輪路としては気が気でない。


「本当に大丈夫ですか?病院に行った方が……」


「平気です。頭痛は一日に一回だけですし、すぐ治りますから、この程度のことでいちいち病院に頼ってなんていられません。」


「確かにそうですけど……」


あまりに長く同じ症状が続くので、ソルフィは仕事を休んで病院に行くよう勧めたが、大した症状ではないのでいいと、美由紀は断る。


(……病院では治せないと思いますし……)


それに、薄々勘づいていた。これは、病院に行って治せるような、普通の頭痛ではない。それこそ、討魔術士にでも頼まなければ治せないだろうと。


(でも何でだろう?この頭痛、治しちゃいけない気がする……)


しかし、美由紀の中の何かが、ソルフィ達から治療を受けることを拒んでいた。とにかくこのままでいたい。現状維持がしたい。その衝動に、美由紀は抗うことができない。不安で不安で、今すぐ治してもらいたいはずなのに。


(……大丈夫。いざとなったら、輪路さんが守ってくれる)


輪路を信じている。その気持ちだけが、美由紀の精神を支え続けていた。


「気を付けろよ?お前は時々、危なっかしいからな。」


「……はい。」


輪路が美由紀に注意を促す。美由紀が返事をすると、柔らかな笑みを浮かべてコーヒーを飲む。と、


「……」


輪路は突然険しい顔をした。美由紀は少し驚きながら、輪路に訊く。


「どうしたんですか?」


「結界です。街の真ん中に、結界が出現しました。」


ソルフィが理由を答える。そう、突如として街の中心にあたる部分に、結界が張られたのだ。輪路はそれを感知したのである。


「ああ。それもこの霊力、覚えがあるぜ。」


しかも、結界を張ったのは、輪路にとってよく知った人物であるという。


「すぐ片付けてくる。マスター、これ勘定な。」


「まいど。」


輪路は佐久真にコーヒー代を払い、急いで店を出発する。


「覚えがあるって、一体誰なんでしょう?」


「私も感じたことがあります。この霊力は、デュオールです。」


「デュオール!?」


確かに輪路がよく知る人物だ。輪路どころか、美由紀もソルフィも知っている、超危険人物である。


「でも一体なぜ彼がこんな真似を?デュオールは結界を使わないんです。それにこの結界の張り方……」


ソルフィは違和感を覚えている。デュオールは結界を張らず、直接相手を襲うという戦闘スタイルの持ち主だ。それがなぜ、突然結界など使ったのか。しかも、わざわざ街の真ん中にである。


「もしかしてこれ、輪路さんを誘ってる、とか?」


「……可能性はあります。」


まるで輪路を誘い出そうとしているかのような結界の張り方。輪路なら、デュオールに狙われる理由は確かにある。


(……輪路さん……)


胸騒ぎを覚えながら、美由紀は輪路の無事を祈った。











街の中心。


「来たか。」


そこには結界の存在を察した三郎が、既にやってきていた。


「三郎。この霊力、どう考えてもデュオールだよな?」


「ああ。だがあの野郎、何だっていきなり……」


輪路と三郎が疑問を抱いていると、唐突に結界が裂け、輪路と三郎が通れるだけの道ができる。


「……来いってことか……」


明らかに罠。だが、輪路はあえてその誘いに乗ってやることにした。三郎を肩に乗せ、輪路は結界の中に入る。入ると同時に道は閉じたが、構わず進む。そして結界の中心には、デュオールがいた。


「よく来たな廻藤輪路。」


「てめぇが呼んだんだろうが。で、何の用だ?つっても、わかりきってることだとは思うがな。」


「ああ。廻藤輪路、貴様には死んでもらう。」


「やっぱりな。お目当ては俺の魂だろ?」


「いや。わしの目的は貴様の死だけだ」


「……何?」


今まで黒城一派は、輪路の魂を狙って襲い掛かってきた。だが今回は輪路の魂を必要としておらず、ただ殺すためだけにやってきたと言ったのだ。


「……どういう心変わりかは知らねぇが、それで俺とお前の一騎打ちってわけだ。けどお前、そりゃあまりにも無謀ってもんだぜ?」


「無謀?何がだ?」


「わかんねぇか?俺とお前の実力差は、もう開きすぎちまってんだよ。今の俺なら、お前なんか片手で勝てるぜ。」


輪路は強くなるためにたゆまず修行を続け、心身霊力ともに大きく強くなった。霊力に至っては、デュオールの数百倍以上である。デュオールも以前より遥かに強くなってはいるが、それでも輪路には届かない。


「なるほど。確かに貴様は、以前と見違えるほど強くなったな。だが、わしの戦いは無謀などでは決してないぞ?」


だがこれほどの力量差を前にしてなお、デュオールは自分は無謀を犯してなどいないと言う。


「どこか無謀じゃないってんだ?言ってみろよ。」


あまりにも滑稽な話に、輪路はデュオールを小馬鹿にした。


「そう急かずとも教えてやる。」


デュオールはもったいぶるかのようにニヤリと笑った。まるで、無謀はたった一人でここに来たお前の方だと言わんばかりに。そして、デュオールは大声で呼んだ。


「殺徒様!!!」




その頃、冥魂城。


「オッケー。」


玉座に頬杖をついていた殺徒は、ブラッディースパーダを抜き、真上に掲げた。すると、ブラッディースパーダから霊力の雷が飛び出す。雷は天井を透過し、現世に向かって飛んでいった。




そして殺徒が放った雷は、現世にいるデュオールに直撃する。その瞬間、デュオールの霊力が一気に膨れ上がり、輪路との差を完全に埋めてしまった。


「何!?てめぇ何をしやがった!?」


「驚いたか。邪神帝オウザには、聖神帝を倒すために様々な機能が搭載されていることは知っているな?これはその一つ、眷属強化だ。」


邪神帝に搭載された、対聖神帝能力の一つ、眷属強化。自分に忠誠を誓うリビドンや支配しているリビドンに己の力を与え、際限なく強化する能力だ。オウザの力は無限であるため、複数のリビドンを何百倍にも強化しても、全く苦にならない。数で攻めてきた聖神帝を、同じく数で圧倒するための能力だ。


「そしてオウザの機能は、オウザが完全復活しなければ発動しない。」


「……復活させやがったのか、オウザを……!!」


これでようやくわかった。オウザは完全復活を遂げ、もう輪路の魂を狙う必要はなくなった。だが生かしておくと邪魔になるため、殺しに来たのである。


「そうだ。貴様らがアンチジャスティスとの戦いに四苦八苦している間に、我々はオウザを復活させたのだ。もはや貴様など、我々の敵ではない!!」


「ちっ……」


輪路は焦る。無限強化能力者には、今まで散々苦労させられてきた。殺徒のようなボス級ならまだしも、他の雑魚まで無限強化するようになったら、手が付けられない。


「そして強化されるのは、単純な能力のみではない。」


カースを掲げるデュオール。すると、デュオールの目の前に、一人の男性が現れた。


「この男の名は平将門。この地に凄まじい怨念を残した男だ」


「平将門だと!?」


平将門と言えば、首塚で有名な偉人だ。打ち首獄門に処されたこの男は怨念を遺して死に、その首塚を処理しようとすると必ず事故が起きるという話は輪路も知っている。


「そして、殺徒様のお力で強化されたわしがリビドンに変えると……!!」


「がああああああ……!!」


デュオールが再びカースを向けると、穂先からエネルギーがほとばしり、将門が苦しみ出す。


「やめろ!!」


「おい輪路!!」


デュオールは将門をリビドンに変えるつもりだ。それを阻止しようと、三郎を振り払って駆け出す輪路。だがデュオールはイビルを輪路に向け、こちらからも同様にエネルギーを放つ。輪路はシルバーレオを抜き放ち、咄嗟に受け止めた。


「大人しく見ておれ!!」


凄まじいパワーだ。一歩も踏み込めない。そうこうしているうちに、将門がリビドンに変化する。人間ほどもの大きさのある、形相を浮かべた首だけのリビドン、ヘッドリビドンだ。しかし、先ほど以上の憎悪と霊力を感じる。デュオールは霊力の放出を止めた。


「わかったか?殺徒様のお力で強化された上級リビドンは、他者をリビドンに変える力も強化されるのだ。さて、貴様には我々の実験台になってもらうぞ。」


「……上等だ。二人まとめて成仏させてやる!!神帝、聖装!!」


輪路は二体のリビドンを成仏させるため、レイジンに変身した。


「行け!!」


「ヴアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


デュオールが指示を出すと、ヘッドリビドンが突撃し、その巨体を活かした頭突きを繰り出す。レイジンはそれを受け止め、弾き飛ばした。あらぬ方向に吹っ飛んでいく生首。だがヘッドリビドンはすぐに空中で静止して、口から霊力の光線を吐いてきた。レイジンは耐えられたが、レイジンの足元の地面が爆発し、少しよろめいて後退する。その隙に再び突撃してきたヘッドリビドンが、頭を横にして大口を開け、レイジンに噛みついた。危うく食われそうになったレイジンだが、両腕で歯を受け止めて、口を閉じられないよう耐える。


(ヤバいな……俺は余裕で勝てるが、他の討魔士じゃ無理だ)


殺徒に強化されたデュオールの力で誕生したリビドンは、とてつもない力を持っていた。下級リビドンなのに、上級リビドン並みの強さである。これが大群で攻めてきたら、止められっこない。


「ライオネルバスター!!!」


両腕が塞がってしまっているので、仕方なくライオネルバスターで迎撃する。レイジンの霊力光線はヘッドリビドンを貫通し、レイジンから離れた。だが、普通なら確実に成仏するはずのダメージを受けたのに、ヘッドリビドンはまだ成仏しない。


「ほれ。」


空中を虚ろな目でふらふらしているヘッドリビドンに、デュオールは再びカースで霊力を浴びせた。すると、


「ガアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


傷が一瞬で全快し、さらに大きさが二倍になった。


「こんなこともできんのかよ……!!」


殺徒に強化された上級リビドンは、従えているリビドンを強化再生させることも可能なようだ。ヘッドリビドンが再び襲い掛かってくる。デュオールがいる限り、何度ダメージを与えても強化再生されるだろう。かといって、この状態でデュオールまで一緒に倒すのは難しい。


「だったらこっちを倒す!!」


なら、ヘッドリビドンに再生できないほどのダメージを与えて、一気に成仏させる。今こそ、過去で光弘から習った技、必滅の瞬きの使いどころだ。シルバーレオを両手で構え、ヘッドリビドンの接近に合わせて放つ。


「はっ!!」


気合いの掛け声。それと同時に、シルバーレオの刀身から千を越える斬撃が放たれ、ヘッドリビドンを斬り裂いた。


「……ウゥ……」


一瞬にして怨念全てを剥がされた将門は、また一瞬で成仏していった。


(これが、お前が過去で光弘から習った技なんだな……)


光弘が放ったものに比べれば、威力も速度も数も十分ではないが、放てるだけで相当評価できる。輪路の力が光弘に近付いていっていることを感じ、三郎は成長したとしみじみ感じていた。


「まさか……いつの間にそんな技を……」


デュオールは驚いている。いつの間にこんな凄まじい技を覚えたのか、さっぱりわからない。


「ちょっと習ったのさ。名前は必滅の瞬きっていうんだが、俺のノリじゃねぇ。だから技名を、レイジンインフィニティースラッシュに改めさせてもらうぜ!」


また勝手に名前を変えるレイジン。まぁ、レイジンらしいと言えばらしいが。


「で、今回連れてきた取り巻きはこいつだけか?」


「……ああ。ここから先は、わしが直々に相手をしてやろう。魂身変化!!」


配下のリビドンを倒された以上、デュオールが相手になるより他ない。デュオールは魂身変化を行い、怪人態へと変身する。また霊力が一段と高まった。


「んじゃ、遠慮なく倒させてもらうぜ!!」


デュオールは自身を強化したが、レイジンにもまた上がある。霊石全てを同時に使用し、全霊聖神帝にパワーアップした。デュオールは変身していない状態で殺徒の強化を受け、そこから変身してさらにパワーアップしたので、完全にレイジンを上回っていた。だが、レイジンが全霊聖神帝になった瞬間、その力の差はまた元通りに埋まったのである。


(力の差がほとんどないなら、あとは技の戦いだな)


三郎は考察した。だが、心配してはいない。これまで幾多の戦いを乗り越えてきたレイジンが、技や経験で劣っているなどあり得ないからだ。例え相手が、邪神帝のバックアップを受けた上級リビドンであろうと、負けるはずがない。そう信じていた。


「行くぜ!!レイジンジェミニ!!!」


言うが早いか、レイジンは三人に分身した。火の霊石と力の霊石を使っているレイジンと、水の霊石と技の霊石を使っているレイジン、土の霊石と速さの霊石を使っているレイジンだ。三人のレイジンが、デュオールを三方向から同時に攻め立てる。


「ぬう……!!」


いきなり意表を突いた攻撃をしてきたレイジンに、デュオールは二本の槍を振るって応戦するが、さすがに三人のレイジンを同時に相手にしては防ぎ切れず、何発か喰らっている。


「うおおおお!!!」


だが、レイジンジェミニはレイジンの数と一緒に、パワーも分散されてしまうという欠点がある。デュオールが気合いとともに全身から霊力を放出すると、それが衝撃波となってレイジン達はあっさり吹き飛ばされてしまった。


「ちっ!やっぱこの技は奇襲向けだな……!!」


霊力の消耗も激しいから、そうポンポン多用できる技ではない。


「なかなか面白い技だったが、威力を分散させた攻撃でわしを倒せると思ったか?舐められたものだな!!」


デュオールは左右の槍を一本ずつ振る。槍からは光の刃が飛ばされ、それぞれ一体ずつレイジンを倒した。倒されたレイジンは霊石に変化し、本体のレイジンに吸収されて、全霊聖神帝に戻る。


「ふん、外れか。さて、次はどうする?それとももう種切れか?先ほどの必滅の瞬きという技を、わしに叩き込んでも構わんぞ。」


「言われるまでもねぇよ。望み通り叩き込んでやるから覚悟しろ!!」


レイジンはデュオールに斬り掛かった。分身戦法が通じない以上、出力を集中して殴り勝つしかない。縮地を使って急接近し、


「レイジンインフィニティースラッシュ!!!」


早速レイジンインフィニティースラッシュを放つ。


「ジャベリンラッシュ!!!」


対するデュオールは、二本の槍に霊力を込めて高速で突く。一撃一撃の威力は互角だが、手数も速度も違いすぎるため、レイジンは押しきって斬撃を命中させる。


「ぐあああああ!!!がっ!!!」


斬撃に圧され、デュオールは倒れた。レイジンはシルバーレオを肩に担いで勝ち誇る。


「やっぱり俺の方が強かったな。それじゃ、トドメと行かせてもらうぜ!!」


シルバーレオに霊力を込めて斬り掛かるレイジン。



だが、



「甘いわ。」


倒れていたデュオールは突如としてカースで攻撃を防ぎ、イビルでレイジンの腹を突いた。


「がはっ!!て、てめぇ、やられたフリかよ!!」


「敵の油断を誘うのも技術の一つだ。」


デュオールは弱ったふりをしていた。よく見ると、レイジンインフィニティースラッシュのダメージは確かに受けているのだが、とても致命的と言えるレベルではない。殺徒から受けたバックアップは、決して中途半端なものではないのだ。


「はっ!!」


デュオールの反撃が始まった。カースで払い、イビルで突き、またカースで斬りつける。レイジンは防御の型を取り、それを防いでいく。隙を見て槍を片方弾き飛ばし、至近距離から霊力の刃を飛ばした。


「ぬっ!!」


槍を交差させて防ぐデュオール。その間に接近したレイジンが、左手に持ったシルバーレオで交差させた槍を押さえつけ、右手で三発デュオールの顔面を殴り、腹を蹴り飛ばした。


「……効かんなぁ~!!」


だがすぐに復帰し、二本の槍を右からぶつけて、レイジンを殴り飛ばした。


「ぐぅっ!!」


強い。やはりデュオールは、単純な戦闘力なら死怨衆最強だ。このままでは、デュオールに決定的な一撃を決められない。



その時、五枚の霊符が飛んできてデュオールの身体に貼り付き、爆発した。



「ぬああっ!!」


 ダメージは微々たるものだが、体勢が崩れる。


「廻藤さん!!」


 そこへ、明日奈が駆け付けてきた。


「明日奈!?」


「結構強力な霊力を感じたからね。もしかしてと思って、授業を抜けてきちゃった」


 今デュオールを攻撃したのは明日奈だ。結界の気配を感じ、解決するために瞬間移動で駆け付けてきたのである。


「あいつ、この前戦ったデュオールってやつだよね?前よりすごく強くなってる……」


「わけは後で話す。悪いが、ちょいと手を貸してもらうぜ」


「わかった!」


 このまま戦っても勝ち目はないと悟ったレイジンは、明日奈共闘することにする。


「二人がかりか……良かろう!!」


 だが、デュオールは全く引く気を見せない。それに警戒しながら、レイジンはシルバーレオを打ち込み、明日奈が霊力弾で援護する。

 とはいえ、さすがに状況が変わらないというわけではなく、明日奈の霊力弾は上手い具合にデュオールの気を引き、攻撃や防御を邪魔している。そこを狙ってレイジンが、分身状態よりも遥かに威力の高い攻撃を当てているため、さっきよりずっとダメージがあった。


「おのれ……!!」


 いくらなんでも油断しすぎたと反省するデュオール。だが、もう遅い。


「廻藤さん下がって!! あたいの新技、見せてあげる!!」


 明日奈は修行で会得した新技を、デュオールに向けて発動する。明日奈が大幣を右手に持って突き上げると、彼女の両脇に二つのエネルギー弾が出現した。片方は白く、もう片方は黒い。そこから大幣を前に向けると、エネルギー弾が正面に移動し、融合する。


「天照、太極烈波!!!」


 そしてそのエネルギー弾を、デュオールへと飛ばす。己の闇と光を受け入れ、二つの力を操れるようになった明日奈の新技、天照太極烈波だ。


「ぐおおっ!!」


 すかさず受け止めるデュオールだったが、防ぎ切れず槍を弾かれ、胸部にヒットさせる。


「今だ!!」


 これを勝機と悟ったレイジンは、シルバーレオにありったけの霊力を込めて、太極烈波を押し込むように斬りつけた。


「オールレイジンスラァァァァァァァァァァッシュ!!!!」


「ぐあああああああああああああ!!!!!」


 凄まじい霊力エネルギーの衝突により、デュオールが爆発する。


 だが、


「うぐ……貴様ら……!!」


 これほどの攻撃を命中させてなお、デュオールを倒すには至らなかった。ダメージはさっきよりも深い。深いが、戦闘続行不可能と言えるほどではない。


 しかし、


「そこまでだよ。デュオール」


「あ、殺徒様!?」


 そこに突然殺徒の声が聞こえてきた。捜してみれど姿は見えず、どうやら冥界から声だけ飛ばしてきたらしい。


「深追いは禁物だ。それに、実験ならもう十分だろう?」


 殺徒の言葉を聞いてデュオールは考える。確かに、今回の主目的は完全復活したオウザの実験だ。それについては、ここまで結果を出せれば十分だろう。


「……承知しました。命拾いしたな廻藤輪路」


 殺徒から帰還命令を受けて、デュオールは冥界に帰還していった。











 明日奈を学校に帰し、三郎も帰り、輪路もまたヒーリングタイムに帰った。輪路はソルフィに、今あった戦いについて話す。


「眷属強化……黒城一派が、それを使いこなせるようになっていたなんて……」


 これはソルフィもかなりショックだったらしい。眷属強化は、無限強化と並ぶオウザの最も危険な機能の一つだ。それ以外にも、広範囲にいる人々に呪いを掛けたり、オウザが有利となるフィールドを自在に作り出す機能もある。


「あれは本格的にヤバいって感じた。あんなのが大勢相手とか、冗談じゃねぇぞ……」


 冷静になって考えてみれば、今回戦った相手は二体だ。もしも百体とか千とか、でたらめな数に一斉に眷属強化を施した状態で攻められたりしたら、負けていたかもしれない。


「急いで究極聖神帝にならなきゃな……」


 あれに対抗できるとしたら、究極聖神帝しかない。輪路はさらなる成長を、一層強く心に誓った。

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