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邂逅の時!!白銀の獅子王の系譜 PART1

これがこの作品における最後の長編です。

アンチジャスティスの壊滅から、二週間が経った。協会の優秀な討魔術士達のおかげで、アンチジャスティスに捕らえられていた者達も全員救出され、あとは世界中で抵抗を続けている残党を殲滅するのみである。




二週間と言えば、輪路が謹慎を言い渡された期間の終了も意味している。だが、輪路は二週間経ってなお、本部に顔を出すこともなく、ヒーリングタイムにこもりっぱなしだ。謹慎終了から一週間後。


「……」


輪路はカウンターに置かれたアメリカンを、ぼんやりと見ている。その顔には生気がなく、まるで魂が抜け落ちてしまったかのようだった。


「「おはようございます!」」


そこへ、いつもの三人が来店する。今日は日曜日だからか、明日奈も一緒だ。彩華は輪路の顔を見た後、美由紀に言う。


「……まだ、立ち直っておられないみたいですね……」


「……うん。三週間以上前から、ずっとあんな調子で……」


アメリカンが出されてから、もう十分経っている。十分といえば、輪路がアメリカンを飲み干している時間だ。それなのに、全く手を付けていない。そんな精神状態が、もう三週間以上続いているのだ。


「廻藤さん、元気出して下さいよ。あんな連中が言ったこと、いつまでも気にしてちゃ駄目ですって。」


「師匠がそんなだと、美由紀さんも店長さんも、心配されますよ?」


「……ああ。」


茉莉と賢太郎が言っても、輪路は一向に態度を改める気配を見せない。


「重症だね。廻藤さんが大好きな美由紀さんを前にしてもこれとか」


明日奈は呟いた。まぁ、あれだけのことがあれば、いかに輪路とてこうなるだろう。


(今はそっとしておいた方が良さそうだね)


「って言っても、このまま帰るのも申し訳ないし、アイスコーヒー一杯くらいは頂いて帰りましょうか。」


茉莉の頭の上に止まっていた七瀬がテレパシーで言い、しかし何もせずに帰るわけにはいかないので、店の売り上げに貢献するため、全員でアイスコーヒーを一杯頼んでから帰ることにした。











学生組が帰ってから一時間後。


「廻藤。」


今度は翔が来た。


「何だ、お前か。」


「本部に行くぞ。」


「俺は今謹慎中なんだが?」


「お前の謹慎はとっくに終わっている。」


「そうだっけ?」


「いいから来い!!」


とぼけて店に留まろうとする輪路を、翔は無理矢理連れていく。輪路は佐久真にコーヒー代を投げ渡し、翔に引きずられていった。


「……連れていかれちゃいましたね。」


「翔くんも翔くんで、廻藤さんのことが心配なんですよ。」


「いずれにせよ、あの子には早いとこ元気を取り戻してもらわないとね。」


美由紀はぱちくりとまばたきし、ソルフィと佐久真は沈痛な面持ちをしていた。




輪路と翔が来たのは、協会本部の訓練場。討魔士や討魔術士が、修行を行う場所だ。


「何だよこんな所まで連れてきて?」


「お前があまりにも腑抜けているから、その性根を叩き直してやろうと思ったんだ。さぁ、剣を抜け。」


「……めんどくせぇ……」


輪路は全く乗り気ではなかったが、相手をしないと翔が納得しそうになかったので、仕方なく戦うことにする。


「……どういうつもりだ?俺を馬鹿にしているのか?」


しかし、輪路はシルバーレオを、日本刀モードにしていない。木刀モードのままだ。


「これで十分だからだよ。日本刀モードにしたら、怪我させちまう。そしたらソルフィに申し訳ねぇだろ?」


「……ふざけるな!!」


要するに手加減すると言っている。これに激怒した翔は、討魔剣二本で本気の連撃を繰り出した。


「ふざけてねぇよ。一応火時計の方も、七個まで解除してるんだぜ?」


が、当たらない。一撃一撃を、きちんと見て目で追いながら、全てかわしている。協会最速を誇る翔の攻撃が、かすりもしない。


「ほら。」


輪路は翔の攻撃を素早く弾いて翔のみぞおちに突きを入れる。


「ごほっ!?」


倒れる翔。そして輪路は、翔の喉元にシルバーレオを突き付けた。


「気は済んだか?これが今の俺とお前の実力の差だ。俺が日本刀モードにしてたら、お前死んでたぞ。短い間にずいぶん離れちまったもんだろ?まぁ、三郎のおかげなんだけどな。」


輪路はシルバーレオを納刀し、訓練場を去った。


「……くっ!」


翔は、輪路はもう既に自分の及びも付かない力を身に付けてしまったということを、痛感した。











ヒーリングタイムに戻ってきた輪路。


「輪路さんおかえりなさい。きゃっ!」


その時、美由紀が躓いた。しかし、転ぶ前に輪路が素早く駆け出し、抱き締めて助けた。


「大丈夫か?もうちょっと気を付けろ。」


「す、すいません……」


輪路は美由紀を立たせると、カウンター席に座った。


「……早いですね。私じゃあんな動きできませんよ」


美由紀は輪路のそばに行く。


「いつの間にかできるようになってた。」


「本当に、輪路さんはいつの間にか、ものすごく強くなってましたよね。」


最初はここまででたらめな力を身に付けてはいなかった。それが、こんな風にいつでも美由紀を守れるくらい、強くなったのだ。


「私はいつも輪路さんに感謝してます。少なくとも、私はずっと輪路さんを必要としているんです。だから早く元気を出して、これからも私を助けて下さい。」


「……おう。」


輪路が好きだから、とは言わなかった。この場で言うのはあまりにも恥ずかしいし、こう言った方が輪路は元気を出すと思ったからだ。


「……あの子がいる限り、輪路ちゃんは大丈夫ね。」


「はい。」


佐久真とソルフィは、気付かれないように笑い合った。




夜。


(……これからも、か……)


輪路はベッドの中で、美由紀が言っていたことを思い出していた。


『美由紀。輪路と幸せになれ』


それから次に、正影が最期に美由紀に言ったことを思い出す。あれは美由紀に幸せになれと言っただけでなく、輪路に美由紀を幸せにしろとも言っていたのだ。


(ああ。俺が必ず、美由紀を幸せにするよ……)


輪路はそう誓いながら、眠りについた。











翌日。輪路はまたアメリカンを注文し、飲んでいた。まだ少し進まなかったが、二口ほど、コーヒーを飲んだ。


『やったぞ……やはり悪こそが、人間の本質……!!』


『憎悪のままに敵を倒した気分はどうだった?スカッとしただろ?』


ブランドンと殺徒の言葉が、脳裏に蘇る。この三週間、あの二人の言葉が、頭の中に残って離れなかった。このせいで、輪路は今まで落ち込んでいたのである。だが美由紀から言葉を掛けられたことで、声が少し小さくなった気がする。輪路がそう思っていた時、


「「おはようございます!」」


また、あの四人が入ってきた。と、輪路は奇妙なことに気付いて、四人に言う。


「お前ら今日学校じゃなかったっけ?休校になったのか?」


昨日は月曜日だ。そして今の時間は、朝十時である。完全に遅刻のはずなのに、四人はずいぶんと落ち着いているのだ。すると、


「何言ってるんですか?今日まだ日曜ですよ?」


茉莉がそう返した。


「は!?お前らこそ何言ってんだ!?」


輪路は驚く。日曜日は昨日だ。今日は確かに月曜日のはず。と、


「今日は日曜ですよ。ね、ソルフィさん?」


「はい。日曜日です」


「輪路ちゃんたら、日付の感覚わかんなくなっちゃった?」


美由紀達三人も、今日は日曜日だと言う。


「……そうか?」


ここまで言われると、自分の方がおかしいと思い、輪路は記憶違いだと流すことにした。




四人がアイスコーヒーを飲んで帰ってから一時間後。


「廻藤。本部に行くぞ」


翔が入店してきた。


「お前もしつこいねぇ。昨日あんだけどっちが強いか、教えてやっただろが。」


「……何の話だ?」


「昨日も今みたいにお前が来て、強引に訓練場に連れていっただろ。仕方ねぇから付き合ってやったんだよ。まさかたった一日訓練しただけで俺に勝てるとか?そんな俺じゃあるまいし。」


「……いや、謹慎期間が終了してから来たのは、今日が初めてだが……」


「えっ?」


何と、翔は昨日来ていないと言ったのだ。


「そんな馬鹿な。お前確かに昨日……」


「わけのわからないことを言うな。とにかく来い!」


輪路は翔に引きずられて、訓練場に行った。




それから昨日と全く同じ戦法で挑んできた翔を軽く叩き伏せ、輪路は帰路についた。そしてヒーリングタイムに戻ってきた時、


「輪路さんおかえりなさい。きゃっ!」


美由紀が躓いた。輪路は美由紀を助ける。


「す、すいません……」


美由紀は謝るが、輪路の面持ちは険しいままだ。この状況、昨日もあった。一体どういうことなのだろうか。











翌日。


「マスター。今日何曜日だ?」


店に出てきた輪路は、佐久真に尋ねた。


「何曜日って……日曜日だけど?」


何をおかしなことを訊いているのか、といった感じで佐久真が答える。輪路は愕然とした。昨日は日曜日だと確かに聞かされ、明日は月曜日だろうと思い眠った。そして明日になってみれば、また日曜日。


「どうしたの?輪路ちゃんすごく怖い顔してるけど。」


「……何でもない。アメリカン頼む」


「……変な輪路ちゃん。」


とりあえず気持ちを落ち着かせるため、アメリカンを注文した。


(落ち着け。落ち着いてよーく考えろ)


アメリカンを一口飲み、少し落ち着いてから、今起きていることについて考える。


(どういうわけか、日曜日が繰り返されている。何でだ?)


見たところ、佐久真やソルフィがこのことに気付いている様子はない。何も連絡がないところを見ると、翔やシエル辺りも気付いていないようだ。


(俺だけが気付いている?つまり全くのノーヒントから、時間を巻き戻してるやつを見つけ出して叩かなきゃならねぇってことか……)


そう考えると気が重くなった。と、そこで気付く。本当に自分だけが気付いているのだろうか?と。明らかに気付いているはずの存在を、輪路は知っている。昨日と同じことが繰り返されているのなら、もうすぐその人物がここを訪れるはずだ。そう思っていると、


「「おはようございます!」」


来た。あの四人だ。その内の一人に、輪路は声を掛ける。


「いいところに来たな。賢太郎、悪いがちょっとナイアを呼んでくんねぇか?」


「えっ?いいですけど……」


輪路に頼まれた賢太郎は心の中でナイアに呼び掛け、彼女と意識を交代する。


「おはよう廻藤輪路。呼ぶだろうと思っていたよ」


「その様子だと、お前も気付いてるみたいだな。時間が巻き戻されてることに」


「ああ。言っておくけど錯覚じゃないよ」


やはりナイアは気付いていた。二人の会話を聞いて、彩華と明日奈は困惑している。


「ちょ、ちょっと待って下さい!何ですか?時間が巻き戻されてる!?」


「何か起きてるみたいだね。詳しく話して下さい」


説明を求められた輪路は、自分が今まで体験したことを、包み隠さず話した。


「そんなことが起きてるなんて……」


「でも、そんなすごいことが起きてるなら、みんな気付くはずですよ。ソルフィさんと七瀬ちゃんは?」


「私も知りませんでした。」


(私も)


茉莉は困惑し、美由紀はソルフィ達霊力持ちに尋ねたが、やはり彼女達は気付いていなかった。


「どうやらよほど高度な時間回帰が起きてるみたいだね。ボクや廻藤輪路クラスの霊力がなければ気付けないようだ」


ナイア曰く、今起きている時間回帰はとても高等な術式を使って行われているようで、彼女のようなとてつもない霊力の持ち主にしか気付けないらしい。現在は輪路しかその領域に到達できていないため、輪路だけが気付けたのだ。


「それで、今時間を巻き戻してるやつがどこにいるか、わかるか?」


「おおよその見当は付いてる。この街の西にある丘だ」


ナイアは時間回帰を行っている相手の居場所も調べていたらしい。ただし、相手は夜中の零時ちょうどに回帰を行っており、それ以外の時間帯ではどこにいるかわからないそうだ。


「それだけわかりゃ十分だ。今夜零時に丘に行って、このくだらねぇ真似してるやつを叩きのめしてくるぜ!」


現れる場所がわかっているのだから、あとはそこで待ち伏せすればいい。輪路は今夜、回帰を終わらせることを決めた。


「それなら、私も行きます!」


と、美由紀が同行を申し出た。


「何言ってんだ。俺一人で十分だぜ」


「心配だからです。」


「私も行きます。それなら安心でしょ?」


「お前まで……」


ソルフィも同行すると言ってきた。この後翔が来るはずなので、彼にも言って一緒に来てもらうようソルフィが言う。


「……ったくお前らは……」


「それじゃあ私達も!」


「君達はやめておいた方がいい。」


彩華達も行こうとしたが、ナイアが止めた。零時に彼女が感じた力は凄まじく強大なもので、力の弱い者が下手に付き合えば、命を落とす可能性があるらしい。


「気持ちだけもらっとくよ。まぁ、お前らが必要になるような相手じゃねぇと思うから、安心してくれ。」


「美由紀ちゃんを頼んだわよ。」


「おう。」


佐久真が美由紀を守ってくれるよう頼み、話は終わった。











深夜。


「ここが、例の時間回帰を行っている者が現れる場所か。」


翔は呟いた。輪路とナイアの予想通り、翔を含めた三大士族や、シエルさえも回帰に気付いていなかった。彼らの霊力も恐ろしく高いはずだが、輪路には及ばない。ちなみに、三郎には話していない。連絡がないので気付いていないだろうし、真夜中だから起こしたくないのだ。


「零時になります!」


美由紀が時計を見て、現在の時刻を教えた。ソルフィが探知の法術を使って、周囲のどんな些細な変化も見逃さないように警戒する。輪路と翔も互いに剣を抜き、いつ敵が現れても対応できるように構える。



そして、それは現れた。突然空が眩く光ったかと思うと、その光の中から巨大な黒い球体が出てきたのだ。



「な、何だありゃあ!?」


驚く輪路。ソルフィは法術を使い、球体が何かを調べる。


「これは……あの球体は生物!?」


「何!?回帰を起こしていたのは、人間ではなかったのか!?」


ソルフィの術が導き出した答え。それは、あの球体が特殊な装置や乗り物などではなく、生物だということだった。あんな生物など、存在するはずがない。となれば、あれは間違いなく魔物の類いである。


「何だって構わねぇ!!」


「あっ、輪路さん!!」


輪路は美由紀が止めるのも聞かず、球体に斬り掛かる。その時、球体が強く発光し、輪路を、美由紀を、翔を、ソルフィを飲み込んだ。



後には何も残らず、ただ暗闇と静寂だけが残った。











「……っ!」


気が付くと、輪路は道の真ん中に倒れていた。


「……おい!美由紀!」


「う……ん……」


輪路はそばで一緒に倒れている美由紀を起こす。美由紀が起きると、翔とソルフィも起きた。


「……ここは?」


美由紀は周囲を見回す。辺りは真っ暗なのだが、丘にいたはずなのに、どういうわけか町の中にいる。しかも、町並みがおかしかった。どの建物も古い木造建築であり、コンクリートの建物が一件もない。そう、これはまるで、江戸時代のようである。


「どうなってんだ?秦野山市にこんな所なかったよな?」


「これって確か、日本の江戸時代と同じ町並みなんですよね?本で読みました。」


「それで、丘にいたはずの俺達が、なぜそんな場所にいる?」


秦野山市に長く生きてきた輪路だが、こんな場所が存在するなどということは知らない。ソルフィは一応江戸時代についての知識は得ていたが、翔の言うようになぜここにいるかはわからない。


「……もしかして……」


三人が困惑する中、美由紀だけが何が起きたのか気付き始めていた。と、


「火の用~心!!火の用~心!!」


拍子木を打ち鳴らしながら見回りをしている、着物を着た男がやってきた。着物である。服装までが江戸時代。美由紀は確信を得るために、見回りに話し掛けた。


「すいません!今、何年ですか!?」


「は?何年って、1830年だけど?」


「!!」


衝撃を受け、美由紀は愕然とした。予想が当たっていたからだ。


「……もういいかい?」


「えっ、あっ、はい。お引き留めしてすいませんでした」


用が済んだので礼を言うと、見回りはまた拍子木を打ち鳴らしながら声を張り上げ、見回りを再開する。美由紀は言った。


「1830年。やっぱり私達、過去にタイムスリップしたんですよ!!」


「「「タイムスリップ!?」」」


三人は驚く。美由紀の見解では、さっきの魔物は時間を操る能力を持ち、それに接触したのが原因で過去に飛ばされたのではないかとのことだ。


「過去の世界って、そんなもんどうやって元の時代に帰りゃいいんだ!?」


「誰かが助けに来るのを待つとか……」


「不可能だ。会長ですら気付けないものを、どうすれば気付ける?」


きっと元の時代では、今も日曜日が繰り返されているのだろう。シエルでさえ気付けない時間回帰だというのに、誰も助けに来れるはずがない。唯一の頼みの綱のナイアも、輪路が絡んでいるため助けに来る可能性が薄いのだ。ああだこうだと未来に帰る方法を出し合う輪路達。



その時、



「うわああああああああ!!!」



さっきの見回りの悲鳴が聞こえてきた。


「……今は、まずやらなきゃいけないことがあるな……!!」


輪路達は何が起きたのかを確かめるため、悲鳴が聞こえた方向に急いだ。




「~♪」


その頃、一人の男が、酒瓶を担いで夜道を歩いていた。今夜は久々にいい酒が手に入ったので、早く帰って飲もうと上機嫌だ。


「うわああああああああ!!!」


「!」


そんな時、男性の悲鳴が聞こえた。男は悲鳴の方へと駆け出す。











「ひっ、ひぃぃぃ!!」


輪路達が駆け付けた時、男は五体の骸骨の姿をしたリビドンに襲われていた。


「憎い……憎イ……生きてる者ガ憎い……」


「殺しタイ……殺シたい……!!」


リビドン達は口々に憎しみを呟き、今にも見回りを殺そうとしている。


「させるか!!」


素早く飛び込み、リビドン達を見回りから遠ざける輪路と翔。美由紀とソルフィが、見回りを逃がす。


「一気に片付けるぜ!!」


「「神帝、聖装!!」」


輪路と翔は聖神帝に変身する。リビドンとはいえ、相手は雑魚でしかなく、二人は瞬く間にリビドン達を殲滅した。


「楽勝楽勝。」


そう言って変身を解こうとするレイジン。



その時、



「神帝、聖装!!」


突然一人の聖神帝が、レイジンに斬り掛かってきた。レイジンはそれをシルバーレオで防ぐが、あまりにも重い一撃に吹き飛ばされそうになる。美由紀は斬り掛かってきた相手を見て驚いた。



「レイジンが、もう一人!?」



そう。レイジンに襲い掛かってきた聖神帝もまた、レイジンだったのだ。


「答えろ。なぜお前がその聖神帝を、白銀の獅子王型を使える?」


レイジンの姿をした聖神帝は、レイジンに問いかける。レイジンは必死に受け止めながらも、質問に質問で返した。


「はぁ!?どういう意味だそりゃ!?」


「この世界でその色と型の聖神帝を使えるのは俺一人しかいない。誰かにくれてやった覚えもない。お前、一体何者だ?」


「ぐっ……とにかくこの剣どけろよ!!俺を殺す気か!!」


「……」


じわじわと力を強めていた聖神帝だったが、レイジンから指摘されてスピリソードを離し、鞘に納めて変身を解いた。


「廻藤が二人!?」


ヒエンもまた、変身を解く。変身後の姿も同じなら、変身前の姿も同じだったのだ。レイジンももシルバーレオを納刀し、変身を解く。


「俺が二人!?どうなってんだこりゃ!?」


驚く輪路。対する輪路の姿をした何者かも、かなり驚いているようだ。ソルフィが尋ねる。


「あなたは一体?」


輪路に似た男は名乗った。



「俺は光弘。廻藤光弘だ」



その名を聞いた瞬間、美由紀は思い出した。見回りから聞いた今の西暦は、1830年。彼女達がいた時代から、約二百年前の過去の時代。そう、二百年前だ。つまり、輪路の先祖である廻藤光弘が、現役で活躍していた時代なのである。


「あなたが……廻藤光弘……」


呆然と呟く美由紀。どうしてこんな大事なことを忘れていたのだろうかと、内心自分を恥じている。


「俺は名乗ったぞ。お前らも名乗ったらどうだ?」


光弘は言う。あまりにも衝撃的すぎて、一同は棒立ちとなっていた。何せ、目の前に伝説の討魔士がいるのだから。しかし、慌てて名乗る。




「廻藤?青羽?俺の息子は一人しかいないはずだし、あいつのせがれに翔なんて名前の奴は……」


名前を聞いた光弘はぶつぶつと言いながら何事か考えていたが、すぐに考えるのをやめる。


「まぁ、ここで話すようなことじゃないな。お前ら、俺の家に来い。ちっとばかし山奥だが、ここよりはゆっくりできる。」


どうやら、輪路達を自宅に招き入れて、そこで詳しく話を聞くつもりらしい。


「こいつもじっくり飲みたいしな。」


そう言って光弘は、戦う前に近くに置いていた酒瓶を手に取った。

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