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第十七話 その名は邪神帝

前回までのあらすじ


突然大量のリビドンを連れて現れたデュオールとカルロス。迎撃に出る輪路と翔、そして明日奈。戦いは輪路達の勝利で終わるかと思われた時、今度は殺徒と黄泉子が現れた。リビドンの長、黒城夫妻の真意はいかに!?

殺気。殺気と霊力。あまりに巨大な存在感を感じ、走っていた明日奈は思わず足を止めてしまった。


「何だこの霊力は!?」


姿が見えなくてもわかる。でかい、あまりにも馬鹿でかい霊力。その大きさは、以前あれだけ苦戦した伊邪那美がアリのように思えるほどだ。そんな霊力を、二つ感じる。そしてそのそばには、輪路と翔の霊力も感じるのだ。


「駄目だ廻藤さん!!」


止めていた足を再び動かし、明日奈は走る。


「そいつらと戦っちゃ駄目だ!!」


輪路と翔を逃がすために。特に輪路は、霊力が極端に減っている。この二人と戦ったら、間違いなく一瞬で殺されてしまう。











「篠原さん!!」


ヒーリングタイムの店内に、賢太郎達が飛び込んできた。


「どうしたのみんなそんなに慌てて?」


佐久真や美由紀、客が驚いているが、構っている暇はない。


「ちょっとわけがありまして…」


「篠原さん!神田先輩がこれを!」


佐久真に対しては彩華が言葉を濁し、賢太郎が明日奈から託された物を美由紀に渡す。美由紀はそれを受け取ってよく見る。


「これは…」


結界符。結界を張り、また結界に穴を空ける霊符。それが二枚ある。


「どういうことかわかりますね?」


茉莉が美由紀に訊いた。明日奈からは、美由紀に渡せばわかると聞いている。


「…うん。」


美由紀はわかっていた。街には今結界が張られているから、これを使って中に入って欲しい。そういう意味だ。以前伊邪那美との対決の時、美由紀は明日奈から聞いた。美由紀と輪路の間には強い魂の繋がりがあり、その繋がりは時として思わぬ奇跡を引き起こす。もしもの時輪路を助けられるのは、美由紀だけかもしれない。事実美由紀が結界に入ったおかげで輪路は霊石を手に入れ、伊邪那美に勝利した。今回は美由紀の存在が必要になるほど、状況が切迫しているということだ。


「店長すいません。私、ちょっと出てきます。」


「何か事情があるのね?わかったわ。気を付けていってらっしゃい」


「ありがとうございます!」


美由紀が佐久真に断りを入れると、佐久真は快く了承し、美由紀を送り出した。


「…じゃあ、僕達はマスターのお手伝いをしますね。」


「そうしてもらえると助かるわ。」


賢太郎達は自分達が行っても何もできないとわかっているので、佐久真の手伝いをして輪路達の帰還を待つことにした。




結界に入った美由紀。もらった霊符は二枚だ。結界に入るだけなら一枚でいいはずだが、とりあえず残った一枚をなくさないように、しっかりしまっておく。


「リビドンでいっぱい…」


だがそれにしても、すごい数のリビドンだ。今は見つからないよう、物陰に隠れて様子を伺っている。まず、輪路の居場所を知ることが先決だ。ペンダントに話し掛け、三郎から情報を得ようとする。


「三郎ちゃん、私です。聞こえますか?今、結界の中にいます。」


「美由紀!?何でお前結界の中にいるんだ!?」


「事情は後で話します。それより、輪路さんがどこにいるかわかりますか?」


「そりゃわかるが、お前まさか来るつもりか?」


「はい。もしかしたら、私じゃなきゃ輪路さんを助けられないかもしれませんから。」


「こっちはかなりヤバいことになってんだがな…まぁお前の言うことも一理ある。中央広場だ」


「ありがとうございます。」


驚かれたが、輪路の居場所を知ることには成功した。後は中央広場を目指すだけ、なのだが、リビドンの数が多すぎて進めない。


「…よし…」


美由紀はスカートのポケットから、香水のビンを取り出した。このビンの中には三郎から新たにもらった隠身薬おんみやくという粉薬を、水で溶かしたものが入っている。隠身薬は水に溶かして使う薬で、全身に塗ることで姿を隠し、気配さえも遮断してしまえる秘薬だ。材料が非常に高価で調合も手順が複雑なため、メイズリビドンに襲われた時には間に合わなかったが、ついこの間調合ができたとのこと。美由紀は隠身薬を全身に吹き掛ける。


(今初めて使ったから、本当に効果があるかわからないんですけど…)


これだけでそんな高い効果が期待できるのか、美由紀は疑問に思っている。その時、リビドンが一体近付いてきた。考えていて気付くのが遅れたのだ。


(しまった!)


驚いてリビドン撃退グッズを取り出そうとする美由紀。と、美由紀は気付いた。リビドンは、美由紀を見ていない。ただ、どこかを目指して歩いているだけだ。美由紀のすぐ真横を素通りしてしまった。


(…効果は抜群ですね)


薬の効果を確認した美由紀は、それでもできるだけ大きな音を立てたりしないよう、気を付けて中央広場へ向かった。











「はじめまして。僕がデュオールとカルロスの上司で、全てのリビドンを束ねるリビドンの長、黒城殺徒だ。」


「そして私が、そんな殺徒さんの妻、黒城黄泉子よ。」


輪路達の前に姿を現した殺徒と黄泉子は、余裕たっぷりといった感じに自己紹介した。


「てめぇらが…」


輪路は呟いた。デュオールやカルロスとは比較にならないほど大きな霊力を、輪路も感じている。これなら、翔やシエルが警戒するというのも十分納得できる話だ。


(まずい…これは非常にまずいぞ!!)


ヒエンは殺徒と黄泉子を見て、危機感を覚えていた。まさかあの二人が、しかもこんなタイミングで現れるとは思っていなかった。実は、殺徒と黄泉子を直に見るのはヒエンも初めてのことである。彼らに遭遇したのは副会長ダニエル・レッドファングで、彼に同行していた討魔士が偶然撮影に成功した。その時ダニエルは語っている。あんな高い霊力の持ち主達には会ったことがない。もし戦力も作戦もない状態で遭遇したら、決して戦わずに逃げることだけに専念しろ。


(奴らを倒すには戦力が全く足りない!!しかも廻藤は霊力が尽きかけている!!作戦もない!!)


ヒエンは完全に予想外な事態に遭遇したため、打開策を考えている。まず戦力。この場に彼らと戦えるだけの力を持つ者は、ヒエンと輪路しかいない。だが、それだけでは戦力が足りなすぎる。加えて、輪路はデュオールとの戦闘で、霊力が尽きかけているのだ。最悪のタイミングでの襲来と言える。次に作戦だが、殺徒と黄泉子が来ることなど全く予想できていなかったため、これもない。そもそも、殺徒と黄泉子は冥界から来れるはずがないのだ。それは、自分達が手に入れた邪神帝が、まだ現世では使えないから。来れることは来れるが、彼らは自分達が邪神帝を使えないので、それを警戒して冥界から出てこない。だから仲間を集めているのだ。集めた仲間を使って、邪神帝復活のための魂を集めているのだ。


「あ、殺徒様!!」


「黄泉子様ぁっ!!」


突然デュオールとカルロスが叫び、殺徒と黄泉子の前に膝をついた。まだ敵が残っているにも関わらず、戦いを放棄してこんなことをするということは、それだけ殺徒と黄泉子を恐れているということだ。


「な、なぜこちらに!?」


「もしかしてあいつらを殺せない俺達を見限って消しに来たとかですかぁぁ!?」


「やだなぁ違うよ。」


焦って自分達の主に、なぜ来たのか理由を訊くデュオールとカルロス。そんな二人に、殺徒はにこやかに答えた。


「邪神帝を復活させるためには、強い霊力を持った魂が必要だってことは知ってるだろう?それを集めに来たんだよ。」


「そ、それでしたら、我々にお任せ下されば…!!」


「最初は僕もそう思ったんだけど、こういうのは様式美だからさ。君達もかなり苦戦してたみたいだし」


殺徒と黄泉子が現れた理由は強い霊力を持った魂を、つまり、輪路とヒエンの魂を手に入れるためだ。ヒエンは言わずもがな、輪路の霊力は協会と接触して錬磨したことにより、加速度的に増大していっている。どちらも並みの霊能者やら巫女やらを、遥かに凌駕する霊力の持ち主だ。この二人の魂を手に入れることができれば、邪神帝の復活にかなり近付く。いや、それで完全復活が成るかもしれない。デュオール達を先に行かせたのは、輪路達を弱らせるためだ。うまくいけばデュオール達で目的を達成できるかとも思ったが、そうはいかなかった。しかし輪路達を弱らせるという役目は果たされ、輪路はもう霊力が尽きかけだ。ヒエンはそれほど弱っているわけでもないが、十分に対処可能なレベルである。


「というわけだ。君達は下がって休むといい」


「後は私達が引き受けるから。」


「しっ、しかし!!我らの主にそのような…!!」


「そうですよ!!こんなことは俺達にやらせて下さい!!」


主の出撃を許してしまったという大失態を返上しようと、必死に食い下がるデュオールとカルロス。



「うるさいんだよ役立たずどもが。」



それを殺徒は、殺気を飛ばして黙らせた。リビドンすら怯む、圧倒的殺意。デュオールもカルロスも、その口を止めてしまう。


「高々討魔士二匹にも苦戦するようなお前らに、これ以上何ができるっていうんだ?そいつらに浄化されて、まだ無様な姿をさらすつもりか!?どこまで僕を失望させれば気が済むんだ!!この無能どもが!!!」


怒っている。明らかに怒っている。上級とはいえ、リビドンの根底にあるものは憎悪。殺徒のそれは、生ある者全てを憎んでいるかのように大きく、深い。この桁外れの憎悪を持つ殺徒が、生ある者をいつまで経っても殺せないでいる出来の悪い部下に、怒りを感じないわけがない。デュオールもカルロスも理由がわかっているために、一切の反論ができない。


「…申し訳、ございません。」


「す、すいませんでした…!!」


素直に謝って下がることしかできなかった。黄泉子は一度殺徒の腕から離れて、下がった二人に優しく語りかける。


「許してあげてね?殺徒さん、結構怒りっぽい人だから。」


「…いえ、これは我らの失態です。」


デュオールは頭を下げる。カルロスは、何も言わなかった。黄泉子は再び殺徒の腕に抱きつき、


「だから、怒っちゃだめって言ったでしょ?」


キスした。殺徒は一瞬驚いたが、すぐ濃厚なキスへと応じる。一方輪路は、


「何なんだこいつら…」


ドン引きだった。突然現れて殺気を飛ばしたり部下を叱ったり、かと思ったら目の前で濃厚なキスをしたり、もうわけがわからない。と、


「廻藤、逃げるぞ。」


ヒエンが輪路に言った。


「逃げる…?」


「そうだ。俺達だけでは、あの二人に勝てない。戦っても一方的に殺されるだけだ」


だから、二人が自分達だけの世界に入っている今、逃げる。それしか道はない。だが、


「…逃げたいなら、お前一人で行け。」


輪路は自分が助かるたった一つの道を、自ら閉ざした。


「なぜだ!」


「ここで逃げたらこの街はどうなる?あいつら、絶対調子に乗って暴れるぜ。」


「う…」


確かにそうだ。殺徒達はこの世界全ての人間を殺そうとしているのだから、邪魔者である輪路達がいなくなったら、間違いなくこの街を破壊し尽くす。


「それにな、あいつらを見てると、どうしても今ここで倒したいって気持ちが、心の底から沸き上がってくるんだ。」


「お前、霊力もないのに何を言って…」


レイジンに変身できるだけの霊力もない輪路では、一瞬で殺される。ヒエンはそう思っていた。いたのだが、


(何!?廻藤の霊力が回復してきているだと!?)


輪路の霊力が回復してきているのだ。輪路は何もしていない。ただ、殺徒達を睨み付けているだけだ。恐らくそれは、輪路が持つ悪を許さぬ心。それが霊力を回復させているのだ。もう限界のはずなのに、気合いだけで霊力を無理矢理回復させている。


(…やはりこの男も、廻藤の末裔ということか…)


光弘以降、廻藤家に討魔士が誕生したという記録はない。だが、それでも輪路は光弘の子孫であると、ヒエンは感じた。


「…そうだな。どうかしていた」


少しだけ希望が出てきてヒエンは考えを改めた。そもそも、あれはダニエル副会長の判断だ。自分が戦えば、相性などで勝てるかもしれない。というか、殺徒達は現世では邪神帝を使えないのだ。勝てる。邪神帝さえ使わせなければ。


(翔がこんなこと言うなんてな…)


自分より強いはずのヒエンが逃走を選択したのには、かなり驚いた。そうさせるだけの強さが、殺徒達にはあるのだろう。結局戦ってくれることになったが。


(だが、負けるわけにはいかねぇ。ここで負けたら美由紀が…)


間違いなく殺される。それだけは絶対に避けなければならない。


「っぷは。おっと、見せつけちゃったかな?」


輪路達が作戦会議をしている間もずっとディープキスをしていた殺徒と黄泉子。二人は長く深いキスを終えて、ようやく輪路達を見直す。これで、逃げるタイミングは失われた。


「おや?さっきよりも霊力が回復しているようだが…」


「お前らを見てたら、絶対に勝たなきゃって思ってよ。気付いたら霊力が戻ってた」


「ふむ、気合いで持ち直したというわけか。凄まじい精神力だな、ますます君の魂が欲しくなった。」


霊力ほぼゼロの状態から気合いで戦闘可能までに霊力を回復させるなど、常軌を逸しているとしか思えない精神力だ。精神力の高さは、高純度な霊力に直結する。これほどの精神力を持つ者の魂なら、本当に今日邪神帝を復活させられるかもしれない。そう思った殺徒は、モチベーションを高めた。


「俺を簡単に倒せると思ったら大間違いだぜ!それにお前、冥界でしか邪神帝とかいうのを使えねぇんだろ!?」


邪神帝による戦闘力の向上は輪路も計算に入れていた。現世では使えないということも覚えている。


「知っていたのか。こっちとしても、邪神帝の復活には手間取っていてね。」


次の瞬間、殺徒の腰に鞘に収まった西洋の剣が現れ、殺徒はそれを引き抜いた。引き抜いた刹那、刀身が一瞬発光し、スピリソードに匹敵するほどに巨大化する。


「ようやくこの剣を復活させられたレベルだ。」


血のように赤く、禍々しいその剣を、見せつけるようにして掲げる。ヒエンは戦慄した。


「魔剣ブラッディースパーダ!!一振りであらゆる存在に死をもたらし、星すらも破壊するという邪神帝の専用装備!!」


「まだ本来の威力で使えるわけじゃないんだけどね。四分の一よりちょっと下ってとこかな?」


それでも十分な脅威だ。一振りで星を破壊する威力の四分の一以下、ということなのだから。邪神帝の武器は頭がおかしいとしか思えない。そして殺徒は、その邪神帝の武器を現世でも使えるようにしたというのだから、一体何人の魂を吸わせたのだろうか。


「あと、君達の認識には誤りがある。邪神帝は冥界でしか使えないわけじゃない」


と、殺徒が突然そんなことを言った。ヒエンは驚く。


「何!?邪神帝は、冥界でしか使えないはずだ!!」


「違う。邪神帝の力が使える場所は、『死が溢れる場所』だ。君達はこれを冥界だと勝手に解釈しているだけで、条件さえ揃えば現世でも邪神帝は使える。そして、今この場所はその条件を満たしている。どういうことかわかるよね?」


殺徒がニヤリと笑い、黄泉子が殺徒から離れる。


「まさか…!!」


殺徒を注視するヒエン。



「神帝、邪怨装!!」



殺徒は掛け声とともに変身した。聖神帝によく似た、鬼を模した姿の黒い戦士へと。



「これがかつて、聖神帝に憎悪を抱きし者が、多くの魂を糧に造り出した究極の霊子兵器、邪神帝オウザだ!!」


最強最悪の存在、邪神帝オウザへと変身した殺徒は、高らかに言う。輪路は焦ってヒエンに尋ねた。


「おいどういうことだ翔!!邪神帝は冥界でしか使えないんじゃなかったのか!?死が溢れる場所なんて初耳だぞ!!」


「討魔士の間では、死が溢れる場所というのは冥界を示す言葉なんだ。それが誤りだったとは…!!」


死が溢れる場所。それは古来より討魔士の間で、冥界を示す隠語として使われてきた。ヒエンも完全に冥界だと思っていたため、詳細な情報を輪路に伝えなかったのだ。まさか違っていたとは思わなかった。


「さらに絶望的な事実を教えてあげよう。黄泉子!」


「はい、殺徒さん。神帝、邪怨装!!」


オウザが促すと、黄泉子も同じ掛け声をかけ、蛇を模した、体型が女性のものになっている邪神帝へと変身した。


「あいつも変身した!?」


「馬鹿な!!邪神帝は一体しかいないはずだ!!」


さらなる衝撃に輪路もヒエンも驚く。一番驚いたのはヒエンだ。邪神帝は一体しかいないと、伝承で伝えられている。オウザは説明した。


「僕が作った邪神帝の二号機さ。その名も、邪神帝リョウキ!僕は術士じゃないからオウザほど力のあるものは造れなかったけど、聖神帝の力は十分に超えているよ。」


何と、この二体目の邪神帝はオウザが造ったものだというのだ。


「二体目を造るより、そっちを復活させた方がよかったんじゃねぇか?二体目を造るならその後でも…」


当然の疑問をぶつける輪路。オウザの完全復活に手間取っているのは、絶対にそれが原因だ。


「僕も最初はそう思ってたんだけど、黄泉子のことを考えるとついつい気持ちが先走っちゃってね。ま、愛ゆえにってことさ。」


「もう殺徒さんったら恥ずかしいわ♪」


恥ずかしいと言いつつとても嬉しそうな邪神帝、リョウキ。だが、状況としては全く笑えない。邪神帝が二体、何の悪夢だろうか。


「デュオール、カルロス。わかってるとは思うけど、手出しは無用だよ。僕と黄泉子だけで殺る」


「「は。」」


膝をついてオウザに頭を下げるデュオールとカルロス。


「他の者も、私達の戦いに割り込まないこと。絶対ついてこれないから」


リョウキもまた、周辺のリビドン達に呼び掛ける。もっとも彼らは既にデュオールとカルロスの支配下にあり、自我を奪われて操られているため、一体も反応しなかった。


「来るぜ翔。殺徒は俺がやるから、黄泉子はお前に任せる。」


「わかった。気を付けろ」


「神帝、聖装!!」


輪路はレイジンに変身してオウザを、ヒエンはリョウキを相手取る形となる。


「オウザ、介錯つかまつる!!」


魔剣ブラッディースパーダをレイジンに向けるオウザ。


「リョウキ、鏖殺する!!」


リョウキもまたヒエンの前に立ち、腰から蛇の牙のような双剣を抜いた。


「レイジン、ぶった斬る!!」


「ヒエン、参る!!」











「!!」


巨大な二つの殺気を追っていた明日奈は、現場に到着して慌てて立ち止まり、物陰に隠れる。


「あれはまさか…邪神帝!?」


明日奈はリョウキを知らないが、オウザは知っている。悪霊退治の巫女ならば、邪神帝についての情報は必ず知ることだ。


「廻藤さん達は…あいつらと戦うつもりなのか!?こんなに力の差があるのに!?無茶だ!!」


明日奈から見て、レイジンとオウザの霊力の差は千倍以上あった。リョウキはオウザほど霊力はないが、それでもでたらめな力だ。邪神帝に変身していることを抜きにしても、あの霊力は異常すぎる。


(今まで邪神帝を使ったリビドンは、その強大すぎる力に耐えられなかったらしいけど、あいつらのあの霊力なら、邪神帝の力にも耐えられる!!)


最も危険な存在が、最も手にしてはいけない力を手に入れてしまった。最悪の状況だ。その時、


「あっ!明日奈ちゃん!」


声が聞こえた。明日奈は振り返るが、誰もいない。


「…?」


「あっ、そうだった。えーっと…」


何やら困惑している声が聞こえる。少しすると、空中に香水瓶が出現し、勝手に吹き掛け始めた。


「隠身薬の中和剤、ちゃんと効いてるかな?」


「篠原さん!!」


吹き掛け終わると、美由紀が現れた。今吹き掛けたのは、隠身薬の中和剤である。三郎からもらっていたものだ。


「びっくりさせちゃったね。」


「い、いや…それより、来てくれて助かったよ。」


「…この状況、私が何とかできるとは思えないんだけど…」


美由紀は状況を見た。明日奈は、自分が予想している状況を美由紀に説明する。


「あれが…邪神帝…」


「でもおかしいんだ。邪神帝は、冥界でしか使えないはずなのに…」


「本当に、冥界でしか使えないの?」


「ああ。ウチの言い伝えでは、邪神帝は死が溢れる場所でしか使えないって。」


明日奈は教えた。死が溢れる場所とは冥界を示す言葉であり、光弘との戦いに敗れて力のほとんどを浄化されてしまった邪神帝は、冥界でしか使えないということを。


「死が溢れる場所…」


美由紀は何かを考えている。




「っ!!」


先手を取ったのはレイジン。縮地を使って一気に接近し、必殺技を使う。


「ハリケーンレイジンスラァァァァァァッシュッ!!!!」


相手はあの邪神帝だ。出し惜しみはしない。霊力を込めてひたすら斬る。オウザはといえば、防御も回避も反撃もせず、棒立ちのまま攻撃を受けた。


「…貧弱な霊力だねぇ…その程度でよく僕の相手をしようなんて思ったもんだよ。」


「っ!!おおおっ!!」


レイジンは何度もオウザを斬る。オウザはただ、それを受け続けている。明日奈が推察した通り、オウザとレイジンの力の差は離れすぎている。オウザに比べれば、レイジンの力は塵のようなものだ。力に差がありすぎて、浄化できないのである。


「そろそろ、反撃させてもらうよ。」


スピリソードを片手で弾き、今度はオウザがレイジンを斬っていく。邪悪を浄化する聖神帝と、聖なる力を破壊するために造られた邪神帝。二つの力は決して相容れることなく、互いを潰し合う。だが、もし片方だけが一方的に強かった場合、


「ぐあああっ!!」


もう片方は何もできずに蹂躙されてしまう。オウザは無傷だったが、レイジンの鎧には一撃当たる度に亀裂が入っていく。




「はぁっ!!」


ヒエンに斬りかかるリョウキ。ヒエンは慌てることなく、無重動法を使って攻撃をかわす。


「あなたとっても軽いのね。そういう技かしら?」


リョウキは早くも、ヒエンの無重動法を見抜きつつある。だが、見抜かれたところでどうなるわけでもない。普通に攻撃するだけでは、無重動法は破れないのだ。


「だったら…!!」


だが次の瞬間、リョウキがものすごい速度で接近してきた。スピードタイプのヒエンでなければ、視認できないほどの速度だ。


「くっ!!」


その超速斬撃は、ヒエンでなければ防げなかっただろう。そう、防いだ。ヒエンに当たったのだ。無重動法は発動したままだったし、ツインスピリソードを交差させて防いだが、間違いなく当たったのだ。


「ずいぶん驚いてるけど、攻撃が当たる際の衝撃波で飛んじゃうなら、それより速く攻撃すればいい。簡単な方法よ?」


リョウキはヒエンに衝撃波が届くよりも速く動き、攻撃したのである。ヒエンが知る限り、そんなことができる者は彼の母以外いない。レイジンの縮地を、遥かに上回る速度だ。それを平然とやってのけたリョウキは、やはりオウザに並ぶ異常である。


「よけないで斬らせてよ。このデッドカリバーは殺徒さんが私のために造ってくれた、愛の結晶なんだから。私もあの人の愛に応えたいの」


リョウキは見せびらかすように双剣デッドカリバーを振ると、また超スピードで接近してヒエンを斬りつけた。しかし、まともに受けてやるほどヒエンも馬鹿ではない。戦法を無重動法から炎翼の舞いへと切り替え、離脱した。同時に炎の羽ば爆発する。だがその直後、爆煙の中から黒い霊力の刃が飛んできた。ヒエンはかろうじてそれを防いだが、もう少しでツインスピリソードを弾き飛ばされるところだった。


「よけないでって言ったでしょ?私は殺徒さんとの愛を証明するために、あなたを斬りたいの。私の気持ちがわからない?」


悠々と歩いて出てきたリョウキは、無傷。全くダメージを受けていない。


「あ、そうか。あなたは恋愛をしたことがないのね?恋愛はいいわよ。何をするよりも楽しいわ」


「…何が恋愛だ。死人のくせに、いつまでも現世の快楽を引きずるな。さっさと成仏しろ!」


ヒエンは軽口を叩くリョウキに苦手意識を抱き、一刻も早く黙らせるべく攻撃する。


「あらそれは駄目よ。」


「ぐあっ!!」


しかしリョウキはヒエンの攻撃を弾き、がら空きになった胴を斬った。


「私は殺徒さんとの愛を味わいたいんであって、他の人と恋愛したいわけじゃない。だから、成仏なんてしたくないのよ。殺しを続けるのも、そうすることで殺徒さんとの愛を証明するため。たくさん殺してリビドンにすれば、殺徒さんはそれだけたくさん愛してくれるわ。」


なおもヒエンを攻撃するリョウキ。ヒエンはそれを紙一重で受け流していく。炎翼の舞いを使いたいところだが、あれも霊力の消費が激しい上に、リョウキには効かない。これ以上霊力を消費しすぎると、リョウキを仕留めるタイミングを逃す可能性がある。


「…狂っている!!そんなものが愛であるはずがない!!」


「私達はもう死んだのよ?生前の普通の愛で満足できるわけないじゃない。もっと強く!もっと深く!!私達は愛し合いたいの!!!」


「ぐううっ!!」


リョウキに翻弄される。このままではまずいと判断したヒエンは、ツインスピリソードに霊力を込める。それを読んでいたかのように、リョウキはデッドカリバーに霊力を込め、


「青羽流討魔戦術、朱雀狩り!!!」


「ヴァイパーバッシュ!!!」


互いに斬った。その瞬間、ヒエンは理解する。ヒエンの霊力は炎に変化しているが、リョウキの霊力は毒に変化しているのだ。恐らくさっき飛んできた霊力刃も、毒だったのだろう。あの時はぶつかったのが一瞬だったし、毒を浄化する聖神帝の力を使っているからわからなかった。が、今度は直接ぶつかり合っているせいか、毒素を強く感じることができた。長くぶつかっていると、いくら炎と浄化の二重属性を持つヒエンとはいえ毒に殺されてしまう。それだけ霊力に差があるのだ。しかし、これはリョウキから距離を取るための作戦である。ぶつかりながら無重動法を使い、リョウキから大きく離れる。それから天高く跳躍して、一気に勝負を着けるべく霊力を解放した。


「青羽流討魔戦術奥義、蒼炎鳳凰!!!」


幾多の敵を、数多の魔を焼き滅ぼしてきた、蒼き炎の鳳凰。ヒエンの必殺技。それを見たリョウキは鼻で笑い、両手を広げてこちらも霊力を解放。


「ポイズンスピリットケツァルコアトル!!!」


リョウキは自分を核にして、羽のついた巨大な蛇となったのだ。技としての原理は、蒼炎鳳凰と同じ。だが、霊力の質も量も、毒素の濃度も全く違う。近くにある建物が、触れてもいないのに毒のせいでどんどん溶けていっている。


「う、うおおおおおおおおおおお!!!!」


それでも突っ込むヒエンと鳳凰。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


咆哮を上げて迎え討つリョウキとケツァルコアトル。実力差は、明らかだった。ぶつかり合ってはいたが、一度ぶつかっただけでもうボロボロ。そして、


「ガァァァァァァ!!!」


ケツァルコアトルは鳳凰の首に食らいつき、引きちぎった。さらに尾による攻撃を二度加えて両翼を切り落とし、最後に胴体に頭突きを喰らわせて鳳凰を完全に破壊した。


「ぐはっ!!」


爆発に吹き飛ばされ、ヒエンは地面に叩きつけられた。




「く…そ…!!」


レイジンもまた、オウザにボロボロにされていた。


「トップに座ってるから戦えないとでも思っていたのかい?あいにく、生前はヘブンズエデンに通っていてね、死後もいろんな相手と戦ってたからむしろ強くなってるんだよ。」


オウザは無傷。とても余裕がある。


(こうなったら…)


「ライオネルバスタァァァァァァ!!!!」


レイジンはライオネルバスターを放つ。


「悪あがきを…ダークネスカノーネ!!!」


しかし、オウザは胸に刻まれている鬼の装飾の口から、巨大な黒い光線を出してかき消してしまう。すぐにかわすレイジン。


(これでもダメか…だったら…!!」


「出ろぉ!!!火の霊石!!!力の霊石!!!」


一発逆転を賭けて、剛焔聖神帝に変身する。


「クリムゾン…!!」


霊力をスピリソードに込めるレイジン。


「まだそんな霊力があったのか。」


オウザもブラッディースパーダに霊力を込める。



そして、



「レイジンスラァァァァァァァッシュゥゥゥッッ!!!!!」



「オウザスラッシュ!!!」



二人は同時に斬った。



バキンッ!!



何かが折れた。


「お、俺の、剣が…!!」


折れたのは、スピリソードだった。レイジンはどうにかかわしたが、スピリソードは叩き斬られてしまったのだ。




「あっ…ああっ…!!」


美由紀は戦慄した。こんなことになるなんて、想像できなかった。最強だと思っていた二人の聖神帝が、こうもあっさりと負けるとは。


(くそっ!!なんてこった!!)


三郎は二人を助けたかったが、戦いが凄まじすぎて結界を維持することしかできなかった。この戦いが現世に解き放たれることは、絶対にあってはならない。


「…」


明日奈は呆けていた。あまりにも二人の邪神帝の力が強く、圧倒されて動けなかったのだ。しかし、レイジン達が負けたことによって、事態を正確に把握する。


「…篠原さん、あたい行くよ。このままじゃ、あの二人が殺されちゃうからね。」


「あっ、明日奈ちゃん!」


止める間もなく行ってしまう明日奈。


「邪神帝!!あたいが相手だよ!!」


明日奈は飛び出し、オウザとリョウキに霊符を貼り付けて爆発させる。しかし、この程度ではダメージを受けない。


「…デュオール、カルロス。そこのザコを片付けろ。それくらいはできるよね?」


「はっ!!」


「ヒャッハァァァ!!汚名返上のチャーンス!!」


「くっ!!」


オウザは明日奈の始末をデュオールとカルロスに任せ、明日奈は大幣を二本取り出して迎え討つ。


「わかったかい?これが僕と君の力の差だ。それにしても素晴らしいよねぇ、このオウザの力。不完全な状態でも、これだけの力が発揮できる。惜しむらくは、使い手に恵まれなかったということだ。」


オウザの力は凄まじい。しかし、それを使いこなせる者がいなかった。製作者でさえ、最終的に我が魂を滅ぼしてしまったのだ。


「中途半端な使い手に使われ続けて、むざむざ力を奪われた悲劇の鎧だよ。でも、僕ならこの力を使いこなせる。僕だけが、オウザを完全に使えるんだ!」


(…ハッタリじゃねぇ…)


殺徒の霊力はレイジンもはっきりと感じた。あれだけの霊力があれば、完全復活したオウザにも魂を潰されるということは絶対にないだろう。


「僕はこの力で全ての生命を殺し、わからせてやるんだ。死者の苦しみを。君はそのための、礎となるんだよ!!」


ブラッディースパーダを振り上げるオウザ。レイジンは、もう勝つことを諦めていた。全力をぶつけても、全く通じなかったのだ。唯一まだレイジンイレースマインドがあるが、攻撃が効かない以上使っても意味がない。


「輪路さん!!」


美由紀はレイジンを救う方法を考える。オウザが使えるのは死が溢れる場所。この言葉には、何かもっと別の意味があるはずだ。


「!!」


そして閃いた。打開策を思い付いた美由紀は叫ぶ。



「輪路さん!!周りのリビドンを全滅させて下さい!!」



「!!」


その声に気付いたオウザは美由紀の存在に気付き、ブラッディースパーダを振った。衝撃波が美由紀に向かって飛んでいく。


「あっ…」


死んだ。美由紀がそう思った時、美由紀のスカートのポケットに入っていた結界符が光り、結界を張って衝撃波を受け止めた。明日奈がくれた結界符は、美由紀の危機に応じてオートで結界を張るようにできていたのだ。しかしオウザの強力な攻撃を完全に受け止めることはできず、美由紀は吹き飛ばされ、結界符も力を使いきってしまった。だが、直撃も死も免れている。


「うおおおおおおお!!!」


レイジンは一瞬美由紀を助けに行こうと思ったが、美由紀の言葉を優先しようと思い留まり、ライオネルバスターや炎を使って周囲のリビドンを攻撃し始めた。


「まだだ…まだ終わっていない!!」


立ち上がったヒエンは右手を突き出し、ある物を出現させる。霊石だ。紫色の霊石だ。


「雷の霊石!!」


ヒエンが霊石を握り潰すと、ヒエンの右腕が紫に染まる。雷の力を宿す、迅雷聖神帝だ。ヒエンはベテランであるゆえに、何年も前から霊石をいくつか取得している。


「青羽流討魔戦術奥義、蒼炎紫雷凰そうえんしらいおう!!!」


霊石を発動した状態で再び鳳凰を出すヒエン。しかし、今度の鳳凰は雷を纏っている。


「霊石を使った三重属性、ね…でも無駄よ!!」


リョウキはまだケツァルコアトルを出したままだ。鳳凰とぶつかる。しかし、今度の鳳凰は雷属性を得ることによって強化されており、ほんの少しだけケツァルコアトルを弾き飛ばした。この程度では倒せないが、倒す必要などない。倒すべきなのは…


「お前達の取り巻きだ!!」


周囲のリビドンに向かって突っ込み、爆発する鳳凰。ヒエンもまた美由紀の言葉を信じ、周囲のリビドンを攻撃したのだ。これで離れた場所にいるリビドンまでかなり倒せた。レイジンも残った力を振り絞って攻撃している。明日奈もデュオールとカルロスをさばきながら、攻撃に参加した。


「くっ…」


そしてリビドンの数が五十をきったあたりで、変化が現れた。オウザの変身が解除されたのだ。


「殺徒さん!!」


「「殺徒様!!」」


それを見たリョウキはケツァルコアトルを解除して、デュオールとカルロスは明日奈の相手をやめて、殺徒のそばに集まる。


「美由紀!!」


「り、輪路さん…」


レイジンは美由紀を助け起こし、ヒエンと明日奈も二人の周りに集まる。


「…よくオウザの秘密を解き明かしたね。」


殺徒は美由紀に向かって言った。美由紀は自分が立てた仮説を言う。


「…死が溢れる場所。それが環境を示す言葉だとしたら、常に死者が溢れている冥界はまさしくその通りの場所です。ですが、私はこう考えました。もし死が溢れる場所というのが、『状況』を示す言葉だとしたら?冥界は死者が溢れる場所、そして今ここにもリビドンという死者が溢れています。」


二つの場所の状況は一致している。この状況こそがオウザを使うために重要だとしたら?そう考えた美由紀は、レイジン達にリビドンを全滅させるという作戦を伝えたのである。彼女の仮説は正しかった。


「お見事。死が溢れる場所は環境を示すだけではなく、死者の霊魂が大量発生しているという状況も示す言葉だ。廻藤光弘との戦いに敗れ力の大半を奪われたオウザは、死者の霊魂だけが持つ特殊な波動が大量に存在している場所でないと使うことができない。その波動を使って、自身を顕現させるための力を補ってるんだよ。」


殺徒は美由紀の頭の回転の早さに敬意を示し、オウザの秘密を語った。今のオウザは、己の存在を顕現するための力もない。ゆえに顕現するため、代替として自身に最も近い死者の霊魂の波動を必要とする。冥界にはその波動が現世以上に満ちているため、冥界でなら使うことができる。現世でもその条件を満たせば、使うことができるのだ。が、それには五十体以上のリビドンが必要になる。だからこそデュオール達に大量のリビドンを連れて出撃させたわけだ。そして、それに気付いた美由紀の作戦によってリビドンの数を五十以下に減らされ、オウザは顕現するための力を失い、変身が解除された。


「本当によく気付いたわね。ここで殺しておきましょうか?」


デッドカリバーを美由紀に向けるリョウキ。


「待て黄泉子。」


しかし、それを殺徒が止めた。


「彼からの情報が正しければ、オウザが完全復活していない今あの子を殺すのはまずい。」


「…ああ…」


「ここは撤退しよう。力の差も、十分理解してもらえたはずだしね。」


殺徒に言われて、リョウキは刃を退き変身を解く。デュオールとカルロスも変身を解いた。


「そこの切れ者ちゃんに感謝するんだね。だが、君達とはいずれまた必ず会う。その時こそ、君達を殺してあげよう。」


殺徒達の後ろに空間の穴が出現し、殺徒達は消えていった。残ったリビドン達の後ろにも空間の穴が出現し、引き上げていく。


「…助かった、んでしょうか?」


「らしいな。お前のおかげだ」


レイジンは変身を解く。


「悪いが、俺はすぐに帰らせてもらう。危険を犯してまで得た貴重な情報を、急いで会長に報告しなければ。」


「ああ、頼む。」


ヒエンも変身を解き、協会本部に帰っていった。


「った~くお前らはヒヤヒヤさせやがってよぉ!!」


空から降りてきて結界を解く三郎。本当に、今回は危なかった。


「こりゃ、あたいももっと修行を頑張らなきゃ、だね…」


明日奈が見る方向には、ある物がある。輪路も、美由紀も、それを見ていた。




そこには、殺徒に叩き折られたスピリソードの刃が、輪路の木刀が落ちていた。




絶望的、圧倒的な力の差。今回は美由紀のおかげで助かりましたが、もっと強くならなければ…。


次回は殺徒に折られた、輪路の木刀のエピソードです。お楽しみに!

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