レイジンvsイザナミ!!ゴールデンウィークの死闘 PART3
ついに伊邪那美との直接対決です!!
「明日奈!!」
戻ってきた明日奈を、吉江は抱き締める。三郎は瞬間移動の妖術を使うことができるので、輪路達はそれで戻ってきたのだ。
「母さん。あたい、やるよ。廻藤さんと一緒に、伊邪那美と戦う。」
「明日奈…決めたんだね?本当に、それでいいんだね?」
「うん。」
「…わかった。この戦いの要は、あんたと廻藤さんだ。私は二人が全力を出せるよう、援護するよ。」
「うん、お願い。」
明日奈の決意を確認し、吉江もまた全力で娘をサポートする決意を固める。
「まず援護が万全なものになるよう、準備をしなくちゃね。」
「僕も手伝います!」
「私達も!」
「人手は多いほどいい。それじゃ、明日奈のお友達の皆さんには…」
賢太郎と彩華から手伝うと聞いた吉江は、一度小屋の中に引っ込むと、大きなカゴを抱えて戻ってきた。カゴの中には、大量の札が入っている。
「これをここの敷地中に貼ってきてもらおうか。」
「…これ、何ですか?」
茉莉が訊く。
「結界苻といってね、文字通りこれを貼った領域に結界を張る道具さ。貼れば貼るほど、結界の強度は上がるんだ。伊邪那美が入ってきた時、私が術を起動して伊邪那美をここに閉じ込める。街に被害が出ないようにね」
「な、なるほど…」
吉江はこの結界苻というらしい札を使って、伊勢神宮に結界を張るつもりでいるようだ。しかし、とてつもない量である。茉莉はその枚数に引いていた。これだけの数の札があれば、かなり強力な結界が張れるだろう。
「正直言ってこれでも足りるかどうかわからんが、使わないよりはマシだ。」
しかし吉江は、これ程の数の結界苻を使っても、破られる可能性があると言った。さすが神といったところだろう。
「わかりました。彩華さん、茉莉ちゃん。手分けして貼ってこよう」
「はい!」
「りょ~かい。」
賢太郎達は結界苻を貼りに行く。ただ枚数が多いので一回で全部貼るということはできず、何回かに分けて貼る。
「ぜぇ…はぁ…」
「三郎ちゃん大丈夫ですか…?」
「こ、これが…大丈夫に…見えるか?…ぜぇ…」
三郎は荒い息継ぎをしながら、美由紀に介抱されていた。瞬間移動の妖術は、妖力を大量に消費するのである。一人や二人連れて移動するくらいなら問題はないのだが、五人だ。それはさすがに多く、三郎の妖力はもうすっからかんである。妖力と体力、精神力はリンクしており、妖力を使いきれば体力、精神力にも影響が出る。だから三郎は疲れきっているのだ。
「三郎さんのことは篠原さんにお任せしておくとして、廻藤さんは明日奈の修行に協力して下さい。」
三郎の介抱を美由紀に任せた吉江は、輪路に明日奈の修行を手伝うよう言う。明日奈はもう何年もまともな修行をしていないので、かなり力がなまってしまっている。いくら天照の力を持つとはいえ、これでは伊邪那美戦の戦力にはならない。だから、明日奈を戦力として鍛えなければならないのだ。
「わかった。」
「さっきも言ったけど、あたいはここでなら100パーの力を出せる。さっきまでと同じだと思ったら大間違いだよ?」
「上等だ。お前みたいなガキには絶対負けねぇ」
輪路を挑発する明日奈。秦野山市にいた時の明日奈の力は、本来の力の半分以下だったので、ここなら先ほどまでの二倍以上の力が出せる。まぁ輪路も全力など出していないのだが。というか明日奈の攻撃を受けるだけで反撃していなかった。
「修行には裏手の庭を使って下さい。既に結界苻を貼ってありますから、あとは術を起動して中で修行するだけです。」
「結界の起動ってどうやればいいんだ?」
「起動はあたいがやるよ。修行が始まったら、廻藤さんはただあたいと戦ってくれればいい。」
三郎の術を見て結界自体を知っているとはいえ、実際にどうすればいいかを輪路は知らない。が、明日奈にはできるそうなので、心配はいらなかった。また今回の修行は明日奈のためのものであり、輪路と戦いながら幼少期に学んだ術を思い出していくつもりらしい。
「じゃ、早速始めるか。」
輪路は明日奈と、伊勢神宮の裏手に移動する。なるほど、それなりに広い。そこらの木やら岩やらに結界苻が貼ってあるので、もしかしたらここは天照の巫女が修行するための場所なのかもしれない。
「じゃ、結界を張るよ。はっ!」
明日奈は術を発動させる。すると、周囲に貼ってある結界苻、そこに書かれている文字が発光した。同時に、周囲から人の気配が消え去る。結界が張られたのだ。
「結界か…三郎は結界張るのに、札なんて使ってなかったけどな。」
「結界苻にはあらかじめ結界を張るための術式と、強い霊力が込められてる。術さえ起動すれば、術者の代わりにずっと結界を張り続けてくれるのさ。札の霊力が切れれば結界も消えるけど、術者が結界を張る必要がないから、戦う上じゃこっちを使う方が有利だ。」
結界は、ただ張るだけでは結界として成り立たない。目的を果たすまで、張り続けることが必要だ。で、結界を張ったまま戦うと、戦闘に使う霊力と結界の維持に使う霊力とで、より多くの霊力を消費してしまう。だが結界苻はその問題点を解消しており、札が勝手に結界を展開し続けてくれるため、結界の維持に力を割く必要がなく、術者は戦闘にのみ力を使うことができる。要するに、燃費削減のための道具なのだ。
「詳しいな。お前、本当は寮にいる間も、巫女の勉強してたんじゃねぇの?」
輪路は指摘した。黄泉醜女が襲ってきた時も、いち早く敵の正体を見抜いてみせたし、少しでも勉強していなければできることではない。
「…まぁね。笑っちゃうでしょ?自由が利かない力を持たされて、おまけにここに永住しなきゃいけないなんて決めつけられてさ、それが嫌でここを出たはずなのに…結局あたいは、自分の使命を捨て切れなかった。」
天照の巫女として生きなければならないという重圧に耐え兼ねて、明日奈はこの伊勢市を飛び出した。しかし、自分に与えられた使命を、捨て去り切ることもできなかったのである。寮にいる間、自分勝手な想いだけで家を飛び出してしまったことに、ずっと後ろめたさを感じていた。だから密かに、誰にも気付かれないようにこっそりと、天照の巫女の勉強を続けていたのだ。勉強するだけで戻るつもりはなかったが、輪路に渇を入れられて、明日奈はここに戻ってきた。戻ってきた以上、やらなければならないことをやり遂げねばならない。
「っていうか、廻藤さんって聖神帝のくせに、こういった話あんまり知らないんだね?」
しかし、それはそれとして、明日奈は輪路が神話や術などの知識に乏しいことに驚いていた。
「ああ。俺は幽霊を成仏させることしかしてなかったからな。レイジンに変身できるようになったのだってごく最近の話だし」
そう。輪路が相手にしてきたのは幽霊だけで、それ以外の妖怪や呪術師などとはほぼ戦ったことがない。まして神など、今回が初めてだ。魔物退治の専門家というわけではないので、その手の知識は少ない。
「まぁ俺にできることといったら…」
輪路は鞘袋から木刀を抜き、
「斬ることだけだ。」
両手で柄を握って構えた。
「…ま、今は別にそれだけで…いいんじゃない!?」
明日奈は不意討ちとばかりに衝撃波を放つ。だが、輪路は直後に木刀を振ってそれよりもさらに大きな衝撃波を飛ばし、明日奈の衝撃波を破った。
「!!」
すぐ片手を前に向け、霊力でバリアを張って防ぐ。
「おいおい、この程度でビビってんのか?これでもまだまだ、手加減してんだぜ。」
ここで明日奈は再確認した。さっきまでの自分は一方的に攻めるばかりで、一度も輪路に攻撃させていなかったのだということを。
「…オッケー、そうこなくちゃ!!」
予想以上の強敵だったが、こうでなくては修行の意味がない。二人は対等の条件で、修行という名の戦いを始めた。
「終わりました!」
結界苻を全て貼り終えた賢太郎達は、他にやることがないかと吉江に尋ねに来た。
「おお、終わったか。早かったね、もう少しかかるかと思ったが。」
吉江は美由紀と一緒に、白い紙で人形を折っていた。
「…何してるんですか?」
「折り紙…?」
不思議そうに見ている彩華と茉莉に、美由紀は自分達が何をしているか教える。
「式神っていうのを作ってるんだよ。」
「式神?マンガとかに出てくる、あの式神ですか?」
式神とは、鬼神や神霊などを、陰陽術で使役した存在だ。ゆえに、使役しているという意味で、式という言葉を使うのである。
「伊邪那美が相手では通用しないだろうが、たくさん作れば時間稼ぎくらいはできる。だから、こうやって紙で人形を折って、そこに私の霊力を込めて即席の式神を作るんだ。」
伊邪那美との戦いで輪路と明日奈をサポートするため、二人はたくさんの式神を作っているのである。
「次は式神作りを手伝ってもらおうか。お前さん達、折り紙は得意かね?」
「僕はちょっと…」
「私が折り方知ってます。」
賢太郎は少し渋ったが、彩華が人形の折り方を知っていたので問題は解決した。こうして五人は、式神を作ることになる。
*
輪路と明日奈の修行は順調だったが、式神作りの方は思ったより難航し、あまり作れなかった。しかし、まだ一日の猶予があるので、次の日も伊邪那美を迎え討つ準備をすることに。それぞれがそれぞれの思惑を持って準備に励んだ。伊邪那美が来るまであと一日。あと一日で、もしかしたら日本は終わってしまうかもしれない。そう思うと、彼らは何もせずにはいられなかった。
そしてとうとう、三日目。
「お前ら、準備はいいか?」
輪路は吉江と明日奈に訊いた。
「はい。」
「いつでもいいよ!」
二人の準備は完了だ。今回は天照の巫女の正装として、明日奈は長い髪を解き、巫女服を着ていた。美由紀達は、伊勢神宮の敷地の外に出している。理由は、伊邪那美が来るからだ。今回の相手は今までのリビドンとはわけが違う。守りきれないかもしれない。だから、今回ばかりは美由紀達の存在が邪魔になるのである。
「輪路さん、頑張って下さいね。」
「おう。伊邪那美なんざすぐぶっ倒してやるよ」
結界苻も貼ったし人払いもした。式神だってたくさん作った。これ以上ないと言えるほど、万全に準備を整えた。あとは、伊邪那美がやってくるのを待つのみだ。
そして、
「…来る!!」
明日奈は空を見上げて言った。先ほどまで清々しいというのに、空に突然暗雲が立ち込めたのだ。間もなくして、その暗雲から巨大な雷が落ち、雷の中から伊邪那美が姿を現した。
「我が名は伊邪那美。お前達の望み通り来てやったぞ!」
「お前が伊邪那美か…美由紀が言ってた通り、おっそろしい見た目してやがるぜ…」
伊邪那美の姿は、確かに醜い。ぼろ雑巾という言葉をそのまま体現したかのような外見だ。しかし、それだけではなかった。伊邪那美からは人間の幽霊ではあり得ない、強い気迫を感じたのだ。これは、伊邪那美が神と呼ばれる存在の一つであるということを実感させた。しかし、気圧されている場合ではない。
「母さん!!」
「はっ!!」
明日奈から促され、術を起動する吉江。すぐ伊勢神宮中に貼られた結界苻が発光し、結界が発動。伊勢神宮と外界を切り離す。
「結界か…私との戦いの余波が外界に及ばぬように、だな?賢明な判断だ。しかしこの程度の結界、私が少し力を加えれば簡単に砕けるぞ。」
結界を張った意図を早々に見抜く伊邪那美。もちろん、このまま彼女を封じておけるなどと思ってはいない。そもそも結界を張った理由はあくまで伊邪那美との戦いの余波を街に出さぬようにするためであり、封印するためではないのだ。
「ならその前にお前を倒しゃいいだけだろ?」
「できると思うか?お前はそれなりに強い霊力を持っているようだが、それだけの話だ。しかも老いぼれと小娘を連れているとは…死ぬつもりでいるとしか思えんぞ?」
「そう言うなよ。二人とも、天照に支える巫女なんだからな。」
「天照?」
「…ああ、時期的にお前は天照のこと知らないんだったな。お前が冥界に封印された後、伊邪那岐が生んだ神だよ。」
「…ほう…」
輪路の話を聞いて、伊邪那美の顔付きが変わった。
「ならば、私が殺さねばならんな。奴に、伊邪那岐に縁する者は一人も生かしておかん!!皆殺しだ!!」
伊邪那美は天照を知らない。冥界に封印された後に生まれた存在だから、知るはずがないのだ。しかし、伊邪那岐から生まれた存在であるなら、生かしてはおけない。伊邪那美の憎悪は暴走し、伊邪那岐のみならず、伊邪那岐に縁がある者、伊邪那岐が生まれたこの国さえも恨んでいるのだ。
「本当なら俺一人でやるつもりだったんだが、それじゃ無理だってうるさいやつがいるもんでな。不本意だが、協力してもらってんだ。だから、殺させるわけにはいかねぇな。てめぇの憎悪を払ってやるよ」
「あたいは天照の力を受け継いでる。この力を持って生まれた理由が、人を守るためだっていうんなら、あたいは戦う!!それが例え、かつてこの国を作った神であろうと!!」
「伊邪那美よ。今のあなたはこの国にとって、災いにしかならぬ。あらゆる災いを払うことこそ天照の、そして天照を生みし伊邪那岐の望みなり!!」
輪路は木刀を抜き、明日奈と吉江は札を出す。
「なら、私はお前達を殺し尽くしてやろう。来るがいい!!」
伊邪那美が片手をかざすと、彼女の手の中に長剣が現れる。十握剣。伊邪那岐が伊邪那美を殺した迦具土を殺すために使用し、また伊邪那美から逃げる際にも使ったと言われる霊剣だ。この伝承から、十握剣は伊邪那岐の持ち物だと、明日奈は思っていた。しかし、伊邪那美は製鉄を司る神でもある。ゆえに鉄を、鉄に縁ある物を作ることができるのだ。そしてその力を使って生み出した剣が、ただの剣などであるはずはない。伊邪那岐の剣に匹敵するほどの、強力な霊剣となる。そもそも十握剣とは長剣を示す言葉なので、長ければ、長くて霊力を持っていれば、それは十握剣なのだ。
「神帝、聖装!!」
だが、輪路もまた剣を扱う者。
「レイジン、ぶった斬る!!」
レイジンに変身し、スピリソードを構えて伊邪那美に斬りかかる。伊邪那美は崩れかけの身体に似つかわしくない剛力をもって、レイジンの攻撃を受け止めた。
「聖神帝か。だがそれが何だというのだ?」
「ぐあっ!!」
ぶつかり合ったのもつかの間、伊邪那美からほとばしる雷が強く発光し、破壊の力となってレイジンを吹き飛ばした。伊邪那美の雷は、ただの雷ではない。伊邪那美の身体から生えている八つの雷は、炎雷大神という雷神の群体である。一つ一つが意思を持ち、相手の攻撃に合わせて自動で反撃し、また伊邪那美が操ることもできる。
「はああああっ!!」
だが、戦うのはレイジン一人だけではない。明日奈は跳躍し、無数の札を投げつけた。伊邪那美はそれを、十握剣で斬り刻む。札はバラバラになってしまった。しかし、
「天御星瞬!!」
それは明日奈の策略だった。明日奈が霊力を込めると、バラバラになった札が一斉に爆発を引き起こした。札を投げつけ、爆発させる法術である。その際に斬り刻まれたりすれば、札の切れ端も爆弾となり、より広範囲の敵にダメージを与えられるのだ。
「やあああああっ!!!」
しかしまだまだ、この程度で倒せる相手なはずがない。追撃として、無数の霊力弾を放つ。
「はっ!!」
煙の中に霊力弾が突入する寸前に、伊邪那美は炎雷大神を操り、雷を放って煙を吹き払い、霊力弾を破って明日奈を狙う。やはり倒れていなかった。無傷…いや、元からボロボロだが、傷が広がったりしていないので、まぁ無傷と言うべきだろう。
「くぅっ…!!」
すぐ霊力で障壁を張って防ぐ。だがやはり神の雷。瞬く間に障壁にひびが入る。
「明日奈!!はぁっ!!」
娘の危機を救うため、吉江は自分が持っている札も投げつけた。
「光縛!!」
すると、札が意思を持っているかのように、伊邪那美の周囲の空中に配置され、光の鎖を出して伊邪那美を縛った。これにより、明日奈への攻撃は止まるのだが、
「小賢しい!!」
すかさず雷で札を破壊する。自由になる伊邪那美だったが、
「レイジンスラァァァァァァァッシュッ!!!」
すかさずレイジンが必殺技で斬りかかる。
「ふん!!」
それを十握剣で受け止める伊邪那美。モタモタしていると雷神の反撃がくるので、レイジンは素早く離れる。離れてから、
「ソニックレイジンスラァァァァァァァッシュッ!!!!」
縮地を使って鞘なし居合を放つ。
「ふん!!」
伊邪那美はそれすら受け止める。ならばとレイジンは再度離れ、
「ハリケーンレイジンスラァァァァァァァァァッシュッ!!!!!」
次なる技を放つ。伊邪那美は放たれる斬撃を十握剣で全て弾き、
「はっ!!」
雷ではなく、斬って反撃した。レイジンはスピリソードで受け止めるが、凄まじい威力に大きく後退する。
「こいつ…ハリケーンレイジンスラッシュを見切りやがった!?」
「ほほほほほ!!人間の分際でなかなかやるではないか!!少し腕がなまっていたところでな、せいぜい楽しませろ!!」
ハリケーンレイジンスラッシュを容易く見切り、反撃までしてみせた伊邪那美。その恐るべき力と技量を前にして、レイジンは神の強大さを感じていた。今までの相手とは、明らかに次元が違う。これならいっそデュオールと戦った方が遥かにマシだ。一方伊邪那美はと言えば、レイジンの必殺技と何度も打ち合ったにも関わらず、特に堪えた様子もない。むしろ闘志に火を点けてしまったようで、まだまだ余裕といった感じだ。
「あたいを無視するな!!」
「む!?」
空を飛びながら、衝撃波と霊力弾で攻撃する明日奈。伊邪那美は跳躍し、同じように空を飛んでかわしながら明日奈に接近。
「鬱陶しい雑魚め。まずお前から叩き落としてやる!!」
十握剣を振り下ろす。
「させるか!!」
レイジンもまた跳躍。真下から伊邪那美を強襲し、十握剣を跳ね上げる。
「やぁっ!!」
勝機を見出だした明日奈は、超至近距離から、特大の霊力弾を叩き込んだ。
「ぐわっ!!」
吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる伊邪那美。
「おのれ…ならば…!!」
伊邪那美は怒りながら立ち上がり、雷神達の力を一つに束ねて、巨大な雷を放つ。
「八災雷!!!」
「ライオネルバスタァァァァァァァァァーーーッ!!!!」
それをフルパワーの霊力光線で迎え討つレイジン。
「ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
互いの力は拮抗し、爆発する。レイジンの攻撃は止まってしまったが、伊邪那美の攻撃も止まった。今が伊邪那美を倒す最大のチャンスだ。
「これで終わらせる!!」
明日奈は巫女服の袖の中から一本、大幣を取り出すと、霊力を込める。
「天照…!!」
そして、
「大君煌!!!」
大幣から、ライオネルバスターにも負けないほどの巨大な光線が発射された。
「っ!!」
光に呑まれる伊邪那美。直撃だ。確実に命中した。
「っしゃあ!!やったぜ!!」
あれだけの攻撃を受ければ、さすがの伊邪那美も立ち上がってはこれないだろう。もし立ち上がってきたとしても、ノーダメージではないはずだ。ガッツポーズを取るレイジン。
「おのれ…おのれ…!!」
だが、伊邪那美は立っていた。ノーダメージというわけではなさそうだが、致命傷には程遠いといった感じだ。いや、元からいつ倒れてもおかしくないと言えるほど傷だらけではあったが。
「人間風情が私に傷を…!!」
ダメージは確かに大したことはない。しかし、人間が自分に傷を負わせた。伊邪那岐の子達がこれをやった。それが何より許せなかった。
だから本気を出すことにした。
「ぬがああああああああああああああああああ!!!!」
伊邪那美の身体に変化が現れる。腐った肉体が膨張し、溢れ出す。骨が太く鋭利になり、身体を突き破る。やがて伊邪那美は、そのおぞましい姿をさらなる異形へと変化させ、十倍もの大きさに巨大化した。
「へっ…第2ラウンドの始まりってわけか…」
レイジンは本気を出した伊邪那美に警戒し、スピリソードを構える。
「絶対に許さんぞ!!!貴様らァァァァァァァァァ!!!!!!」
伊邪那美は激昂した。
次回はいよいよ決着!!死闘の行く末しかと見よ!!




