3話 『敵の敵は友』後編
【予知魔が制限できない。】
【出来なくなっている。】
そんな・・・これでは人を見ることがままならない。
屋上の貯水庫の隣に座る彼の頭上には澄み渡る空が広がっている。
細い毛は一本一本が光で反射していた。
誠「お前は感情のわからぬ奴だな・・・。」
千歳「・・感情だけじゃねぇ、俺のこともわからねぇだろ。てか、忘れてる・・・」
誠「は?千歳となんか会った事もない・・・」
いや、【会えるわけがない】。
それが正しい。小一の頃から人との関わりを避けられた人生なのだ。
こうして、自由に誰かと話せるなんて今でも考えられない夢事だ。
千歳「そう、だったら簡単にいったんだけどな・・」
また、私のわからないことを言う。ただ、風にあおられるその横顔が悲しく見えたのだ。
しかし、この顔には似合わぬ色だ。
金髪に緑の目。なんだったら黒いほうが似あ・・・!?・・・
誠「黒沼千歳・・・どこかで?」
千歳「・・・はぁ~、・・・お前とあったのは幼稚園の頃だ。」
誠「あっっ!黒沼っていじめられてた黒髪の男じゃないかっ!」
千歳「天才【赤堀誠】。桜蘭女学院の生徒会長さんだろ?予知魔を飼っている【イレ・・のキー・・】俺は最初からお前のこと知ってたけどな。」
―――――――――――――知られざるモノを奴は簡単に知っていた――――――――――――
反射的に1秒という【長い時間】で奴から10mは遠ざかった。
なんて、早い展開なのだろうか。まだ、1章の3話の上の上!
まぁ、それは置いといて・・
誠「!!!くっお前!!!敵か!!!!!」
彼は微笑みながら立ち上がった。
千歳「俺はもう感情なんてない。わからないじゃない。無いんだ。お前は俺にとって一族の仇・・・そうだ。敵だ。」
彼は【コンタクト】と【鬘】をとった。
憎しみの感情がある。そして、周りに対しての感情だけはないのだろう。
黒髪で赤眼の黒龍【フェブスの子】。またはそう【族の王】。
誠「私だって知っているぞ・・【マティアス・フィン・ブラッドレット】殿下。黒谷桜学園にいるとは聞いていた。」
千歳「・・・・・・まぁ、その話は置いておこう。今は何もする気は無い。」
誠「なに!?お前は一族の仇をとりに私を殺すのではないのか!!!!そのためにここにいるのではないのか!」
千歳「あぁ、そのつもりだった。でも、お前だとわかったから・・・」
赤い目が悲しい目に変わった。
艶のある髪もさわやかに揺れ動いている。
黒沼千歳。またの名をマティアス・フィン・ブラッドレットといい黒龍一族の王。前もいったが、彼の一族は人間の手で殺され、そして、殺し方を教えたのは私なのだ。その怒りと悲しみの矛先が私に向き【彼の敵となった。】
でも、たった今、殺す気は無いと来た。
誠「私がお前の幼稚園の時の【友】だからか。そうなのか?」
千歳「笑わすな。友?俺は一度も思ったことは無い。」
まっすぐ彼は私を見つめる。
誠「じゃぁ、お前にとって私は敵であって、もう一つなんなのだ・・・」
千歳「そーだな。存在で言えば今は【敵の敵】。お前の敵は俺の敵だ。俺はまず、そいつを探す。必ず・・。」
誠「ふむ。なにやら事情があるようだな・・。千歳、お前は【敵の敵で今の存在は友であるからな】今のところはこのまま黙っておいてやる。しかし、将来的に敵になるようならその時、私は容赦はせんぞ。【仲間】になるなら歓迎だ。」
千歳「・・・誠・・・言っておくが俺はお前を殺す。これも必ずだ。けして、【終わり招く存在】だとしても。黒き【宝石】だとしてもだ。」
千歳が言った意味がわかるのはこのころから後の事。そんな事実に私は涙を流さずにはいられない。
【白と黒と赤の物語。これは、黒と赤の物語。白と赤の物語。赤の視点から語る物語・・・】