3話 『敵の敵は友』前編
---登校中---
優しい朝が来た。
転入してからわずか2週間少しだろうか?
もう、国光桜立学園に慣れ始めた私は成績トップに上り詰めた。
けして、能力を使っているわけではない。
最初に説明したのを覚えているだろうか?
私は元ガリ勉家。
そう、幼稚園の頃には外国語と数学以外は高校レベル、そしてその2つは大学レベルまであったほど。
IQ180を越える超達人級。
この私【赤堀 誠】は能力に頼ってなどいない!けして、自慢などっ!
と自信満々に2人に語る。いや、後ろに本を読んで歩いている奴が1人で3人か。
ティア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ノア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
千歳「・・」
2人は絶句した。眼球を大きく見開いた。
ノア「自慢だよ~。」
ティア「私でも、そこまでは頭は良くないですね。はは・・・」
千歳「・・・当たり前だろそんなの。」
後ろで千歳がさらっと言った。当たり前だと何度も。【お前だから】と。
誠「そーなのか!?・・・いや、そーだとも!私が普通なのだなっ。」
2人「・・・」
誠「どうした?そんな、汗をたっぷりかいて?熱くはないが・・・顔も赤いというよりは青いな?」
ノア「いっいやぁぁ~。世界が違うなって。はは・・。」
ティア「【冷や汗】です。まぁ、その話は置いといて・・・今日こそは高校生らしくいてください!いえ、何もしないことが肝心です!」
誠「何も!?」
首を縦にティアは深く、それまた深くノアも頷いた。
相変わらず千歳は本を読みながら歩いている。
少しは奴【黒沼 千歳】をわかってきた気がする。【無関心】な男だ。それしかまだ言えないだろう。
---3年AA教室---
ここも相変わらず熱心なものが集っている。
見た目で普通の女子高生といえば私たちくらいなものだろう。【変人】見た目から伝わる者たちだ。
ノア「あっ!1時間目は美術だね。」
ティア「そうですね。では、今日は息抜きとして私たちは護衛を1時間はずします。誠は気楽に授業に参加してくださいね?」
誠「本当か!?ありがとうティア・・・。」
厄日じゃあるまいな・・・?少しそう思いながらも高鳴る気持ちを隠せずにはいられなかった。
千歳「・・・」
---外---
美術の先生「ここから自由行動とします。テーマは【人】です。では、始めて下さい。」
皆が散らばる。
やはり一番の決め手は【屋上】だろうか。私は早速そこに向かう。
カンパスに書くのは、青い空!・・・の下で野球をしている高校生だ。
なんとも青春ともいえる風景だ。これぞ高校生だろう。
鼻高く私はそう思う。
ふと、野球の選手がグラウンドを駆ける。
監督が集合をかけ何かをつぶやいている。
暗い顔をして引きつった顔が帽子で隠れた。
?「やらなきゃ、お前は終わりだ・・」
誠「っっえっ?」
戻って体勢を取り直したピッチャーが振りかぶる・・・
満塁のピンチらしい???
・・・死に物狂いの【眼】だ。
誠「っ!」
ふと、いやぐっと吸い込まれた。
魂の叫びが【見える】。聞こえる。聴こえる。
その【眼】にあの【眼】に吸い込まれ、彼の【未来が脳波に映った】
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誠【やっあ!!!!やめろっぉお!それを投げちゃ駄っ -----------。】
ザザザザザザザザザザァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・ ・・ ・・・
【テレビが壊れた】
<バタッ>
薄っすらと見えるのはぼやけたグラウンドと、
誠「ち・・とせ・・?」
黒沼千歳だった。
そして、はっきりと見えたのは、毛先のほんのり【紫色に痛んだ黒髪だった。】
誠「!?」
とっさに髪を後ろに隠す。千歳は私の能力を知らない。知られてはいけないのだ。
千歳「・・・描くなら俺を描け。題材は【人】なんだから・・」
誠「・・・嫌・・」
千歳「俺は大丈夫だから。」
??コイツ私の能力に気づいているのか・・・?いや、知っているのか??これは、まずいんじゃ・・・・っ・・。
千歳「早くしろ。」
誠「!おう・・・は・・?」
威勢のいい声が響いた。奴を見ても・・・【濁っててわからない】
少しの頭痛だったが私は、筆を滑らせた。
カンパスに絵描きながら冷や汗を掻いた。