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君のいる風景

酔いが醒めてから

作者: 蒲公英
掲載日:2012/12/30

「おねえさん、今どんなぱんつ穿いてるの?」

携帯電話の液晶を見つめること、30秒。

相手が誰だかは、当然わかっている。

「ヘザーグレーのローライズのボクサー。ゴムの部分に、紺色のライン」

「うっ!色気ねえ!」

「部屋に一人で色気なんか出すか!何なのよ、日曜日の朝に!」

受話器の向こうから、笑いを含んだ声が聞こえた。

「まだ寝てたのかよ。1時だぜ?」


別に予定のない休日に何時まで寝ていようが、こいつには関係ない。

学生時代の続きの能天気なテンションで、電話の内容は相変わらずのバカ話。

「日曜日の真昼間に電話してくるって、どうよ?ヒマ人の証明みたいなもんじゃない」

「おまえもヒマなんじゃねえ?真昼間まで寝てたんだろ……あ……」

「何?」

「俺、今穿いてるぱんつ、おまえとお揃いだ。霜降りグレーのボクサー」

「嬉しくないから!ってか、普通に売ってるデザインでしょうが!」


つかず離れず、卒業してからも学生時代と同じノリ。

能天気にのほほんとした声は、普段の気が張る生活とは違うペースを連れてくる。

自分を作らなくてもバカ話ができる相手って、社会に出るとなかなか見つからない。

「また二日酔いかあ?」

「いや、昨夜はそんなに飲んでないんだけどなあ」

「ストップしてくれる男、見つけろよ」

「うるさいなあ。あんただっていないじゃん」

「俺は選り好みしてんの。誰かさんみたいに、相手にされてないんじゃないの」

「あたしだって、昨夜は男と飲んでたんだから!」

嘘じゃない。取引先の男に誘われて、飲みに行ってたんだから。

ただ、あまり知らない相手と飲むのは気疲れして――家に帰って、飲みなおした。


「ふうん?デートだったんだ」

能天気の声に、勝ち誇る。

「そ、デート。見る目がある男っているものよね」

「で、いつも通り大酒を飲んだ、と」

「大酒って、失礼ね。淑女らしく慎ましやかに……」

「似合わねーっ!」

能天気は、ちょっと声を張り上げた。

「おまえに慎ましやかなんて、絶対似合わない!恥ずかしがりもせずに、ぱんつの話する女が!」

「聞くからでしょうがっ!」

聞かれもしないのに、ぱんつの話なんて絶対しない。


「大酒飲みで、休みの日は昼過ぎまで寝てる女だって、相手は知ってんのか」

やけに突っかかる能天気。

「知るわけないじゃない。ふたりで会ったの、はじめてだったんだから」

「ふうん?知ったときに失望しないか?」

余計なお世話。

「あんたこそ、いつまでフリーでいるのよ。ヒマ潰しに電話する相手が、私しかいないわけ?」

能天気の声は、一歩遅れた。

「違うね。日曜日にヒマそうな相手が、おまえしかいないってことだね」


しばらくのほほんと喋っていた能天気は、夕方からの私の予定を訊いた。

「予定はないよ。久しぶりに飲みに行く?」

「……いや、飲みに行くってか、むしろ」

「むしろ?」

「ぱんつが本当にお揃いかどうか、確認しに行ってやる」

へ?何?

「霜降りグレーのボクサーだな?待ってろ、これから行くから」

それっきり、通話は切れた。



日曜日の昼に電話して来るのは、男の有無の確認のため、だったらしい。

30分もしないうちに現れた能天気に、ぱんつの色の確認をされちゃったのは、それを聞いてからだった。


fin.

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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは、いつも蒲公英さまのお話を楽しませて頂いてます(*^^*) 今回の二人のやりとりが「遠慮の要らない間柄」がよく出ていて、自然で居られる間柄っていいよねー、と、思いました。 蒲公…
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