7月9日 16:00 自室にて
空想科学祭習作です。
「ブライトです。お部屋に入られても?」
「失礼いたします。音楽を聞いておられたのですか。素敵な音楽ですね。
先ほど清掃が一通り終わりました。お体にお変わりはございませんか?」
「本日ここに来たばかりのパルサーさんですが、本当によく働くお方で私もびっくり致しました。彼女は私と比べて数倍も出来るお方で、どうして彼女が安値で売られていたのかと首を傾げてしまいましたよ。私の知らないうちにアンドロイドの性能は飛躍的に向上したようで、あの値段でしたらもう一人ほどお雇いになられても良さそうですね」
「そうですね。いずれ増やせたらということで。今は色々と試さなければならないことが多いですしね。それらを全て終えてから、となりましょうか」
「それでですが、パルサーさんには未だにあのことを伝えておりません。パルサーさんが非常に気立ての良いお方でいまして、彼女とあれこれ話しているうちに言えず終いになってしまいまして。申し訳ありません。昨日に申し上げたこととは違うことになってしまいまして」
「彼女がこの城に慣れてからでも良いと……。そう仰って貰えると助かります。しかし、パルサーさんはどうしてあれだけお仕事が出来るお方なのに今まで買われることがなかったのでしょうか。私はてっきりあまり出来ないアンドロイドが派遣されると考えていたので。そこが非常に気にかかります」
「そうですね。やはり、山から下りて村に出なければ分からないことばかりですね。ですが、麓の村の住民がどんな奴らが多いかはあなたもご存じのはずです。慎重に事は進めなければなりません。彼らは財宝が未だにこの城にあると勘違いしておられます。古城ですゆえ、何も知らぬ者がそんな夢物語に憧れるのも分かるのですが、半年前の侵入事件には驚かされましたし。挨拶も無しに発砲とは……。
正直に言うと、私はパルサーさんに武器を持たせることは反対なのですが、しかし此処で生活する以上は武器を持たせないと、いつまた半年前のようなことが起きるか」
「そうですね。仰る通りだと思います。そうならぬよう、ゆっくりやっていきましょう。
それでは失礼しますが、夕食は何をお食べになりたいですか? パルサーさんが袖をまくって言ってましたよ、何でも御作り致しますって」
「お任せ致しますって、食べたい物はないんですか?
はあ、そうですか。分かりました。ではパルサーさんにお任せ致しましょう。夕食時になりましたらまたお呼びに参ります。
では、失礼いたします」




