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毒蜘蛛パルサー -romance for you remix-  作者: 朝比奈和咲
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7月14日 15:00  自室にて

『パルサーですの。お部屋に入られても?』



『失礼しますの。ブライト様からのお言葉をお伝えに来ましたの』


『井戸のお水が今度は止まりましたの。ブライト様は原因を追及するために開かずの扉の先に行きましたの。どうやら長くかかるだろうとのことでしたの。そこでそのことを私からあなた様にお伝えするように、と申されましたので私は此処へ来ましたの』


『そちらの椅子に座られてもよろしいでしょうか? 私も何もすることがないので暇で仕方がありませんの。せっかくですので少しお話でもしましょうか。


 大丈夫ですの。昨日のような真似はしませんの。

 私だって、色々と考えて行動しているのですの。分かっているとは思いますが』



『お水が止まったというのに、ずいぶんと冷静なのですね。それもブライト様に全てお任せすれば良いとでも思っているのですか?』


『まあ、あなた様には何を言っても無駄なのでしょう』


『ブライト様も知らなかったようなのですが、今や多くの国ではアンドロイドの製造を禁止されておりますの。私が作られた二十年前が最後のアンドロイドの製造となっておりますの。知っておりました?』


『ですから、この城に多くのアンドロイドを雇うというのは無理なお話だとお考え下さい。私の生まれた国では三十体のアンドロイドがいましたが、自ら命を断ったのも含めて、二十五体が処分されておりますの。

 この世界には多くの国がありますが、アンドロイドの数は一つの国に平均で二体ほどだとお考え下さい。

 言いかえれば、あなた様はどんなに嫌だとしても人と関わらねばならないことになるのですの。いつまでもこの城に三人で生きるというのは無理がありますの。今日のように水が止まったり、畑を盗賊に荒らされれば、それだけであなた様の命に関わりますの。


 その点もしっかりとお考え頂ければ、私としては今は満足ですの』


『少数になったアンドロイドにもとりあえず人権というものを与えられましたので、こうしてあなた様に御仕えするなどして働くことも出来るのですの。人として生きるにも少々無理がありますけれど、例えば歳も取りませんし、壊れるまで死ぬことはないですし』


『けれども、人として生きるには人との繋がりがなければ何も楽しみもないのですの。私はそれを求めてこの城にやって来たのもあるのですの。此処に来る前は、この城について何も知らされておりませんでしたので、まさか写真に映った二人だけだとは思ってもいなかったのですの。これだけ大きな城であれば、多くのメイドなり執事なりがいるとも思っていたのですが、まあいないならいないで別に構いやしませんの。

 初めて私がお仕えしたっところは魔法使いのお婆さん一人だけでしたので』


『その話はまた今度ですの。今は話したくないですの』


『私が言いたいことは、この城でより豊かに暮らしていくのなら、もう少し人がいてもいいのではということですの。


 ただし、私のように信用できないメイドではなく、あなた様が心から信頼の出来る人をきちんと見極めて雇うべきですの』


『信頼していないではありませんの。では、どうして私は関わってはいけないことばかりですの? どうして城の多くのことが二人の間で決まり、私は常に蚊帳の外なんですの?』


『それも全てブライト様からの口で説明させて、あなた様は何も言わないのですの。あなた様の意思でそうなさるならば、あなた様の口から説明しろと思いませんの?

 いずれまた説明するというならば、それでも構いませんの。まだ来て一週間も経っておりませんのですの。いきなり全てを信じろとは無理がありますの』


『ですけれど、お城の危機の時ですら何も教えてくれないというのはさすがに私も気分が悪いですの。そして私に何かをさせたいのならその理由もある程度は教えてほしいですの。わざわざ麓の村に私を偵察に行かせてどうするおつもりですの? 一人暮らしの者がいるかどうか調べて来てくれると助かるとブライト様からお聞きしましたが、何を考えているのですの。


 ちなみに一人暮らしの方はいましたの。きちんとブライト様にお伝えしておきましたの。


 それで、それを知ってどうするおつもりですの?』


『ちなみに、そんな老婆や爺にも村より離れたところに住む息子や家族がいましたの。ですので、孤独な者はあの村にはいませんでしたの。もし老婆や爺を襲い、拉致などすれば、そのようなことはないと思いますが、その時はこの城が攻め滅ぼされるときだとお考え下さい。何か悪いことを考えているのなら、おやめになるべきかと』


『私の未来輝くロマンスをぶち壊すことだけはおやめください』


『ロマンスは女性全てが憧れるものですの。本にそう書かれておりましたの』


『では、言いたいことは全て言いましたので、私はここから失礼しますの。


 お体には気をつけて。きっと良くなりますの。

 そのためにも、今日の夕飯はしっかりとお食べください。

 美味しくなかろうが、私は心をこめてあなた様に作っておりますの』


『では、失礼します』

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