7月14日 01：00 自室にて
「御主人様、起きられましたか……」
「いえ、お気になさらずに。看病疲れはありません。今はただ、あなた様が意識を取り戻されたことだけでもほっとしています」
「そのですね、どうしてあのような場所におられたのかが何より気になりますというか。
いえ、お答えなさらずにどうぞ安静にしていて下さい。
お体に力は入りますか？」
「明日の朝、力が戻らないようでしたら、あなた様には決断して頂かねばなりません。このような場で申すのも恐縮なのですが、しかし言わねば命に関わるとなりますと、私も言わざるを、御無礼をお許しください」
「はい、そういうことです。血を吸わねば力が戻らないのだとすれば、私にはそれしか方法が見当たりません。
明日の夜にでも此処を出発し、そして村にいる人を一人、襲いましょう。それしか他に方法が、確かに危険な賭けでもありますが、しかしこのままあなた様が衰弱していく様子を見ていることに私はもう堪えれません。
一人だけです。そしてその後はその後に考えましょう。まずはこの事態を打開せねばなりません。力が入らねばの話ですが」
「リスリルさんが水を赤くした理由はあなたを助けるためだと分かりましたが、しかしどうしてあなた様があの場所におられたのかが理解できません。
何かあったのでしょうか？ リスリルさんに聞いてもあなた様に全て聞けと言うばかりで教えてはくれず、笑ってばかりでございまして」
「どうして黙秘なさろうとするのですか。
何も無かったのにあの場所に行くはずがないじゃありませんか。この城にはリスリルさんとパルサーさん、それに私とあなた様の四人しかいないのですから、私でなければ後はあの二人に呼び出されたということになります。
リスリルさんですか、呼び出したのは？ まさか闘いに行ったとかではないでしょうね。
さすがにそんな理由でしたら、私も怒りますよ」
「はあ。一人で行ったと言うのですか。
分かりました。あなた様を信じますが、しばらくは無茶なことをおやめ下さい」
「ゆっくりお休みになられて下さい。私はここで看病していますので」
「部屋に戻られろと仰いますがそれはお聞き入れられません。此処で読書をさせて貰いますよ。何かあったときにすぐに対処できるよう」
「はい、好きにします。ですから、どうぞお休みなさいませ。明日の朝、元気な姿でお目覚めになられることを期待しておりますよ」
