7月13日 14:40 開かずの通路にて
「あら~ん、お城で一番強い御当主様がやられちゃったの~? あの新しいメイドさんに~?
いい加減にしなさいよお、いくらなんでも女の子に負けるのは情けないんじゃなくてえ? ほら、立ち上がらないと~、このままずっとここにいたら本当に死んじゃうわよう。いつまでここにいるのお?」
「それで~、私はいつまでこうして不安な気持ちでいなければならないのう。いつになったらあの女と顔を会わせられるわけなのお。
これも全部あなたがしっかりしないからじゃなくてえ? と、あなたに悪口を叩きたくはないけれどお、さすがに私もそろそろ限界かしらん。
いざとなったら私に任してみるう? アンドロイドに負けるほどお、私もそんなに弱くはないわよう。ただ、私が負けちゃったら、その時はその時かしらあ。
ああ~、闘ってみたいわあ」
「大丈夫と言うのならあ、行動で示してほしいわねえ~。早く人の血でも吸いに行ってえ、そして元気な姿を見せてほしいわねえ~。そしてあの地底湖まで一人で来なさってえ、私と闘いましょうよう。たまに闘わないと私も腕が鈍るのよお」
「ブライトと昨日、散々お話したけどお、駄目よあいつは~。アンドロイドらしい考え方しか出来ないわあ、あれよ、今さえ良ければまずはOKみたいなあ、長~く生きる私たちにとって今さえ良ければ後はその時に応じてなんていうのは、これ以上にない不安ですものねえん。
新しく来たアンドロイドもそんな考えなのかしらん。果たして永遠に御庭の面倒を見ることが出来るかしらん。壊すのは一瞬よう、壊れると壊すの違いなんてえ、長~く生きてきた私には関係ないからあ、いつまでも御庭を保てないのならあ、私の命の源の水を分け与えても馬鹿を見るのは私じゃないのお。
そこんとこ、どう思ってるわけえ? そこだけを新しいメイドさんに聞いてみたいわねえん」
「まあ、何でもいいけどう、そろそろ外に出ないとまずいわよう。とは言っても、私にはあの扉を触れないしい。結界って厄介~、どうしましょっかあ?
助けをどう呼ぶう? このままだとあなたあ、結界の力で内部から分解が始まっちゃうわよお。分かってると思うけどお。
動けないのお? あっそう、じゃあ今回だけ私が助けてあげるう。すぐに助けが来るように仕向けてあげるわあ。
その代わりにい、きちんとこの城の将来ってものを~、考えておいてねえ。優しいリスリル姉さんのう、愛の処方箋でしたあ~。
けれどお~、新しいメイドさんはずいぶんと行動的なお方なのねえ~。現状維持を好む私たちにとってえ、もしかしたら素敵なパートナーになるかもん。
会ってないから分かんないけどお~、それと盗み聞きは許してちょうだいねえ。じゃあねえ~」