7月13日 14:00 自室にて
『ご当主様、パルサーですが、お部屋におられますでしょうか?
では、失礼します』
『お体の方は?』
『左様ですか。お元気で何よりです。
井戸の水の件、まことにありがとうございました』
『ブライト様からお聞き致しましたが、私のために井戸の水を元通りにしたそうで』
『お水はありがたく使わせて頂きます。
それでいまして、ブライト様にどうしてお水が急に出るようになったのかをお尋ねになったところ、ご当主様から直に聞くようにと。
ブライト様は自分の口から説明は出来ないが、いずれお話になられるそうで、当主様の許可が必要と、まあ私にとっては不可解なことばかりを申されておりますの』
『ブライト様とお話しているのに常にあなた様のお顔がちらつきますの。別によろしいことなのですけど』
『お昼御飯の御用意が出来ているのですが、お食べになりませんの?』
『食べない。そう、そうですの』
『ご当主様。忘れていました、申し訳ございません。
開かずの扉に何者かが侵入した形跡がありましたの』
『あの扉、どうしても気になってしまいまして、本当に開かぬのか調べていたのですの。
身勝手ではございましたがお許しください』
『いえ。単に扉の下に細く切れやすい紙を横に貼っておいただけですの。フレンチドアですので、開くときに紙が両端に引っ張られ、気付かぬに開ければそのまま切れる、というただそれだけのことですの。
見事に二つに引き裂かれていましてので、ああ、誰か入ったのだなと』
『夜中に侵入したのかもしれませんの。
放っておくことは私はできませんの。寝首をかかれたらそれこそ大変ですの』
『ご当主様。確認のために私があの中へ入るというのはどうでしょうか?』
『もし私が一人で行くのが心配ならば、共に行きません?
ご当主様もあの先へ行ったことがないと、いうわけではないのですよね?』
『行かぬというのなら、私一人で行かせてもらいますの。
不安を解消せねば、次の仕事に支障がでますの』
『分かりました。では、共に行きましょう。
ブライト様には私から言いつけておきますの。
そこで待っていて下さい。ああ、よろしければどうぞ、開かずの扉の前で』
『では、失礼します。
開かずの扉の前にいなければ、こちらへお迎えにまいりますの』