7月12日 13:00 自室にて
「御主人様、お部屋に入られてもよろしいですか?」
「失礼いたします。
申し訳ありません。昼食の御用意をすっかり忘れておりました」
「はい、そうです。リスリルさんと色々と揉めてしまいまして……。
昼食を簡単になのですが食堂に御用意しました。が、いかがなさいますか? お体の具合が優れないようでしたらこちらにお持ちいたします」
「いや、リスリルさんと会うにもそのお体では、失礼ながらおやめになったほうが良いかと思います。というより、私としては行かせたくありません。あの方のことです、あなた様と会えば必ず決闘を申し込みますよ。
実は、彼女はどうも、その、何が原因なのか分かりませんがひどく苛立っておりまして、私に勝てたら別にいいわよ、と言ってきかないのです。そして何もしないから今すぐあなた様に会わせろと言うのですが、私にはリスリルさんがあなた様の体調など考えずに遠慮なく攻撃を仕掛けてくる光景が目に浮かびまして、会わせたくないというのが心情でございます。
私が闘っても勝てる見込みはございませんし、私はアンドロイドの体ゆえに壊れればそれまででしょうし、あの方と闘えば無傷で済むわけもなく、なんとか闘わずに済む方法を進めていると。
そういった理由から説得を続けている所存にございます」
「はい、疲れております。アンドロイドゆえに疲れのようなものはないのですが、精神がまいってしまうというか、なんというか」
「お庭のことを未だに根に持っているようです。彼女の言うことに反論出来ないのも辛いところでございます。どうせまた焼き払われるのなら、水を与えても無駄になるだけだという意見で一点張りですし、パルサーさんのお庭の願いを伝えれば、そいつは私より強いのかと言っています。全く話が通じないとういわけではないのですが……、少々興奮していらっしゃるようで。
明日にでもパルサーさんに会わせろと申しておりますが、いかがなさいましょうか。会わせるのならば、彼女がウンディーネであるということを予めパルサーさんに伝えておかねばならないでしょう。同時に、外への他言は絶対に禁物だということも」
「はい。盗賊たちが狙っていたものが地底湖の水ではなかったことは私も安心いたしました。しかし、地底湖の水を知っていたかもしれません。いや、知ってしまったかもしれません。あの裏の井戸の水に手を出してしまったのですし。
何事もなければ良いのですが」
「私はもう一度リスリルさんのところへ行って参ります。あなた様はいかがなさいますか? この部屋におられますか? 申し訳ございませんが私はリスリルさんのことで手を離せないために、あなた様にお仕えすることは出来そうもありません。
どうかお許しください」
「三階に行きたいと。分かりました。では、三階まで御一緒させて頂きますが、またどうして三階まで?」
「庭を眺めながら本を読みたい、ですか。
分かりました。では参りましょう」