7月12日 9:00 自室にて
「御主人様、起きていられますでしょうか?」
「おはようございます。顔色が優れませんね。
本当に大丈夫ですか? ここ数日の中で特に青ざめておりますが、私の言葉は聞こえておりますでしょうか」
「そうですか。しばらくはベッドから離れない方が良さそうですね。
では、御報告を短めに。
私はこれより開かずの扉の先へ行って参ります。リスリルさんと会い、井戸の件についての話をしてきます。何を言われるかは分かりませんが、パルサーさんのことを紹介すれば彼女のことです、きっと気に入って下さると思います。
たぶん変なことにはならない、と思います。いざとなったらここまで逃げてきますので、そしたらその時はよろしくお願いします」
「はい。ですが、やんちゃで短気なリスリルさんです。盗賊を殴り倒し縛りあげたあげく焼き払われた御庭と共に焼いてしまおうとした時はさすがに大変でしたね。
確かにまだ不機嫌ではあると思います。根に持つ方ですし。ですがそこはなんとか致します。彼女もこの城に住む一員として、責務は果たして頂かねばなりません。
と、申しましても彼女は私より長くここに住んでおられますから、後からここへ来た私としては強く言えないのが辛いところです。
大丈夫です。あなた様の力を借りずともどうにか致しますよ。リスリルさんもこの城の状況を知らないわけではないのですし」
「それでいまして、パルサーさんですが七時過ぎに村に向かいました。彼女が御戻りになられるのは夜遅くになるかと思いますので、御夕食は私が御作り致します」
「そうですね。いずれ全てを彼女には話さなければならないのですが……。
暗い顔ばかりしていても仕方ありません。いつこの城が攻め滅ぼされてもおかしくない今、早くこの状況を打開せねばなりません。あの時、お庭にリスリルさんがいなければたぶん私もあなた様も死んでいましたよ」
「リスリルさんとの話が付き一段落した後に、またここへ戻って参りますので。
では、失礼します」