7月11日 19:00 自室にて
「御主人様。御夕飯の支度が出来ました。部屋に入られてもよろしいでしょうか」
「失礼いたします。本を読まれていたのですか。
元気がないようで。やはりパルサーさんのことが気になりますか」
「私も同じ気持ちですが、もう少しの辛抱だと私は考えています。明日、パルサーさんには早朝より麓の村へ偵察に行ってもらい、その結果次第ですかね。万事うまくいけば良いのですが、果たしてどうなるか」
「水のことですか。それもありましたね。
やはり井戸を蘇らせますか。それがいま出来る最善の手かと。ちょうど明日はパルサーさんもいませんし、出来ることは全てやりましょう。彼女のためにも」
「いえ、あなた様は何もせずに。私の一番の心配の種は、あなた様が途中で力尽きて倒れることです。特に今は体が弱っているのですから、私が全てやっておきますよ。
心配は無用ですよ。最近は私のほうがあの場所を通っているではありませんか。もしそんなに心配なのでしたら扉の前で座って待っていて下さい、本でも読みながら。風か何かで扉が閉まってしまったら、その時はお願いしますね。内側から開かないのですから」
「料理が冷めてしまいます。食堂へ行きましょう。パルサーさんが山で摘んできた山菜を使って何やら腕を奮っていたようです。
そんな難しい顔しないで、食べられるだけ食べればいいじゃないですか。美味しいという気持ちを伝えることが大切だと思いますよ。
それでは行きましょう。車椅子に乗りますか?
そうですか、歩けますか。では、共に参りましょう」