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王と賢者

作者: 九池享右

「王と賢者」


あるところに一人の王がいた。

その王は、とても強く、とても賢く、とても好かれる王だった。


あらゆる才能あふれる彼には、ただ一つだけ欠点がありました。


それは「嘆く」ことがとても多かったのです。


「ああ、なぜあの者は言ったとおりにできないのか」

「実に嘆かわしい。周りの者たちは私についてくることができないのだ」


王は嘆くことが日に日に多くなり、ついて出る言葉は嘆きから問題への非難へと変わって、ついに何もしなくなりました。


「もうよい。飽き飽きした。お前たちにはうんざりだ。もうなにもせぬ、お前たちでやれるようにすればよかろう」


そういって王は目の前の問題から目を背け、何もしなくなりました。

困った家来たちは皆で話し合い、西方にいるという賢者を呼び、王と話してもらおうと決めました。


家来たちはすぐに遣いを出して、西にいる賢者を呼び出しました。

城へと来た賢者は王と同じくらいの若さで、姿はいたって普通の青年でした。不信になった家来たちでしたが、口をひらこうとした瞬間、青年は凛々しく微笑みました。

その姿に息を呑んだ家来は王に話してもらおうと再び思いました。


王の間で話すための席がもうけられ、二人はついに対面しました。

王は素直に自分が思っていること、出来ない理由を話し出しました。

賢者は何も言わず、じっと耳を傾け、時に頷きながら王の話を聞いていました。

話すだけ話した王は一息いれ、賢者に意見を求めました。

そして賢者はうなずいて、口を開きます。


「少しながら、言わせてもらいます。」


そう前置きして言葉を次いだ。


「ここに、毒を飲まされた男がいたとしましょう。

そばにいた家族は急いで、薬を飲ませようとしました。しかし、男は飲ませた毒はなんなのか、分かるまでは薬を飲まないといって拒みました。

家族は困って調べました。そしてその毒について応え、薬を飲ませようとしました。しかし男はまた拒みます。

毒を飲ませたのは誰なのか。それにこの薬は本当に効くのか。

あれこれ聞き出し、ついには家族の非難をしていましたが、そのうちに男は死んでしまった。

あなたも、家来が情けない。どうすることも出来ない。もうしない。といっていますが、そういっているうちに、なにも成し遂げられず、無為なその生を閉じるでしょう」



賢者がそう告げ終わると、王の曇っていた顔は晴れ、決意に燃えた目が賢者を捉えていた。

その顔と目を見た賢者は、微笑んで席を立ち、場を去っていった。


王は名君として、歴史に名を刻むのであった。

この小説はほぼ練習のつもりで書いたものなんですが、以前使っていたブログに残っていたので掲載させていただきました。

さて、この王と賢者なんですが。

我々、日常でも普通に起こりうることだと私は思います。

問題への避難は誰でもすることです。

でも賢者はここで伝えています。

「(そこで解決に踏み出さないというなら)無為な生を閉じる」


どんな場所であっても結局諦めるのかそうでないのか。

ここに重大な示唆があるように賢者は伝えている気がしますね。


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