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30001人に殺された娘  作者: 絶対完結させるマン


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狂う2

 「これどういうこと?」


 お母さんを連れてきて、パソコンの画面を指さす。


 お母さんは私のただならぬ様子に戸惑い、画面の中を覗き込む。


 「ああ! 私のSNSアカウントね! 見つけちゃったかー。なんか恥ずかしいね」

 「なんか恥ずかしいね、じゃないよ。恥ずかしい思いさせられたのはこっちなんだけど!」


 そう言うと、お母さんはキョトンとした顔になった。


 「今日友達に揶揄われたんだよ。みんなの前で……今日だけじゃないよ。全部お母さんが私をネットに晒すから——」

 「ちょっと何? 揶揄われたってどういうこと?」


 眉を下げた心配そうな顔が覗き込んできて、私の中に喜びと希望が芽生えた。


 「5歳になるまでオムツ取れなかったくせに、って言われた。教室で。みんなの前で馬鹿にされた」


 お母さんは口元を押さえて絶句した。


 私の気持ちをわかってもらえたみたいだ。良かった……。


 お母さんは言った。


 「姫美が嫌がってるのに揶揄ってくる友達なんか友達じゃないよ。今後その子とは距離を置いた方がいいわ」


 お母さんは「酷いことする子もいるものね」とかなり頭にきている様子だった。


 私は呆気に取られるしかなかった。


 「それだけ?」

 「え? それだけって?」


 お母さんはキョトンとした顔をしている。本当にわかっていないようだった。


 「私、すごく恥ずかしい思いしたんだよ。お母さんのせいで」

 「ちょっと。なんで私のせいになるのよ」

 「お母さんが何でもかんでもネットに晒すからでしょ!」

 「晒すって——そんな言い方」


 お母さんは眉をしかめる。


 「SNSには日常を投稿するものでしょ。嬉しいことがあった時に、ついたくさんの人に言いたくなるのは何もおかしくないじゃない」

 「だからってブラデビューしたことまで書かなくていいじゃん! わざわざ写真まで載せて……」

 「ああ、なるほど。それが恥ずかしかったのね」


 すまなそうな顔になるお母さん。


 「確かに何の関わりもない他人相手とはいえ、ブラ云々のことを知られるのはちょっと恥ずかしいかもね。思春期ならなおさら。ごめんね、察してあげられなくて」


 言いたいことがたくさん浮かんできたけど考えがまとまらなくて、結局何も言えなかった。


 お母さんは勝手に納得して、

 「ブラの投稿は消すから」

 と言った。それで全て解決よね? と言わんばかりに。


 「もうSNSに私の写真あげないで」


 これだけは絶対に言っておかなければとかろうじて告げると、お母さんは意外にも「わかった」と承諾してくれた。


 「姫美って案外シャイだったのね。今どきSNSに写真をあげるのなんて普通なのに」


 それは、私のことを今どきの子どもなのに時代遅れだと嗤っているような口ぶりだった。


 カチンときたけれど、ここからさらに言い争う気力はなかったので、聞かぬふりをした。


 SNSで私の存在が晒されることはもうない。


 私は全てが解決したと思い、そう安心していた。


 お母さんが何もわかっていなかったと気づいたのは、六年生になってからだった。


 「お前もうアレきてるんだろ?」


 隣の席の男子が、ニヤニヤしながら訊いてきた。


 何のことかわからず、それでも嫌な予感だけはして固まっていると、続く言葉に心臓が凍った。


 「生理だよ」


 男子の発音は"生理"ではなく、せーり、という感じだった。


 「今アレ持ってる? あのーアレだよアレ」


 男子はアレアレ言って頭を揺らしていたが、ピンときたようで大きな声で言う。


 「ナプキンだ!」


 その声で、クラス中の視線が集まる。

 他の男子たちも寄ってきて、興味を示す。


 「なになに?」

 「いや、こいつ最近生理始まったから。今日ナプキン持ってきてんの?」

 「なに見せてもらうつもり? そんなの見てどうすんだよ〜!」


 笑い声がどんどん遠ざかっていくような感じだった。頭の中ははてなで埋め尽くされていた。

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