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30001人に殺された娘  作者: 絶対完結させるマン


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狂う

 **


 私のお母さんは、昔からよく写真を撮る人だった。


 いや、その表現には語弊がある。私以外の写真はあまり撮らない人だったから。


 我が子の写真ばかり撮っていると聞けば、子どもを溺愛している親バカだと思うだろう。私もそう思っていた。


 カメラを向けることは、お母さんの愛情表現だと思っていたから、不愉快な気分にはならなかった。




 「夢中になりすぎて漏らさないでよ〜?」


 アイラの家に遊びに行った時、突然そんなことを言われてフリーズした。


 アイラは五年生になってから仲良くなった同じクラスの女子だ。この日はアイラの家に私も含めた数人の友達が集まっていた。


 各々ゲーム機を持ち寄って、皆で対戦ゲームを始めようとしていた時、ふとアイラが私に向けてそんなセリフを言ったのだ。


 他の子たちは笑うのを我慢しているような表情をしていた。私だけがセリフの意味を理解できずに、ポカンとしていた。


 なんなの? と思っているうちにゲームが始まって、一瞬生まれた妙な空気は消えてしまった。


 違和感は別の日にも訪れた。


 昼休み。いつものようにアイラたちとおしゃべりしていると、男子たちの視線を感じた。


 私を見てヒソヒソ何か話していると気づき、胸がざわざわした。

 聞き耳を立てる。


 「今日あれつけてんのかな」

 「お前見てこいよ」

 「バカ、聞こえるって」


 私が目をやると、男子たちは慌ててニヤニヤした顔をあさっての方向へ向ける。


 なに? なんなの? なんの話をしてるの?


 わからないけど、みんなのニヤニヤした顔がすごく不快で、今すぐ教室から消えてしまいたくなった。




 「5歳になるまでオムツ取れなかったくせに!」


 言い争いがヒートアップした時、アイラが放った言葉で私は石になった。


 喧嘩のきっかけは些細なことで、どんなだったか今ではもう覚えていない。


 「なんでアイラが5歳の頃の私を知ってんの?」


 そう尋ねると、アイラは私に渾身の一撃をお見舞いするような、どこか得意げな口調で吐き捨てた。


 「姫美のお母さんがネットでぜーんぶ話してるよ。姫美が幼稚園生の頃、遊びに夢中になってトイレ間に合わずに漏らしちゃったことも、少1の時にノートに描いてた下手くそな漫画も! 全部晒されてるよ!」


 震えが止まらなかった。


 その後アイラとなにを話したのかは覚えていない。アカウント名を聞いたことだけは覚えている。


 その日は一人で急いで帰宅した。


 確かめなくちゃと思った。


 アイラの言っていることが本当なのかどうか。


 パソコンで調べてみると、お母さんのアカウントが見つかった。


 アイラの言っていたことは本当だった。


 そこには私の全てが書かれていた。


 0歳から今日までの私のことが、本当に細かなことまで書かれていて、それに反応する人たちがたくさんいて。


 私はこんなに多くの人たちに見られていたんだと、初めて知った。


 アイラたちは、このアカウントの存在を知っていたんだ。


 最近の投稿を見て、頭をガツンと殴られたようになる。


 『女の子の成長過程の中で、ブラデビューは大事なイベントです。これからも可愛く成長していってね!』


 私がブラデビューした報告と共に、この前買ってもらったブラの写真があげられていた。


 ——今日あれつけてんのかな。


 男子たちのニヤニヤ笑いが思い出されて、私は慌ててトイレに駆け込んだ。

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