狂う6
ストレスが原因でズレることもあるのよ、と保健室の先生は言った。
ストレス——心当たりは一つしかない。
家に帰ると、お母さんにただいまも言わず、2階に駆け上がっていった。
ベッドに横たわり、頭から布団を被る。
追い討ちをかけるように、子宮を雑巾絞りされるような痛みが止んでくれない。
部屋のドアがノックされる。
「姫美ー。夕飯の時間だけど」
「いらない。食欲ない」
「えー大丈夫なの?」
「大丈夫だからあっちいって!」
お母さんが傷ついた気配が、ドア越しに伝わってくる。
「姫美には反抗期来ないと思ってたんだけどなー」
去り際にそう言われ、愕然とした。
お母さんは最近の私の態度を、全部反抗期のせいだ、って片付けてるんだ。
涙が無性に流れてくる。鼻で息が吸えなくなるほど私は泣いた。
「なんか赤飯臭くね?」
登校中、後ろからそんな声が聞こえてきて、私は足が止まりそうになるのを気合いで動かした。
絶対にここで立ち止まることはできない。後ろを振り返ることはできない。
やめろよーとか聞こえるだろーとか言う声が、笑い声と共に耳に入ってくる。
かろうじて昇降口に辿り着けて、教室に入った瞬間、みんなが私を見て一瞬固まったらどうしよう、と想像して、今すぐ校舎が木っ端微塵になればいいのに、と切実な願いが頭に浮かぶ。
人が次から次へとやって来る昇降口でモタモタしているわけにはいかないので、渋々自分の下駄箱を開ける。
目に飛び込んできたものに、脳が理解を拒んだ。
お茶碗一杯分ほどの米粒が、下駄箱の中にぶちまけられている。
よく見れば、それはほんのりと薄いピンク色をしていて——。
「うっ……」
踵を返して、全速力で学校から離れる。
登校中の生徒たちが逆方向に走っていく私を、怪訝そうな目で見てくる。
ほら、あの子だよ。
5歳になるまでオムツ取れなかった子。
親に水玉柄のブラ買ってもらった子。
お赤飯の子。
すれ違う人みんなにそう言われているように感じて、私は耳を塞ぎながらとにかく全力で走った。
走って走って走り続けて——辿り着いた場所は自宅だった。
頭で考えるよりもまず、体がこの場所を、家族を頼ってしまう。その業の深さに寒気が襲ってきた。
家に入る。お母さんは出かけていていない。ホッとした瞬間、惨めさに襲われる。
もう昔のようにお母さんを好きだと思えない。
何も知らずに呑気に笑っていた毎日は、もう二度と取り返せない。お母さんは安心できる家族じゃなくなってしまった。
もう逃げたい。
学校からも、家からも、お母さんからも。
テーブルの上にある物に、目が釘付けになる。
逃げたいと思った矢先に視界に飛び込んできたロープ。この瞬間の私には、それが地獄に垂らされた蜘蛛の糸のように見えた。
次に意識を取り戻した時には、病院のベッドの上だった。
失敗したんだ、と悟り、血の気が引いた。
真っ先に、お母さんになんて言い訳しよう、と浮かんでくる。




