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プロローグ

早乙女(さおとめ)純玲(すみれ)

2000年12月31日生まれ.


純玲という名前は,純粋で澄み渡った心の持ち主になってほしいという願いを込められて,両親に与えられた名前である.

早乙女純玲は,その願いの通り汚れなき心を持った少女に成長した.

しかしそれは,汚れとはなんたるかを知り得ないだけの心であった.

彼女は,恐怖や不安といった感情を持ち得なかった.


それゆえ純粋な彼女は,人を殺すことに躊躇いがなかった.


当時5歳だった彼女は,自身の心に負荷を与えた両親の寝込みを狙って,包丁で滅多刺しにした.

夕飯の準備中に盗み食いをした,たったそれだけの行為への説教を煩わしく感じ,両親を殺したのだ.

寝込みを狙ったとは言え,5歳の行動として計画性は無いに等しい事件だったため,程なくして警察の世話になることとなった.

5歳という年齢で行われた,前例の無い殺人事件に警察や裁判所も判断に困ったようだが,彼女は程なくして特設の児童自立支援施設へ1人で入所することとなる.

1人で,というのは他者のコミュニケーションが新たな殺人衝動を生みかねないということを懸念してのことだった.

同年代とのコミュニケーションを取ることは叶わず,それは施設の監視役と教育役の人間のみに限られた.

純玲にとって小さすぎる世界.彼女はこの世界に15歳の誕生日の年度まで週間されることとなった.



そして15歳の誕生日を目前にした,2015年12月26日,土曜日.

世間はクリスマスを謳歌し終え,一年の締めくくりにかかる頃合いだと思われる.


特設の児童自立支援施設の寝室で目を覚ました早乙女純玲は,そんなことを思いながら目を覚ます.

高さ3mほどの凹凸のないフェンスに囲まれたグラウンド・プール付きの2階建の施設,

彼女の生きる世界の全て,純玲の10年を閉じ込めた檻の中の世界.


この日は,純玲にとって人生の転換期となる日であった.

施設脱出の計画を,ついに実行する日がやってきたのだ.


純玲を拘束する小さな檻は,今日破られる.

次話、2024年12月13日23時公開予定。

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