ラジオに、想いを乗せて。
「ペンネーム、“これ以上、勘違いさせないでよ”さんからのお便りです!【僕には、好きな人がいます。ですが、自分の気持ちに正直になって、もしそれで、今迄築いてきた関係が壊れてしまったら…と思うと、怖くて想いを伝えられずにいます。如何したらイイですか?】」
ランダムに取り出した一通のお便りを読み上げたラジオパーソナリティ・ラジオは、一呼吸置くと、自分の考えを口にした。
「“これ以上、勘違いさせないでよ”さんと好きな方が、どんな関係性かは判りませんが、私は自分の気持ちに正直になった方がイイと思います!失敗したとしても、後悔に浸った後は、ちゃんと前を向いて歩いていけると思うからです。それに案外、想いを伝えてみたら、相手も…なんて……きゃっ♡“これ以上、勘違いさせないでよ”さんの、想いが成就する事を、ラジオも応援しています!!では、次のお便りを読みます!ペンネームーー」
数日後。“これ以上、勘違いさせないでよ”というペンネームの者から、またお便りが届いた。如何やら、告白の結果な様で、成功したとの事。
それに、ラジオは嬉しい感情を押さえ込んだ柔らかい声音で、祝福の言葉を口にした。同時に、なにかを得る為には、自ら行動しなくてはならないのだな、と、改めて考えさせられる出来事だと感激していた。
一ヶ月後、とあるニュースが、世間を騒がせた。
男が、ストーカーしていた女性を、自分のモノにならないからという身勝手な理由だけで、殺害に及んだという、殺人事件だ。その男は、ラジオのリスナーだったらしく、彼女の応援に背中を押されたから、ちゃんと想いを伝えたが、フラれたとの事。それで、犯行に及んだらしい。
ラジオが告白を薦めなければ、こんな事件は起こさなかった!自分は被害者だ!!!と、喚き散らしていたらしい。
このショッキングな出来事をキッカケに、ラジオは自分の発言一つで、また同じ様な事件に繋がるかもしれない…という恐怖から、其の儘仕事を引退しようかと考えた。
が、放送外からやってきたラジオへのお便りの中に、【あの事件は悲しいものだったけど、ラジオさんのアドバイスは、リスナーに寄り添った故の回答だったから、私みたいなファンの為にも、番組は続けててほしい】という応援メッセージだった。それに、ラジオは引退する考えをヤメて、仕事に対して、もっと真摯に向き合おうと、胸に誓った。
今回の事件で、一部のリスナーは離れてしまったが、自分の事を応援する者が一人でもいるなら、そのファンを大事にしたいから、本日もラジオは番組を盛り上げる為に、自分の考えや気持ちを、言葉に乗せる。