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【2】

    ◇  ◇  ◇

「ねえ、宏基くん。有香の結婚式だけどさあ」

「あ、そうだ。どうなった?」

 五月の連休に行われる友人の結婚式についての妻の言葉に、宏基は問い返す。


「ベビーベッド用意してくれるって! あとおむつ替えとか休憩のためのスペースも。他にも赤ちゃん連れの人いるみたいだけど、なんか申し訳ないよね。とりあえず、泣いたらすぐ外に連れ出すわ」

「その場合は俺がみっちゃん見てるよ。津島さんは陽奈ちゃんの方が仲いいんだし、中座するなら俺の方がいいだろ」

 結婚式と披露宴に招待したいという打診があった際も、娘の美月(みつき)がもうすぐ一歳の乳児ということもあり遠慮するつもりだった。

 あるいは陽奈だけが参列する形を提案したのだ。

 祝いたい気持ちは当然あるが、それ以上にせっかくの晴れの舞台に迷惑を掛ける可能性は排除したかった。大切な友人だからこそ。

 しかし、本人に「どうしても二人で来て欲しい。できる限り赤ちゃんの負担にならないように配慮するから」と懇願されて了承した経緯があった。


 二人にとって、津島 有香は文字通りの『キューピッド』だ。

 あの同窓会に彼女が陽奈を呼んでくれなければ、今の三人での生活はきっと存在しなかった。そういえばあれも五月の連休だったと思い出す。


「披露宴はあたしたちと奈々子だけらしいけど、二次会は他にも小学校の友達何人か来るみたいなの!」

「へえ、津島さんて小学校の子たちとそんなに続いてるんだ。来るのは女の子だけ?」

 宏基が首を傾げるのに、彼女が言葉を返して来た。


「そうだって。ホント凄いよね。もう卒業して十五年よ? まあそれは、あたしも有香と奈々子とは大学入ってからずっと会ってるけどさあ。でも他の子はあの同窓会以来だったりするし。あれからだってもう十年近いもんね。二次会は顔出しだけになるけど、久しぶりに会えるの嬉しい~」

 眠っている娘を起こさないように声は抑えてはいるものの、喜びを溢れさせる妻が愛しい。


「俺は全員『久しぶり』になるなあ。女の子ばっかりなら当然か。うん、楽しみだ」

 幼友達の前に、夫婦として子連れで顔を出す。なんだか不思議で面映ゆかった。 


 ペンを拾ったのも、再会したのも、娘が生まれたのも。


 ──幸せの記憶はすべて初夏だ。同じ季節に花嫁になる友人にも、どうか溢れるほどの幸せを。

                    

  ~END~


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