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47話:そしてようやく……

 そして俺は今まで佐々木さんに貰ってきた数々のお弁当を思い出していきながらこう呟いていった。


「卵焼き、鮭の味噌漬け、ナスの揚げびたし、人参や里芋の煮物……他にも沢山の佐々木さんが作るオカズを食べてきたけど、どれも見た目が綺麗でとっても美味しかったなぁ」

「そ、そう? ま、まぁそう言って貰えるとお弁当を作ってきた私も凄く嬉しいけど」

「うん。それでさ……佐々木さんは最初、“ついでにもう1人分作るだけだし簡単だから気にしないで”って言ったよね?」

「え? ま、まぁ確かにそう言ったけど?」

「うん、そうだよね。でもそれって本当は違うって事に今日気が付いたんだ。だって佐々木さんが作ってくれたお弁当はどれも絶対に簡単なんかじゃなかったはずなんだ」

「え……?」

「だって佐々木さんのお弁当っていつも凄く美味しかったんだけど、でもそれだけじゃなくてお弁当の彩りも凄く良かったんだ。俺はそんな色鮮やかなお弁当を見るのが毎日凄く楽しみだったんだ。そしてそれはきっと……佐々木さんは俺を喜ばせようとして、毎日お弁当の彩りを一生懸命に考えてくれたんだよね?」

「えっ? あ……そ、それは、その……」


 俺が佐々木さんにそう言っていくと、図星だったようで佐々木さんは途端に恥ずかしそうに俯いてしまった。


「だ、だってその……山田っていつも凄く美味しそうな顔をして食べてくれるから。だから私もなんだかそれが嬉しくて、もっと山田の喜んでる顔が見たいなって思って……それでお弁当の見た目にもどんどん拘るようになっていったのよ……」

「佐々木さん……」


 佐々木さんは顔を赤くしながら俺にそう言ってきた。


―― 美味しい物を作ってあげたいとか、喜ばしてあげたいっていう気持ちが料理を何倍にも美味しくさせるんだってさ。


 そしてその時、俺は少し前に桜井さんが言ってきたあの言葉を思い出していっていた。


 やっぱり佐々木さんの作ってくれたお弁当は凄く沢山の優しさに溢れた素敵なお弁当だったんだ。


「うん、本当にありがとう。今日、俺は生まれて初めて自分で弁当作りをしてみて、ようやく佐々木さんのその優しさに気が付いたんだ。そしてその優しい想いに気が付いたらさ……もう俺も佐々木さんへの好きって気持ちが抑えられなくて気が付いたら告白しちゃったんだよ」

「そ、そっか……うん……そっか……」

「だからさ、いつも本当にありがとう佐々木さん。佐々木さんのお弁当はいつも凄く優しい気持ちが入ってる素敵なお弁当だったんだね。だから改めてもう一度言わせて欲しいんだけど……俺はそんな優しい佐々木さんの事が好きなんだ。だからこれからは……友達じゃなくて恋人として佐々木さんと一緒に居たいです」

「……」


 という事で俺は改めてもう一度真剣な表情をしながら佐々木さんに向かってそう伝えていった。


 そしてそこからしばらくの静寂が訪れた後……佐々木さんは顔を赤くしたまま俺に向かってこう喋り出していった。


「……わ、私、土日は部活が多いし、もうすぐ試合とか大会とかもあるし……それに三年生になったら受験も始まっちゃうから……だ、だからその……せっかく付き合えたとしても……デートらしい事とかあんまり出来ないかもしれないからね? そ、それでも……良いの?」

「うん、そんなの全然問題無いよ。俺としては佐々木さんと学校で毎日楽しく過ごせるだけでも十分嬉しいからさ。だから改めて……俺と付き合って欲しいです」

「う、うん……そ、それじゃあその……私で良ければその……お願いします」


 佐々木さんはかなり緊張気味になりながらも俺にそう言ってきてくれた。こうして俺は佐々木さんと付き合う事になったのであった。


 でもその瞬間、佐々木さんはぷしゅーっとまるで湯気が出てるように見える程にまで真っ赤な顔付きになっていた。


「え、えぇっと……大丈夫?」

「えっ!? あ、え、えっと……だ、大丈夫に決まってるでしょ!」


 俺がそう尋ねていくと佐々木さんは頭を左右にぶんぶんと振ってきた。何だかその仕草もとても可愛らしく見えてしまった。


「はは、そっかそっか。まぁ佐々木さんがそう言うなら良かった。それじゃあ、これからも宜しくね、佐々木さん。あ、いや、これからは早紀さんって呼んだ方が良いかな?」

「あ、う、うん。そうね。それじゃあ私も……よろしく……えっと、その……和樹……」

「うん。こちらこそ」


 佐々木さんはとても恥ずかしそうにしながらもはにかんだ笑みを見せながらそう言ってきてくれた。

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