表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/49

11話:桜井さんと後輩の女子と出会っていく

 その日の放課後。


 俺は提出するのが遅れてしまった進路調査票を提出するために職員室に行っていた。そして今は職員室から教室に戻っている途中だった。


「あれ、山田君?」

「ん? って、あぁ、桜井さん。お疲れ様」

「うん、お疲れ様ー!」


 するとその時、廊下を歩いている途中で俺は偶然にも桜井さんとバッタリと出会った。運動服を着ているのでおそらく今から部活が始まるんだろうな。


 そしてそんな桜井さんの隣には同じく運動服を着ている小柄の女子生徒が立っていた。運動服を着ているって事はこの子もバスケ部の子なのかな?


「えぇっと、そっちの君は……?」

「はい、お疲れ様です! 私は一年の瀬川香澄(せがわかすみ)と言います! 部活はバレー部に所属しています!」

「あ、あぁ、うん、丁寧に自己紹介をしてくれてありがとう。俺は二年の山田って言います。よろしくね」


 そう言って桜井さんの隣にいる女の子は元気よく俺に向かって自己紹介をしてきてくれた。


 という事で今目の前にこの女子は瀬川さんという一年の生徒らしい。


 桜井さんと仲良さそうにしているからバスケ部なのかなって思ったんだけど、でもどうやらバレー部の生徒との事だ。


(という事はバレー部も今から部活なのかな?)


 俺はそんな事を考えながらも瀬川さんにしっかりと挨拶を返していった。


「こちらこそよろしくお願いします! 山田先輩!」

「うん、こちらこそ。それで二人は凄く仲良さそうにしてるけど知り合いなの? 確か桜井さんってバスケ部だったはずだよね?」

「うん、私はバスケ部だよ。でもバレー部とは一緒に合同で走り込みとか練習をしたりする事も多いからね。それで香澄ちゃんとは一緒に走ったりする機会が多くて仲良くなっていったんだ」

「へぇ、そうなんだ。あぁ、そういえば昨日も外のグラウンドでバスケ部とバレー部は合同で走り込みをしてたよね」

「うん、そうそう! あ、そういえば山田君も昨日は夏江君と一緒に応援してくれてたよねー」

「えっ!? あ、あぁ、そうだったんだよ。あ、あはは」


 桜井さんも昨日は俺が教室からグラウンドを見てた事に気が付いていたようだ。いや夏江の隣にずっと立ってたんだからそりゃ桜井さんも気づくに決まってるよな。


 まぁでもこのままだと佐々木さんの時みたいに突然と変態男のレッテルを貼られてしまう可能性もあるので、俺は急いでこの話題から反らしていく事にした。


「あ、そ、そうだ。瀬川さんはバレー部って事はさ……ひょっとして佐々木さんの事も知ってるのかな?」

「はい、もちろん知ってますよ! というかバレー部に所属していて早紀先輩の事を知らない人なんていないですよ! 私達にとってもっとも尊敬する先輩なんですから!!」

「え? そ、そうなんだ?」


 俺は何となく佐々木さんの事を尋ねていってみると、瀬川さんは俺に顔をグイっと近づけながら元気良くそんな事を言ってきた。


 でも佐々木さんの事を聞いただけでそんなにも元気良く大きな声を出されるとは思わなかったので、俺はちょっとだけビックリとしてしまった。


「え、えぇっと……あ、ちなみに佐々木さんってバレー部ではどんな感じなのかな? やっぱり優しい先輩なのかな?」

「はい、そりゃあもうすっごく優しいですよ! でもそれだけじゃなくカッコ良い先輩なんです! 部活で力仕事があれば率先してやってくれますし、誰か怪我をしたらいつも颯爽と助けてくれたりもしますし、それに部活外でも私達の悩みとか相談事とかを一切嫌な顔せずいつでも聞いてくれたりするんです! もう本当にカッコ良くてイケメンな先輩なんですよ!」

「へぇ、そうなんだ。はは、確かに佐々木さんってカッコ良い所もあるもんね」

「そうそう。早紀って優しいだけじゃなくてカッコ良い所も多いんだよね。男らしく堂々としてる場面とかもよく見るしねー」

「はい! 本当にそうですよね! 部活の備品を一緒に買いに行く時はいつも重い物を率先して持ってくれますし、道路を歩いてる時は必ず車道側を歩いてくれたりもしますし……いやもう本当に性格までもイケメンですよね! 本当に早紀先輩は男らしくて――」

「誰が男らしいよ誰が」

「らしくてカッコ良……って、あ痛っ!?」


―― ピシッ……!


 そんな話で盛り上がっていたら瀬川さんの後頭部を軽くデコピンしながら佐々木さんがやって来た。佐々木さんも運動服を着用していたのでやっぱり今から部活なんだろうな。


「え……って、あ、さ、早紀先輩! お疲れ様です!」

「うん、お疲れ様ー……って、違う違う。学校の廊下でなんて会話をしてんのよ。いや別に私の話をしてくれても全然いいんだけど、でも一応私だって女子なんだからもう少し女子らしいエピソードを喋りなさいよね……」


(……?)


 佐々木さんはそう言いながら恥ずかしそうな表情をしながら俺の方をチラっと見てきた。


 そしてその佐々木さんの表情から読み取るに……ひょっとして佐々木さんは“男らしい”とか“カッコ良い”とかって言われたくないと思ってるのかもしれないな。


(ま、そりゃあそうだよな。だって佐々木さんだって立派な女の子なんだしさ)


 それに俺だって『山田って男なのにめっちゃ可愛いよな』なんて言われたらどう反応して良いかわからないと思うしさ。


 だから佐々木さん的にもそういう言葉はあまり言って欲しくないんだろうなと思ったので、これからは俺だけでも言わないように心がけようと思っていった。


 そして佐々木さん達は今から部活で体育館に向かうとの事だったので、しっかりと別れの挨拶をしてから俺達はその場で解散をしていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ