出会い③
屋敷を抜け出した私はひたすら走って走って駆け抜けました。それくらい当時の私にとってはあの男性に言われたことは辛いことだったのです。
やがて息が上がって立ち止まり、周囲を確認すると辺り一面に木々が生い茂った場所でした。
「ここはもしかして……」
私はようやく今自分のいる場所を把握しました。どうやら街外れにある森まで駆け抜けていたようです。
「うそ、こんなところまできちゃった……」
この森には魔族も時々出るため、近づかないようにとお父様からも釘を刺されていました。私は急いで元来た道を戻るべく歩き始めました。
ずっと走りっぱなしで疲れていましたが魔族に襲われるかもという恐怖感が私を突き動かしました。棒のようになった足を必死に動かして私は屋敷に戻るため、必死に歩を進めます。
いくらが歩いたところでなにかの唸り声のようなものが聞こえました。私がその唸り声のしたほうを見るとそこには異形の怪物がいました。
「ま、まぞく……」
喉を引きつらせながらその異形の怪物から距離を取ろうと私は駆け出しました。立ち止まれば殺されると直感的に感じたからです。
しかし全力を出しても所詮は子供の力です。私を見つけた魔族は私を追いかけてきました。相手と私の距離は一気に縮まり、魔族が私に後一歩というところまで迫ります。
「あっ……!」
さらに最悪なことに私は木の根に足を引っかけて転んでしまいます、そんな失敗をやらかしたのですから、魔族はもう私に追い付いてしまいました。
「ひっ……」
私は溜まらず悲鳴を上げてしまいます。異形の怪物はにたりと笑ったように見えました。私はこのまま魔族に殺されることを覚悟し、目を瞑りました。
「汚いやつがアーシャに触るな」
「えっ……?」
聞き覚えのある声、つい最近出来た新しい家族のもの。
私の横を凄まじい早さで何かが駆けていきました。それは魔族のはうへ一直線に駆けていきます。
私を襲おうとした魔族は近づいてくるものを敵と認識したのでしょう、その影を迎撃しようとしました。しかし魔族の攻撃は簡単に避けられ、魔族は自分の懐へ何かの接近を許してしまいました。
「くたばれ」
魔族の懐へ潜り込んだ影が一言そう言うと魔族は頭から真っ二つに
引き裂かれ、絶命しました。
「……!」
私は口を開けてその光景をただ呆然と眺めていることしか出来ませんでした。
「アーシャ! 大丈夫?」
魔族を倒したものは私の名前を呼んでこちらに近づいてきます。
「ラナ……」
ようやく私は私を助けてくれたものの姿をはっきりと認識出来ました。さっきはあまりにも早すぎて声だけしか確認できなかったのです。
「よかった……やっと見つけた……!」
ラナは嬉しそうに私に駆け寄ってきました。表情には安堵の色は見えます。
「屋敷を飛び出していくのが見えたから追いかけてきたけど魔族に襲われるなんて……理由はちゃんと聞きたいけどここは危ないから早く屋敷に戻ろう、皆心配しているからさ」
「……うん……」
ラナの言葉に私は抵抗することなく頷きます。魔族に襲われた恐怖からそんなことをする気力は皆無でした。
「・・・・・・あっ」
「どうしたの?」
私の声にラナが不思議そうに首を傾げます。
「あ、足に力が入らなくて・・・・・・」
自分が情けなくなって私は泣き出してしまいました。人に最後まで迷惑をかけてなにも出来ていない自分が恥ずかしくなってしまったのです。
「……よし」
「えっ! ちょっ……」
私が立てないことを知ったラナは私をおんぶして歩き出しました。一体どこにこんな力があるのでしょう。
「ちょ、ちょっとラナ……こんな……!」
「じっとしてて。自分で歩けないんでしょう? ここでじっとしていることは出来ないからこのまま行くよ。恥ずかしいのは我慢して」
諭すように私に語りかけるラナ。私は彼の言葉が正しかったためそのまま沈黙し、彼に身を委ねました。
(暖かい……)
心地いい温もりを感じながら私はラナに背負われ屋敷に戻ることとなりました。
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