復讐を
「王都は普段より賑わっているな、さすが建国祭の期間だけはある」
王都の外れに一人の男性、端正な顔立ちというのがふさわしいだろうが顔には大きな傷がある。彼が見つめているのはアルバイン王国の王都だ。今は王国の建国を祝う建国祭の最中であるため、各地から様々な人が集まってより賑やかになっている。
普通の人間ならその様子を見て喜んだりするのだろう。だがそんな王都の賑わっている様子を眺める彼の目はどこか冷めていた。
彼の名はクレイ・トワイライト、かつてのラナーーグレンの親友。
「ふふ、明日この賑わいが悲鳴になるとも知らずに呑気なことだ。せいぜい楽しめばいい」
明日、自分とアリスによってこの平穏は破壊されるのだ。
思えばここまで来るのも長かった。
アリスが死んでからクレイは彼女を生き返らせることだけを考えて生きてきた。そしてある本の記載から着想を得てついに彼女を生き返らせることに成功したのだ。魂をすくい上げて定着する肉体を探すのに気が狂いそうになるような時間を要した。
それもすべてアリスにふさわしい場所を与えるため。誰よりも頑張ってきたのに報われなかった彼女が報われて欲しかったからだ
そしてクレイの数百年の苦労も明日で報われる。世界も正しい形に修正されるのだ。
「くく、くくはははははははははははは!!」
クレイは柄にもなく気分が高揚し、高笑いをあげてしまう。だが仕方ないではないか、何百年も成そうと動いてきた復讐がようやく形になる時が来たのだから。
「なにを笑っているの、クレイ」
一人で感慨に耽っている中に響く心地よい声。声のしたほうをクレイは見る。そこに立っているのは一人の少女。黒いドレスに美しい金髪を持ち、瞳は血を思わせるような真紅だ。
「ああ、アリス様。戻られましたか」
クレイの仕えるべき主君にしてーー想い人、アリス・ローゼンタールがそこにいた。
「ええ、たった今戻ったわ。それでなにを笑っていたの? あなたがあんなふうに笑うって珍しいからどうしたのかと思って」
「ああ……申し訳ありません。みっともないところをお見せしてしまった。柄にもなく気持ちが高揚してしまいまして」
「明日のことを考えていたのかしら?」
「はい。ようやくここまで来ました。長かった、この数百年は」
「……」
アリスはクレイの側まで歩み寄ってくると彼の頬に手を当てる。ほのかに暖かい体温がクレイに伝わってきた。
「アリス様、どうされました?」
「……本当にごめんね、こんな私なんかのためにあなたに長い時間辛い思いをさせて。過去の私の愚かさがあなたを苦しめてしまった」
辛そうにクレイを見つめるアリス、そこにあるのはクレイにある罪悪感だろう。
「アリス様」
クレイはそっと自分の頬に当てられた彼女の手を握り返す。
「どうか自分を貶めるようなことを言わないでください。私は自分から望んでこの道を選んだのです。そこに後悔はありません、復讐は私の意思でもあるのです。私はあなたを道具として利用した世界が許せない、その世界を壊したい。……見方次第では私がアリス様を自分の復讐に利用しているとも言えるのですからあなたは私のことなど気にしなくていいのです」
冗談めかしてクレイがそう言うとアリスは一瞬きょとんとした後、くすりと笑った。
「もう、本当にクレイは口がうまい。そうやって私をあなたはいつも甘いのだから困ったものだわ。……でもありがとう、私を転生させてくれて。あなたのおかげで私は復讐する機会を得ることが出来た。あなたの努力に報いるためにも私は明日必ず目的を成し遂げる。……だからどうか最後まで私について来て。そして見届けて、私の最後を」
真摯な声でクレイに懇願するアリス。
そんなことは言われずとも当たり前だとクレイは思う、自分のすべてはあなたのためにあるのだから。
内に秘めた好きという感情を隠したままクレイはアリスの言葉に力
強く答えた。
「もちろんです、私は最後まであなたに仕える者ですから。……行きましょう、すべてを取り返しに」
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