建国祭①
建国祭が近づき、僕とアーシャも再び王都へと向かった。王都に向かうのはイサーク様の一件以来だ。王都のライアム邸に着くと毎回のことだけど侍女達が丁寧に迎えてくれた。
王都に着いて過ごしている間も特にトラブルはなく、穏やかな時間を過ごしていた。
「まったくせっかく静かな時間を過ごしていたのにあなたが来ると騒がしいですね、リアナ」
「いいじゃない、久しぶりに会うのにその態度は酷いわ、アーシャ」
僕の目の前にはアーシャとリアナが座っている。久しぶりに三人で集まる時間がとれたのでこうしてお茶会をしていた。
「でも本当に懸念事項をなにも話し合わず、あなた達とこうして過ごすのは久しぶりよね」
「うん、前に王都に来た時はイサーク様の一件があったからね。それで彼はどんな感じなの」
僕の発言を聞いたリアナは肩をすくめた。
「正直お手上げ状態よ。あの時魔物をあの場所に呼び寄せて彼に力を貸した協力者についてはなにも話さないし。こっちと歩みよる気がまったくないの。聴取を担当している者も困っているわ」
「そっか」
イサーク様がなにか話してくれればあの男についてもなにか分かったかもしれないけど、これじゃなにも掴めないな。せっかく見つけた糸口なのに。
「ま、他に大きく問題は起きてないんだからいいんだけどさ。これ以上問題を増やされても困るし」
リアナの言葉に僕とアーシャは苦笑いしてしまう。イサーク様の反乱計画に加わった貴族達の処分やその者達から取り上げた領地を別の者に与えるという面倒なことをしていかないといけないのだ。これ以上面倒事を増やされても困るというのは本音だろう。
「でも調子は戻ったみたいですね、今の様子を見ている限りは」
アーシャが紅茶を飲みながらほっとしたように口にする。あの事件直後のリアナは酷く憔悴していたから覇気がなかった。今日の様子を見ほっとしたのは僕も同じだ。
「ああ、うん。もう大丈夫よ、いつまでもくよくよしてられないしね。……イサーク兄さんから拒絶されても私には他に認めてくれる人達がいるもの。そんなふうに思ったら気持ちも落ちついた。今はやらなきゃいけないこともあるからね、前を向かないと」
気負わず言うその姿を見て僕はいつもの彼女が戻ってきたことを確信した。
「でもあの時のアーシャは面白かったなあ。ラナが心配してくれるのは分かるけどアーシャがあれだけ真剣に気遣ってくれるなんて」
リアナが頬杖をつきながら悪戯っ子のような笑みを浮かべてアーシャのほうを見る。
「べ、別に心配なんかしていません! ただあなたがあんな調子では私もやりにくかっただけです!」
照れ隠しのためにぷいっとそっぽを向きながらリアナの言葉を否定するアーシャ。
うん、それで心配してなかったっていうのは無理があるよね、アーシャ。本当にうちのお嬢様は近しい相手に対しての気持ちを隠すのが下手だな。
「あはは、やっぱりアーシャって分かりやすい。……でも本当にありがとう。さっきも言った通り、あなたが寄り添ってくれたから私は前に進むことが出来たわ」
リアナが真剣な表情でアーシャにお礼を述べる。
「……そういうところがずるいんですよ、あなたは。……どういたしまして」
アーシャは照れながらリアナへの返事をする。うん、いつもの光景って安心するなあ。
こころの中で癒やされながら僕が紅茶を飲んでいるとリアナが話をこちらにふってきた。
「ねえ、ラナ。せっかくだし建国祭はこの三人で回らない? あなたもこのお祭りには参加したことないでしょ」
「あー、うん……そうだね」
「ならガイドが必要だと思うの。建国祭は王都中で行われるお祭りだしさ。私とアーシャは参加したことがあるからあなたを案内出来るし悪い提案だと思うけど」
リアナはにこにこしながら楽しそうにガイドの申し出をしてくる。僕としてはその申し出はとてもありがたい。建国祭でどんなお店があるかやイベントが行われるかなんて知らないからアーシャとリアナがガイドしてもらえるとありがたいな。
「うん、二人に案内してもらえると僕も助かる。お願いしてもいいかな」
「もちろん、私は喜んでガイドを務めさせてもらうわ」
僕の回答を聞いたリアナは自信たっぷりに了承した、頼もしいなあ。
「……」
「えっと……アーシャ?」
僕とリアナの会話を聞いていたライアム家のお嬢様はあからさまに不機嫌になった。
「……せっかくラナと二人きりで楽しめると思ったのに……」
指で机をつつきながら嘆くお嬢様。どうやら僕と二人きりで回ることを楽しみにしていたようでリアナと一緒に回ることになって機嫌を悪くしたようだ。
「アーシャ、拗ねないの。そんなふうに家族を束縛する人間は嫌われるわよ。まあ、ラナが今まで参加してくれなくてようやく水いらずで楽しめるが嬉しいのは分かるけどさ。私に関してはずっと一緒にいるわけじゃないし二人きりで楽しむ時間くらいあるわよ」
「……なら許しましょう」
リアナの発言を聞いてアーシャは少し機嫌をよくしたようだ。しかし今の話を聞くと今まで参加を断っていたのが申し訳なく思えてきた。
(そういえばロゼちゃんはどうしてるんだろうな)
ふとあの不思議な雰囲気を持つ少女のことを思い出していた。彼女もこの祭りに来ているなら会うこともあるのかな。
頭の片隅でそんなことを考えつつ、僕は二人とのお茶会を心ゆくまで楽しんだ。
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