決意
イサーク様の企てた反乱計画は僕達によって未然に防がれた。イサーク様は死罪にすべきだという意見もあったがイサーク様があの男との関係を認めたため、僕達で国王様に彼から情報を引き出したほうがいいと伝えた結果、牢に幽閉することになった。ユーハイム侯爵に関しては反乱の罪で死罪、ただユーハイム侯爵家自体はエリナが反乱を防ぐためにヨハン様に協力したこともあって領地は大幅に削減されるも、家の取り潰しとはならないようだ。
反乱に強力していた貴族達も領地を没収されて家の取り潰しなどが行われることになった。国王陛下はこれを機に自分へ反対する勢力を粛正し、自分に近しい考えを持つものに爵位を与えるなどして改革を進めていくつもりらしい。起きたことを利用して自分の基盤を強化するのは政の際にはよくあることだけど自分の息子が反乱を起こした時もそれを実行する陛下はちょっと怖いなあ。イサーク様が反乱を起こしたことを知った時も、
「そうか」
と一言告げて後は粛々と処理していたし。ああでもしなければ王族なんてやっていけないのかも知れないけど。こういうふうに感じてしまうのはやはり僕の根っこが武人なのだからなのだろうか。
僕とアーシャはイサーク様の反乱を未然に防ぐことに力を貸したことで国王陛下に感謝された。あの事件の処理が一段落したのでそれからは二人でゆっくりと過ごしている。
「まったく今回の王都の訪問はラナの挨拶回りだけだったのにとんでもないことに巻き込まれてしまいましたね」
少し疲れた様子でアーシャが言う。
「そうだね、僕もこんなことに巻き込まれるとは思っていなかったよ」
「でもまさか今回の一件でもあの男が関わっていたなんて……姿は見せませんでしたけど」
そういうアーシャの表情は険しいものだ。僕も自然と表情が厳しくなってしまう。
「うん。イサーク様は自分でもあの男との関係を認めていたからね。強化された魔物があそこで出てきたのもあの男が絡んでいる証拠とみていいだろう。取り調べでそこのところが分かればいいけど」
一つ不思議なのはあの男が今回は直接姿を見せなかったことだ。ダリアンの時は姿を見せていたのに今回はそうしなかったのは単純にできなかったのか、それとも……。
「イサーク様が私達のためになるような情報を与えるとも思いませんけどね。リアナのことを嫌っていましたし、これはあまりいい結果は出ないかもしれないですね」
「……そうだね、それでもやらないよりはましだよ」
僕は戦いの時のイサーク様の様子を思い出す。リアナのことを心の底から憎んでいる彼の表情や言葉を。
「ユーハイム侯爵も死罪が決まってエリナが当主になったそうで……彼女も大変だわ」
「本人は大丈夫です、覚悟していたことですから。私は当主としてすべきことをしますと言っていたけど」
「無理をしていないか心配です。私も次期当主の身ですから彼女の助けになれることがあれば積極的に協力するつもりですよ」
「うん、それがいいと思う。彼女はこれから大変になると思うから」
エリナはこれから反乱を企てたユーハイム侯爵の娘として貴族達の間で後ろ指を指されることになるだろう。こういった時は味方がいてくれるだけで心の支えになってくれるものだ。まあこれは前世でアリス様が困った時に相談に乗ったりしていたから言えることなんだけどね。
「リアナも変わりないみたいだったけど」
「表面上はいつも通り振る舞っていますけど……少し心配です」
イサーク様を倒した後、リアナは普段通りに振る舞っていた。公務についてもきちんとこなしているみたいだけどちょっと心配だな。
「結構辛いことを隠すことがあるからね、リアナ」
「そうですね……結構意固地なところがありますから」
「今度領地に戻る前にリアナに会いに行ってみようか」
「そうですね、彼女の都合がつく日を見繕って会いに行きましょう」
会話を一旦区切り、僕らは同時に紅茶を口に含む。静寂が空間を支配した。
「ねえ、ラナ」
「どうしたの、アーシャ」
アーシャの声には不安が混じっていた。彼女は僕の側に来ると僕の腕に抱きついてきた。
「私、不安です。なんだかよくないことがこのアルバイン王国に起きそうで……」
僕の腕を抱きしめるアーシャの腕に力が入る。僕は彼女の頭を優しく撫でた。
「大丈夫、なにがあっても君は僕が絶対守るから。僕が強いのは知ってるでしょ」
「……そんなの小さな頃からあなたのことを見てきたのだから当たり前じゃないですか。でも……あなたも無茶なことはしないでください、約束ですよ」
「うん、それは分かってるよ」
大丈夫、なにがあっても君を悲しませることはしないから。
アーシャの頭を撫でつつも僕自身もこれから先、なにかよくないことがこのアルバイン王国起こると感じていた。あの謎の男は本当に一体なにをしようとしているんだ……。
(もしこの国になにかが起きてもアーシャだけは守らないと。それが今の僕の役割だから)
二度目の人生は彼女に救われた、だから僕はなにがあっても彼女だけは守る。
王国に漂う嫌な空気を感じて僕はアーシャを絶対に守ると決意を新たにした。
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