イサーク・アルバイン③
「くっくっく……」
他の貴族が僕に対して萎縮する中、イサーク様は不気味な笑い声をあげる。イサーク様にとって圧倒的に不利な状況なのにまったくそうは見えない態度だ。
「なるほど。ユーハイム侯爵よ、これはしてやられたな。まさか実の娘に裏切られるとは。いやはやこの上なく面白い見せ物だよ、とても楽しめた」
イサーク様の態度に僕は眉をひそめる、僕が取り押さえているユーハイム侯爵もイサーク様を睨んでいた。しかし彼は喋るのをやめようとはしない。
「駄目じゃないか、侯爵殿。娘の教育はちゃんとしなければ。自分を裏切るような人間に育ったのなら教育は失敗だよ」
ユーハイム侯爵とエリナを嘲笑うような言葉を投げかけるイサーク様。エリナを物のように扱う言動に僕は我慢が出来なくなる。
「イサーク様、あなたももう観念したほうがいい状況なのですが」
僕は低い声音で脅すようにイサーク様に呼びかけた。
「ここにいる全員を相手にしても僕は勝つ自信があります。あなたはユーハイム侯爵を笑いましたが今回の件はあなたも首謀者ですよね。捕まればあなたも終わりです」
「言うじゃないか、ラナ・ライアム。さすが竜殺しの英雄と言ったところか、まあ君なら実際それが出来るのだろう。僕達を取り押さえることなどきっと造作もないだろうさ。だがな」
イサーク様は僕との力の差をきちんと認識している。なのに不気味な笑いを浮かべたままだ、なんだろう、嫌な予感がする。
「いくら君でも予想していないことなら対応が遅れるのではないかな? 英雄殿」
イサーク様の言葉と同時に黒い渦が部屋に数個現れる。これは……あの男の!?
「イサーク様、あなた……!? まさか……」
「ああ、そうか。君は彼にあったことがあったんだったな、そうとも彼は私の協力者だ。こういった身内の裏切りのような不足の事態に備えてこうして奥の手は残しておくものだよ」
彼はそう言い放ち、側に出現した黒い渦の中に消えた。他の黒い渦からは魔族は出現する。結晶体の生えた強化された魔族だ。
「ひっ……ま、魔族……」
「な、なぜこのようなところに……」
「こ、殺されたくない……ど、どけ! 早くここから出してくれ!」
突然現れた魔族に広間にいた貴族達は恐慌状態に陥る。我先にと部屋から出ようとしていた。
「やっぱり……エリナ! ここから逃げて!!」
僕はエリナに逃げるように指示する。エリナはまだ状況についていけていないのかその場に立ち尽くしている。そんな状態の彼女に魔族の一体が襲いかかる。
「くっ……」
僕は雷属性の魔力で身体を強化、一気に彼女の元まで向かい魔物を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた魔族は屋敷の窓を破って外へ飛んで行った。
「あ、ありがとうございます……」
エリナがお礼を言ってくる、彼女の体はかすかに震えていた。
「お礼はいいよ。それより君はここから早く出て外にいるアーシャ達を呼んできて欲しい。僕はイサーク様を追わないと」
「お、追うっていってもイサーク様がどこに行ったのか分かりませんよね。どうやってイサーク様を追うのですか?」
「大丈夫、ほら」
僕の指さした先には黒い渦がある、さっきイサーク様が利用したものだがまだ消えていない。今まであの男はすぐにあの渦を消していたはずだ、それをわざわざ残している。まるでこちらに来いと言っているみたいだ。
「多分イサーク様はあの渦の先にいると思う。僕はあの渦に飛び込んで彼を追うからエリナはさっき言ったようにアーシャ達に知らせて。貴族達への対応についてはヨハン様に頼むんだ」
「……分かりました、でも気をつけてください。もしラナ様が言ったことが本当なら彼は待ち構えているということになります。あなたに対してもなにか対応策を持っているはずですから……」
「うん、心配ありがとう。でも無茶はしないよ」
僕はエリナに伝えるべきことを伝えるとイサーク様が利用した黒い渦に飛び込んだ。
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