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潜入

「ラナさん、今日はよろしくお願いします」


「こっちこそよろしく、エリナ」


 僕とエリナはあの会議で誰がエリナの護衛役をやるかということで話した結果、僕が彼女の護衛役をやることになった。なので今の僕は変装して彼女の侍女として行動している。怪しく思われないようにうちの侍女達の普段の行動を見て今日の会合に向けて所作の練習をしていた。

 エリナのほうはドレス姿だ。今回の会合には有力な貴族も参加しているのできちんとした服装で出るみたい。


「……」


「ん? どうしたの? エリナ?」


 エリナが侍女姿の僕を見て黙り込んでしまったので僕は怪訝に思って尋ねる。


「いえ……その……ラナさんに侍女服がとてもよく似合っていて可愛いなって思ってしまって……」


「そうなの? 自分ではよく分からないけど」


「はい、とっても似合っています。ここに来る前に立ち居振る舞いがおかしくないか見させていただきましたけど、侍女として応募すればどこかの家に採用されてしまいそうだなって思いました」


「そんなことはないんじゃないかな……こんな付け焼き刃で習得した人間がすぐに採用されたら他の侍女に失礼だよ」


 偉く褒められてしまい、僕は戸惑ってしまう。自分ではそういったことはよく分からないしね。


「ふふ、ラナさんがよければこのまま私の侍女として働いてもらいたいです」


 エリナがくすくす笑いながら言う。


「それは困るよ。僕はアーシャとライアム家に大きな恩があるからね。申し訳ないけど他の家で働いたりするつもりは一切ないよ」


 アーシャやライアム家には拾ってもらってからずっとお世話になっているからね。他家に仕えるなんてことはありえないよ。


「それは残念でした。ラナ様くらいの実力がある方が我が家で本当に働いていただければ私としては嬉しいのですけれど」


 心の底から残念そうにエリナは言う。


「エリナ、君の家って今回のお父さんの件を抜きにしても僕のいるライアム家とは対立する考え方の家だよ。本当に採用するとか言い出したら僕のような経歴の人間を家で働かせるとはとても思えないけど」


 僕は少し窘めるようにエリナを注意する。エリナの生家であるユーハイム家は今回の彼女のお父さんの件を抜きにしてもライアム家のような身分関係なく人材を登用する改革を支持する家とは相容れない考え方の家だ。彼女が僕を雇いたいと本気で言っても僕のような経歴の持ち主は周りが反対しそうだけどな


「そうですね、ラナ様の言う通りです。実際に私があなたを採用したいと言っても私の家で受け入れられる可能性はないでしょう。ですが私個人としては家の立場とか抜きにしてラナ様は凄いと思っていますよ。王国の危機と言われた古竜を倒し、実力でライアム家という公爵家の養子にまでなられたのですから。……私はユーハイム家という立派な家に生まれて周りから与えられるだけで生きてきた人間だからあなたのような実力で地位を掴み取った人は羨ましい」


 エリナが心の底からの賞賛をこめて今の言葉を言ったのは僕にも伝わってきた、以前の僕だったらこういう言葉を受け取って謙遜ばかりしていただろうけど。


「そっか。エリナそういうふうに見てくれてたのは嬉しいかな」


 アーシャやリアナ、それに前世でアリス様にもそういうところは直しなさいと言われてしまったからね。エリナからの賞賛は素直に受け取ろう。他人の善意もきちんと受け取れるようになるのも今の人生を生きていく上で大事なことだ。


「でもエリナも今回は危険を冒して僕達に強力してくれたんだ。それだけで君は勇気ある人間だと思うよ」


 僕の言葉にエリナはきょとんとした後、少し恥ずかしそうに微笑んだ。


「ありがとうございます。そう言ってもらえたら私が行動した意味が少しはあるかもって思えてきます」


「うん、きっと君の今回の行動は意味のあることだよ。それじゃ行こうか。君のお父さんを止めに」


「はい!」


 ここまで読んで頂きありがとうございます! 


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