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逢瀬①

「こんにちは! もしかしてあなた、ラナ・ライアムさん?」


 僕に声をかけてきた少女はそのまま僕のほうへ迷いなく歩いてくる。


「ええと……そうだけど君は誰かな? 失礼な言い方だけど僕は君とは会ったことはないんだけど」


 少し冷たい言い方になってしまったかもしれないが僕はこの子に会ったこともなければ知り合いでもない。幼い少女だから怒る気にはなれないのだけど知らない人間に親しげに話しかけられていい気分になる人間はいないよね。


「あ、ごめんなさい! 自己紹介がまだだったわ。私の名前はロゼって言うの。あなたのことは王都にいる方なら皆知っています。だって王国を滅ぼす脅威であった古竜を退け、王都を救った英雄ですから」


 ロゼと名乗った少女は明るくはきはきとした口調で答える。きちんと謝罪できるところやしっかりしたところを見るとある程度育ちがいいところの子なのかもしれない。

 まあ、古竜を討伐した僕のことを慕うような子だから貴族の階級ではないだろう、その階級の人間だったら僕を慕ってくるのはよっぽど奇特な人間だ。


「君を呼ぶ時はロゼちゃん……でいいのかな?」


「ええ。それで大丈夫です」


「僕を慕ってくれるのは嬉しいんだけど……わざわざ話しかけてくるのは僕になにか用事があるのかな? これからいろいろ行きたいところもあるんだけど」


「用事……そうですね……」


 僕の言葉にロゼは少し首を曲げて考え込むような仕草をする。その様子はとても愛らしい。


「んー……純粋にあなたとお話がしたかったんです、前々から。王都を救った英雄はどんな方か知りたい、こんな理由じゃ駄目ですか?」


 ロゼは淀みなく、言葉を紡ぐ。僕は黙って聞いていたがその言葉に嘘はなさそうだった。彼女は純粋に僕の話を聞きたくて僕に話しかけてきたみたいだ。


「そうなんだ。僕を好意的に見てくれているのは有り難いけど今はいろいろと忙しくて。今度落ちついた時じゃ駄目かな?」


 僕としても自分に好意的な人間が話したいと言ってきたのを邪険に扱いたくはない。しかし今は自分にとって大事な調べものをしている最中なのだ。この少女には申し訳ないけど話をするならまた今度にして欲しい。


「それじゃ駄目なのよ……あなたとこんなふうに話せる機会なんてもうないかもしれないんだから」


 強い口調でロゼは僕の言葉を否定する。先程とは打って変わって冷たい声音に僕の背筋に悪寒が走る。


(今のは……)


 僕が雰囲気に気圧されているのに気付いたロゼははっとして慌てて謝罪をしてきた。


「ご、ごめんなさい! あなたを困らせるつもりはなくて……」


 今にも泣き出しそうな表情のロゼ。


(そういえばアリス様も僕と言い争いをした時こんな表情をして謝ってきたっけ)


 アリス様は僕と二人きりの時は言うことは言う性格だったから言い合いになったこともある。けれど後になって今のロゼのように今にも泣き出しそうな顔で僕に謝罪をしてきたのだ。


(まいったな、そんな顔をされちゃ断れないじゃないか)


「はあ……」


 僕は溜息をつくと彼女の元まで歩いていき、彼女と同じ目線になるようにしゃがんだ。


「怒っていないから泣かないで。少しでいいなら君に付き合ってあげてもいいよ」


 僕の言葉を聞いたロゼはぱっと顔を綻ばせる。表情豊かな子だなあ。


「本当!?」


「うん。丁度今から軽くデザートでも食べに行こうと思ってたんだ。食べた後は用事があるからまた王宮図書館に戻るけど、その間なら君の相手をしてあげるよ」


「ありがとう!! 嬉しい!!」


 そのままロゼは僕に抱きついてきた。突然の出来事に僕は固まってしまう。


「ちょ、ちょっとロゼ……」


「あっ、嬉しくてつい……」


「大げさだなあ……」


 僕から慌てて離れながら恥ずかしそうにするロゼ。そんなに僕と会えたことが嬉しかったのだろうか? 本当に良く分からない子だなあ。


「よし、それじゃ行こうか。僕の知ってるお店でいい?」


「はい!」


 力強く答えたロゼに僕は微笑み、行きつけのカフェに向かって彼女と共に歩き出した。




 


 

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