王都へ
あの戦いの後、僕達の周りで大きな問題は起きていない。変わったことと言えば僕がライアム家の養子として公務に従事するようになったことくらいだろう。リアナはあの後、王都に戻って今は王女として務めを果たしている。
あとは個人的に調べものをしている、今もその調べものの真っ最中だった。
「この本も違うかあ」
僕は読んでいた本を手元に置き、ため息をつく。調べていたのは転生について。正確に言うと人間が転生する方法についてだけど。
「やっぱり人間が転生する方法なんてあるわけないか」
ため息をつきながら僕は呟く。分かってはいたことだけどそんな方法があれば誰かが遺しているだろう。
あの男が僕のことを前世の名前で呼んだ理由をあの後考えていたが皆目見当がつかない。僕は今のラナとして転生したこの人生で誰にも前世のことを覚えているのを話していないのだから。
考えた末に僕はある結論を出した。それはあの男が僕を今の世に転生させた人間だということだ。
とは言ってもこの結論では大前提としてそういった技術が存在していることが前提となる。だから僕は屋敷にある文献を最近片っ端から読んでいた。
しかし結局そんな技術については見つからなかった。
「はあ……完全に手詰まりだなあ……。やっぱりあの男を捕まえて聞き出すのが一番なんだろうけど」
その方法が一番確実だろうとは思っている。が、あの男に関してもあの後まったく動きがない。魔物の出現は増加傾向にあるがあの男が使役していた結晶の生えた魔物はあの後目撃されていない。
「あの魔物をどう操っているかも原理が分からないし……ああ! もう! いろいろなことが後手に回ってて嫌になるなあ!」
僕は頭を掻きむしる。なにかよくないことが起きているのは分かるのにそれに対する対策がまったく立てられなくて苛立ちが募る。
「うーん、完全に手詰まりだなあ」
ぼやいていると部屋のドアがノックされた。
「ラナ、居ますか?」
聞こえてきたのはこのライアム家のお嬢様ーーアーシャの声だ。
「うん、居るよ。そのまま入ってきて大丈夫」
僕がアーシャに入ってきてもいいと促すと彼女はゆっくりとドアを開けて部屋の中に入ってきた。
「……浮かない顔ですね。なにかありましたか?」
僕のことを心配そうに見てくる幼なじみ。
「ううん、ちょっと本を読んでただけだよ」
「嘘です。そんな本をただ読んでいただけでそんな顔になるものですか」
厳しい叱責。そんなに疲れた表情をしていたのかな、ちょっと反省しないと。
「なにを考え込んでいたのですか? ちゃんと話してください」
距離を詰めて僕に詰め寄る幼なじみ、これはなにか理由を言わないと解放してくれそうにないな。
かと言って本当のことを言ってしまえばおかしなことを言っていると言われてしまうだろう。なんと言うべきか僕は思案する。
「えーとね、あの男に繋がる手がかりがないか調べてたんだ。ほら、あいつが操ってた魔物のこととかでね。輝晶石のこととか調べてたんだよ」
咄嗟にいかにもな理由を述べて誤魔化す。アーシャははあっと溜息を付くと腰に手を当てて仁王立ちのような体勢になる。
「そんなことなら早く言ってくれればいいのに。私だって強力しましたよ」
「いやー、アーシャも忙しいからね。頼みづらくて」
怪しみつつも言い訳に納得したのか追求は止んだ。危なかったなあ。
「あの男については私やリアナも動いていますからあまり心配しないでください。ちゃんと頼るんですよ」
「うん、ありがとう」
心配してくれる幼なじみにお礼を述べる。心から僕のことを気にしてくれている人間に嘘を付くのはなんだか心苦しかった。
「それよりあなたに話さなくてはならないことがあります。私がここに来たのはそのことがあったからです」
「? なに?」
「王都に私と一緒に来てください。養子になったあなたを他の家にも紹介したいので。この家で過ごす以上嫌でしょうけどこういうこともこなしてもらわないといけません」
ああ、また面倒なことになったなと思いながら、僕はアーシャの言葉に頷いた。
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